case.4 支配の宝玉
よ!
『全て支配してみせろ。それが魔王という物だ。』
■ □ ■
俺はサファイアが放ったその言葉に、疑問を浮かべる。
『―――娘を完全に支配して、魔力を吸うなり、抑えつけるなりすればいいのだ。それが簡単に出来るのが“魔王”の特権ですからな』
(そうか、『支配』か……。あ、でも今は使えないんだよな)
ステータスを確認すると、先程まで900あったSPが今はもう400になっていた。
「あー、サファイアの言いたいことは分かった。だが、今はSPが足りなくて使えないんだよな」
『えすぴー? よく分からんが、それはどうすれば増やせるのだ?』
(……? SPが分からないのか?)
「えっと、確か……」
俺の数少ない《スカーレット》のゲーム知識を掘り起こす。
(確かSPは、魔物を倒して稼ぐんだったか……?いやいや、でもそれは……)
うーん、と何回も唸り、悩む。
(何か方法は無いか……?)
そう思い、もう一度ステータスを見てみる。
ステータスを確認した俺は、一つすっかり忘れていたことを思い出した。
(そういや、まだ『召喚』が幸運状態だったな。幸運状態―――もしこれが『支配』に移動できたら……?)
そんな事が可能なのかは分からないが、一応ルインに聞いてみることに。
「なあ、ルイン。幸運状態っていうのは、別のスキルに移動させたりとかは出来るのか?」
俺は気になったことをルインに尋ねてみた。
「幸運状態を、移動ですか? えーと、多分可能だと思いますが……。何をなさるおつもりで?」
俺はルインのその答えを聞き、ニヤリと笑みを浮かべた。
「何、ってそりゃ『支配』だよ。お前も、お前の魔力も、魔物だって、全部支配してやるよ」
「主様……それは」
「―――安心してくれ。さあ、早速始めようか」
まず最初は『召喚』の幸運状態を『支配』に移す。
―――移す。
(移す。…………って、やり方が分からん!)
「あ、あの、ルイン? 幸運状態はどうやって移すんだ?」
「え。えっと、すみません、やり方までは知らないです……。申し訳ないです……」
「そうか……まあ仕方ないな。ルインが謝る必要は無いぞ」
(しっかし、どうしたもんかね……。何かやり方は書いてないか? 例えば念じてみる、とか? んーーー! 幸運状態よ、移れーーー! とか?……いや、さすがにこんなんじゃ……)
▶スキル『支配』が幸運状態になりました。
(えぇぇぇぇぇぇぇぇ! いやいやそんなのアリかよ! ま、まあなってしまったものは仕方ないな、うん仕方ない!)
この世界はどうやらチョロいようだ。
「よ、よーしやるぞー! じゃあ早速『支配』発動だ!」
早速ルインを対象にスキルを発動した。
サファイアの時と同じく、衝撃波のような攻撃がルインを襲う。
「ううっ!」
「ルイン! 大丈夫か!?」
「は……はい。何とか……」
▶対象:ルインが『支配』下におかれました。
またステータスにメッセージが現れた。
ルインが、支配下になったんだな。
よしよし。上手く行ったみたいです良かった。
(そんで……この状態で、魔力を抑える命令をすればいいん……だよな?)
「よし……いくぞ、ルイン」
「はい……!」
ルインがゴクリとつばを飲み込み、静かに俺の次の行動を待っている。
が、俺はそんな中、こんな事を考えていた。
(えぇぇえ、どうしようどうしよう、何て命令すればいいんだ……? だぁぁぁもう! いくぞって啖呵切っちゃった以上、もう引き下がれないぞ……!)
「ロールプレイしかないか……。魔王だしな……」
ハァ、と溜め息を付きながら俺は呟いた。
「―――ルインの中の魔力よ。我が命令により、その力を抑えよ!」
(ど、どうだ? こんな感じか……?)
「成功しているか……? どうだ、サファイア?」
『ふむ、完璧に抑えられているな。やはり魔王とは恐ろしい……』
「じゃあ、私は大丈夫なんですか!? もう雄に襲われないですか!?」
『まあ、大丈夫だろうな』
「わー! やったやったぁ! ありがとうございます主様!」
飛んで喜ぶルイン。
この姿を見ると、何だか頬が熱くなる……。
(俺がしたことで、相手が喜んでくれたことなんて、小学生以来無かったもんな……)
「うむ、礼には及ばん……。それより、そろそろ外に向かうか?」
「はい! そうですね!」
『我も着いていったほうがいいかな?』
とサファイアに聞かれた。
さて、どうしようか。
今の俺たちには拠点は無い。
実質、この洞窟が俺たちの拠点のようなもんだ。
ならここにいつでも帰ってこれるように、色々魔改造したいところだ。
しかしこの洞窟、普通の魔物がうじゃうじゃ居るんだよな。
あまり殺したくはないから……。
(やっぱり『支配』するべきだよなぁ)
しかし、だからって俺が全部『支配』して回る訳にもいかないし、幸運状態がいつ終わるかも分からんし……。
(何か道具を作れないか? この支配の力を込めれば、使えると思うんだが……)
「サファイア、一旦その話は置いといてくれ」
『あ、ああ。ですが、一体どうして?』
「……一つ聞きたい。お前、何か水晶とかそういうやつに、俺の『支配』の力を込めることは出来るか?」
『ふむ、なるほどな。そうことであれば、我なら可能ですね』
「出来るのか! なら……よし、じゃあ早速頼む」
(話が早くて助かるな……。これで『支配』がいつでも使えるようになる……はずだ。そしてそれを使って、サファイアにはこの洞窟を“支配”してもらう。この洞窟を俺たちの拠点にするんだ)
『よし、それでは魔王殿。この宝玉にスキルを発動してくれ』
「わかった」
言われた通り、俺はサファイアが差し出してきた宝玉にスキルを発動する。
「―――『支配』」
『あと少し……3……2……1……よしもういいぞ』
「もういいのか?」
『ええ。これでこの宝玉には『支配』の力が封印されました。これでいつでもこの宝玉に込められた『支配』の力を使えるようになりましたよ。―――まあ名付けるなら、“支配の宝玉”とかですかな?」
(支配の宝玉……。いいな。やばいな。これは。―――かっけぇぇぇぇぇ!)
「主様、何だか目が輝いてます……」
「ま、まあな。あまり気にするな。それで、サファイア。お前に頼みがある」
『まあ、何となく予想はついてます。こんな物を作ったということは……』
「ああ、そういうことだ。サファイア、お前にはこの洞窟を完全に支配して、魔物の王国を作るんだ。ここを俺たちの拠点にするぞ!」
『まあ、そうなりますよね……。了解しました、ではここでお別れということですね?』
「えっ? いや、せめて出口までは―――」
ここまで言ったところで、一つの事実に気がつく。
「あれ、この光……もしかして外……?」
『ええ』
「いつの間に?」
『私が今転移させました』
「そうか―――ってなるかぁぁぁい!」
「でも良かったですね主様! これで外に行けますよ!」
ま、まあそれもそうなんだよな。
細かいことをいちいち気にしても仕方ない、か。
「はぁ、何だかもうめちゃくちゃだが、俺はもうツッコまないぞ。よし、ルイン、行こう」
「はい! 主様!」
「サファイア、しばらくしたらまた戻ってくる。それまで頼んだぞ!」
『了解しました。気をつけて行ってきてくださいね』
「ああ。それじゃ行ってくる!」
サファイアに手を振りながら、俺とルインは並んで洞窟を出た。
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