case.10 女の戦い
イェア
「「「はい……?」」」
俺たちは全員、首を傾げてしまった。
「あの、ごめん。俺、耳悪くなったみたいでさ? もう1回言ってほしい」
俺は恐る恐る聞き返す。
さすがに聞き間違えだろう。
そう、思っていたのに。
「ですからぁ〜、ワタシと、あなたの結婚式を開く為なんです! その為に会いたかったんだよ! ま・お・う・さ・ま♡」
(うわァァァァァァァァァ! コイツ、まじで頭おかしいこと言ってるよぉぉぉぉぉぉぉぉ!)
いや……冷静に考えてもおかしい話だろ。
どうしてこんな急に……?
「ちょっと何を言っているのかしら……? ねぇ……海王さま?」
「同感です。私もこの人が何をおっしゃっているのか、理解出来ません」
アスモフィとルインが殺意のような物をあらわにしながらムルに詰め寄った。
だがまあ、俺が一番理解出来てないから安心しろ。
「ごめん、急に結婚とか言われても……」
「貴方には申し訳ないですけど、これは先代魔王とのお約束なのですわ」
「先代、魔王……?」
皆が、じいさんじいさんって呼んでいる、あの先代か?
「はい。先代の魔王から、私の海底都市をめちゃくちゃにしたお詫びとして、
『俺様の後継者をテメェの好きにさせてやる。生涯独身は辛えだろ? カカカ、そいつと結婚でも何でもすりゃいいじゃねぇか!』
と言われているので。ちゃんと証明書もありますわ」
そう言ってムルは控えめな胸元から一枚の紙を取り出した。
どうしてそんな場所から取り出しのかとかいうツッコミは無しだ。
と、俺はそんな用紙を差し出された。
その紙を恐る恐る覗く俺。
見るとその紙の下の方。
記入者の欄だ。
そこにはしっかりとこう書かれていた。
《魔王ニルマトリアがここに保証する》
「マジかよ、こりゃクソ魔王だわ」
つい、クソ呼ばわりしてしまう。
いや、皆の口ぶりから先代の魔王さんは少し嫌われてるなぁっていう印象はあったが、まさか顔も知らないはずの俺にまで嫌がらせを残していやがるとは!
俺も嫌いになっちまったよ!
てか名前……ニルマトリアって言うんだな。
今までは皆、「じいさん」とか「じじい」って言ってたから、もはやそういう名前なのかと疑ってしまう位だったが。
「と、いうわけで……」
「は……?」
ムルにガッチリと腕をホールドされてしまう。
「おい、何して……」
「さ、準備はすぐ済ませますわ。早く結婚しましょ? ダーリン♡」
いや、いやいやいやいや。
アウトアウト。犯罪だってぇぇぇぇ!
この絵面はアカンて。
見た目小学生と結婚する青年はヤバいって!
しかし、同じことを思っていたのか、ルインとアスモフィも声を荒げて言った。
「ちょっと待ってください!」
「あら、なあに?」
「あの、それは先代の魔王様が決めたことですよね。『勝手』に」
「そうよ、あのジジイが『勝手』に言っただけでしょ!」
「でも、こうして書式に」
「それも、『勝手』に作られたものです! 今の魔王様は全く関係ありません!」
「そうよそうよー!」
「はぁ……ではどうしたら納得して頂けるのですか?」
「そうね……ルインちゃん、何かあるかしら?」
「私ですか……? 私なら、そうですね。ムルさんを殺します」
「「え」」
え。
黙って聞いていたが、サラッと怖いこと言ったな。ルインのやつ。
「ま、まあ嘘ですよ! あ、あはは〜。そ、そうですね〜。では戦って勝ったほうが全て決められる権利を得るというのはどうでしょうか」
「……そ、そうね。……いいわね。それ。ちなみにそれは何でも決められるの?」
「は、はい! その方が面白そうですしね!」
「うふふ、なら私も本気出しちゃうわ! それでいいかしら、海王ムルさま?」
「はあ、別に構いませんが」
「……何? その余裕は。まさか私たちに勝てると思ってるの?」
「……ええ。もちろん。むしろそのセリフを言うのは私の方かもしれませんね」
「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ!」」
不毛な戦いだ。
目と目の間に火花が見えてきたぞ。
それで、結局俺はどうなるんだ?
「まあ大将、キバッていこうぜ?」
「サタール、お前なぁ……?」
「アッハハハ! 面白くていいじゃねぇか!」
サタールは呑気なもんだなぁ。
賭け事の対象にされてる俺は、そんな呑気にいられないんだがな。
「では、勝負開始は今より10分後。三つ巴、ということでよろしいですか?」
ムルが、そう確認をした時……
「よろしくねぇなぁ!」
ドスン! と、空……? から大胆に飛んできた1人の少女。
こいつは……
「マノン!」
「おう! 久しぶりだな! 魔王!」
「お前が居るってことは、リガーテたちも?」
「アイツらか。アイツらならこの中で寝てるぜ」
親指を立ててくいっくいっ、と神殿の方に向けるマノン。
何故アイツらは寝ている……?
疲れたのか?
それとも邪魔だからって眠らされたのか?
どちらも有り得そうな話だな。
「それで? よろしくないって?」
「ああ。よく分かんねぇが、戦いなら俺も参加させてもらうぜ! だから四つ巴だ!」
四つ巴……?
いや、それならトーナメントとか組んだ方が……。
「いや、それならトーナメント戦の方がいいわ。マノン、貴女バカなの?」
「ハァ!? バカだよ!」
アスモフィにそう反論するマノンを横目に、俺の隣に居るサタールは言った。
「ケケ、マノンまでいるたァなァ? アイツは好きだぜ? アイツは強えからよォ……!」
「そういえば2人とも大の戦闘好きだったよな……」
「まあな!」
なんて、俺がサタールとの雑談に花を咲かせているところで、ムルが再び確認の言葉を言った。
「それでは……1対1の試合を合計3回。……つまりトーナメント戦で優勝者を決めると言う事で。それで異論はありませんね?」
「おう! よろしいぜ!」
「では、対戦の組み合わせを始めましょうか……」
そうして4人は、対戦の組み合わせを決めるべく、話し合いを始めるのであった。
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