case.8 海王と竜王
恋に落ちる音がして。
「貴方たちは敵ですか? 敵なら―――殺します」
何故か海底へと転移してきてしまった私たちが、最初に出会った少女。
フリルのたくさんついた着物……?みたいなきらびやかな衣装を、その幼体に纏い、華麗な手際で扇を舞わせるその少女。
その子が突然、そんなことを言ってきた。
「……貴女は何者?」
「わたし? わたしは……。いいえ、貴方たちに名乗る名などありません」
うーん。なんだろう。
この子、少し危ないオーラが見えるのよね。
なんて言うのかしら、神のオーラ?みたいなのが視えるのだけれど。
「―――あら? そちらの方は。あらあら、お久しぶりですね。竜王さま……うふふ……」
リガルテを見た少女はそう言った。
「……やっぱりテメェか、海王さんよ」
2人は知り合い、だったのね……。
……まあ、予想はしてたけど。やっぱそうなるわよねぇ。
リガルテ、海王について心当たりがありそうだったもの。
でもまさかこの子が海王だったなんてね。
「何だ? お前ら知り合いなのか?」
2人の関係なんか知ったこっちゃないと言ったように、マノンは質問をした。
「ええ。海王とは少々因縁がありましてな」
「『少々』……? そんな……酷いですわ……! 貴方は、海王であるこの私にあーんなことや、そーんなことまでしたというのに……!」
「おい、待てよ! なんだあーんなことやそーんなことって!」
「うう……しくしく」
この子嫌いだわ。
私の直感がそう告げてきた。
何この子。
見た目はすごい幼くて、おとなしそうなのに! 髪の毛も水色で、おっぱいも控えめで、目もくりんくりんしてるのに!
それなのにこの子、性格がなんかやな感じだわ!
「はぁ、もういいですわ! ぷんぷん。それで? 皆さんは何でこんなところに?」
「はぁ!? んなのテメェが邪魔だから―――」
「どうどう、リガルテどうどう」
私は興奮したリガルテをなだめる。
まあこの人が言ってることは別に間違ってもないんだけどね。
「私が変わりに、ちゃんと説明するわ」
「ええ、お願いしますわ? 乳・牛・さ・ん♡」
―――ピキッ
何かが、壊れる音がした。
「ふ"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ん"ッ!」
まるで私が私でないみたいな声が出てしまった。
「ど、どうどう、ですよアスモフィ様!」
リガーテくんになだめられてしまう。
クッ……不覚だわ。
まさかこの子、煽り属性の女だったなんて。
「アスモフィ様、これで分かりましたか? この女の恐ろしいところ」
「えぇ……分かったわ。充分すぎる位にね……!」
「あらあら、酷いですわね。皆さん。それで、いいから何の用事なのかを教えてくださいまし」
声のトーンが変わる。
真面目な話がしたいのだろう。
「はぁ、分かったわよ。単刀直入に言うわよ。私たちはこの海の……いいえ、海上の領地を貰いに来たのよ。私たちの国を創る為にね」
「海上の領地を……? ああ、そんな事でしたか。まあ、結論から言うと、もちろんいいのですが……」
あら、案外すんなり了承してくれるのね。
もう少しひと悶着あると思ったのだけれど。
「貴方たちの主に会わせて頂いてもよろしいですか?」
「魔王様に?」
「ふふ。やはり、貴方たちの主は魔王でしたか……」
あっ、しまった。
変に情報を開示してしまうのは良くなかったかもね。
この子は私たちの主が魔王様ってことを知らなかったんだから……。
まあ、いいわ。いずれは知られることになったでしょうから。
「まあ、会うくらいならいいと思うけど……。今は無理ね」
「どうしてですか?」
「今、別の仲間を探しに戦帝国フラウに行っているのよ」
「そうでしたか……。それなら仕方ないですね。では、魔王に連絡を入れておいてくださいまし。『海王様が会いたがっている』と」
「……分かったわ」
私は、ルミナス様に通信を入れる。
伝達魔法『念話』。まあ、効果は文字通りね。
『―――ルミナス様〜? 聞こえる〜? おねえちゃんでーす☆』
…………えっ、ん、あ? アスモフィの声が脳内に響いているぞ!?
『―――動揺しないで〜! これは伝達魔法の念話よ!』
…………念話? ……あっ。こほん。すまないなアスモフィ。そ、それで用件はなんだ?
『―――えっとね、今、海王様とコンタクトが取れたんだけど』
…………おお、やるな。さすがはアスモフィだ。やっぱりお前は優秀だな! ……マノンとかとは違って。
―――ピリピリッ!
えっ……何……?今の。
褒められた時に、身体が痺れる感覚が……?
…………? どうしたアスモフィ。
『―――ひゃうんっ! ……な、何でもないわ……。そ、それでその海王様が、ルミナス様に会いたいって……』
…………そうか。今こちらもサタールを仲間にしてな。これから戦帝国フラウを滅ぼしてくるところだったんだが……。
『―――ええっ!? 滅ぼす……!? ま、まあそれには事情があるのよね? そ、それより、サタールも仲間になるなんて、貴方やっぱり相当すごいわよ?』
…………そ、そうか? あ、あーそれで、いつまでなら待ってくれるんだ?
『―――待ってね。今聞くわ』
私は海王さまの方を向き、ルミナス様から聞かれた事をそのまま聞いてみた。
「あの、海王さま? ルミナス様が、いつまでなら待ってくれる? だって」
「いつまで……? まあなるべく早めに……ですわね」
「了解したわ」
と言う訳ですぐに念話に戻る。
『―――なるべく早めに、だそうですよ』
…………分かった。今すぐ向かう。少しだけ暇つぶしでもしててくれ。
『―――はーい』
と……ここで念話を終了した私。
(―――って……今から来る!?)
「どうしたんですか? 乳牛さん。なんかすごい驚いてる顔ですけど」
「今から……ルミナス様が……来る!」
「えっ。ひゃわわわわわわわわわわわわ!」
私と海王さまは、慌てたように駆け回ってしまう。
まさか……そんなすぐ来るなんて……!
おねえちゃんは嬉しいぞ……!
(あれ……何で私、そんな事だけで喜んでるんだろ……?)
ブックマークが増えたのです




