case.6 戦帝国フラウ
夜
「クッ……!」
俺が一歩ずつ歩み寄れば、それに対応するようにサタールは一歩ずつ後退する。
「だ、だが俺はまだ生きてる! お前さんにさっきの焉魔はもう撃てない! 剣でも魔法でも俺っちには勝てないんだ! 分かるかッ?!」
ブラフだな。
もう、勝ち目は無いのが分かっていて、言っているのだろう。
何故か。それなら後退する理由が無いからだ。剣でも魔法でも俺に勝つ自信があるなら、突っ込んでくればいい。しかし、それをしないということは、勝ち目がないことを悟ったからだ。
それに……
「俺はこの魔法を、“一度しか使えない”なんて一言も言ってないだろ?」
「は……?」
俺は手のひらに黒い炎を生み出しながら言った。
「嘘だろ……? なんでい……アンタのその力は……!」
「これが、魔王だ」
俺は、カッコつけながらそう言った。
(フッ……キマったな……!)
「なるほどねェ……。アンタの強さは分かったよ。俺の負けだ。負けでいいさ。流石に勝てねェや」
両手を上げながら降参するサタール。
そんな俺は、無慈悲にもサタールに言った。
「それじゃあ……サタール」
「ほえ……?」
手を顔にかざす。
「宣言通り、俺の傀儡になりな」
▶スキル『支配』を発動します。
久しぶりの『支配』を使う。
『支配』を受けたサタールの目はトロンとしてくる。光を失った目はすぐに光を取り戻したが。
「おい、サタール。おーい、起きろー」
「……んん……んあ? ああ、そうか。『支配』したのかい」
「おう。一応な。これでお前は俺を裏切れないぞ」
「いやいや、流石にアンタを裏切るのはレベルが高いって」
そんな会話をしていると、見ていたルインとルシファルナがやってきた。
「主様! すごいです!」
「はい。しかし、流石にあの時は驚きましたよ」
あの時?
「そうですよ、主様! 自殺なんて、ビックリしたんですから! ……でも、ちゃんと生きてて本当に良かったです! さすが主様です!」
「えへへ〜」なんて笑いながらそう言うルインに、やはり俺は照れてしまう。
なんて可愛さなんだ。今すぐ抱きしめたい。
「あっ、ああ。まあな?」
焦ったようにそう答える俺。
しかし、そんな様子を見たのか、サタールはこちらを見ながらこんなことを言ってきた。
「ヘェ? 魔王様の好きな娘はこういう女の子なんだなァ?」
「は……?」
「へ……?」
俺とルインは固まってしまう。
「ちょちょちょちょ! べ、別に好きなんて言ってないだろう?!」
焦ったように反論してしまったが……
「主様は……私の事、別に好きじゃないの……かな……。うっ、うう……」
今度はポロポロと涙を零すルイン。
えっ、あっ、あわわわわわわわ。
ど、どうすれば……!
「あ〜あ、泣かせちまったなァ? 魔王様?」
「な! だ、第一お前のせいだろう!? だぁーもう、ルイン、違うんだ、これは誤解だぁぁぁぁぁ!」
俺の悲痛な叫びが、平原にこだました。
※そのあとルシファルナの的確な対応によって、この問題は無事解決しました。
■
「それで? 俺は支配されちまったが、この後はどうするのか決まってるのかい?」
「そうだな。考えては居なかった……が、案としては一度魔界に戻るくらいしか―――」
俺はサタールの問いに答えながら考えた。
「みんなは、どうしたい?」
「私は特に大丈夫です!」
「ええ、私も大丈夫ですよ」
俺の問いに、ルインとルシファルナはそう答えた。
しかし、サタールは少し悩んだ後、言った。
「悪いね、魔王様。俺っちはちょっとこの国でやりたい事があるんよ」
「戦帝国フラウ、でか?」
「ああ。ちょっと許せねぇ奴が居てなぁ」
なんだろう。また妙な胸騒ぎがする。
聖皇国ラーゼの時みたいな、あの感じ。
「まあ、俺っちの種族は見ての通り“鬼族”なんだけどよ、この国の奴らも、基本は鬼が大半を占めてるんだわ。そんで、そいつらが、魔族を悪用してるみたいでさァ」
やっぱり。
どうしてこの世界の奴らはこぞって魔族を痛めつけるんだ。
日本にいた頃よりハッキリとした虐めで、いよいよ傍観なんてしている場合じゃ無くなって来たな。
早く動かないと、本当にこの世界の魔族が滅んじまいそうだ。
「と、言うわけでこの国に潜伏してたんだけどよ。折角魔王様も来たことだし、いっちょ滅ぼしますか?」
「物騒なことを言うなよ。だがまあ、魔族を虐げてるなら話は別だ。いいぜ、乗った。」
俺とサタールはニヤリと笑い、そして拳を合わせる。
「2人とも、そんな感じでいいか?」
俺は後ろで見てたルインとルシファルナに聞いた。
「ええ、愚問ですよ」
「はい! もちろん私たちもお供します!」
よし、決まりだ。
次の標的は戦帝国フラウ。
ここを『支配』してやろう。
そうして、根っこの悪性を取り除いてやるんだ。
そう決意した俺たちは、国内へ入り込む為、偽装の準備に取り掛かるのだった。
ブックマークたのみたい!




