case.4 【憤怒】の大罪サタール(3)
忘れてないよ
「それじゃあ第2ラウンドの開始だ―――」
戦いの火蓋は切って落とされた。
リベンジマッチのスタートである。
「ヘッ、切り刻んでやるよ。何度だってなァ! “閃光”!」
刹那、サタールが消えた。
超高速で動いているのだ。もちろん、今までは見えなかった。
だが、今はもう―――
「―――俺がまだ見えていないとでも思ったか?」
俺は、魔剣を生み出して防御の構えをとった。
すると、そこにサタールの剣技が当たる。
防御成功、だ。
「なんでい……? 急に強くなりやがって……」
「俺はもう、お前に負けるつもりは無い!」
「ふざけやがって……! “閃光”ッ!」
再び攻撃。
しかしもう、“見える”。
どれだけ向こうが速く動こうが、こちらがそれに対応した速さを取ればいい。
それが、パワー馬鹿のサタンからの教えだからだ。
「―――“招壁雷”ッ!」
縮地を用いて素早くサタールの懐に入り、腹を中心に魔法を放つ。
「んなっ……!」
放電。
サタールの身体を激しい電撃が襲う。
「そ……んな……!」
サタールはその場に倒れ込んでしまう。
たったの一発で倒れるなんてな。
最強の名が廃るぞ。
だが、これで終わり……
「―――終わりとでも、思ったかい?」
「は……?」
その瞬間、俺は後ろから思いっきり蹴飛ばされる。
「グッ……」
「おいおいナメてもらっちゃ困るぞ? 俺だって最強の名を掲げてるのも大変なんでい」
倒れたのはフェイク……か。
……だが、負けるわけにはいかない。
「負けるわけにはいかない、って顔してるねェ……? だが俺のプライドも許さねぇんだわ。負けるってのはな。だから俺はアンタに勝つ。もう遠慮はしねぇさ」
俺だって、負けたくない。
ルインだって見てるんだ……。そう、ルインだって―――
(―――ん……? 何でここでルインの名前が出てくるんだ……?)
「考え事してる場合じゃないぜェ?」
(ッ! クソ……! そんな事考えてる場合じゃねぇか!)
考える時間は与えられない。それが戦いだ。
俺は考えるのを止めて、再び“魔剣”を振るった。
「“飛剣・改”」
(……?! あれは俺が使っていた技……!)
って、頭より先に身体を動かさないと……!
「“飛剣”!」
俺も対抗して剣技を繰り出す。
似ている技だが、少し違う。
俺のは飛剣。飛び回る蚊のように切り刻む剣技。
対するサタールは、飛剣・改。例えるなら……そう、ハエ……のような。
似ているようで、少し違う。
向こうの技の方が、少しねちっこい感じがする。
「ヘェ……? 本当に強くなってんだなァ?」
技の打ち合いは互角の状態。
それは俺が強くなったことを示すと同時に、向こうがそれと同じくらい強いということも示す。
剣が通用しないなら、やはり魔法を使うしかない。
「“炎雷”ッ!」
文字通り、炎を纏った雷がサタールを襲う。
ドーム状に広がった魔力の波動は、そのドーム内に居るサタールに、炎と雷の雨を降らせる。
「グゥゥゥッ……!」
よし……効いてるみたいだ!
これなら、もしかしなくても―――
「魔法まで強くなってるのかよ……ッ!」
「まだだ。“氷刃”!」
至近距離での発動。
氷刃……文字通り氷で出来た刃である。
「さすがに二度は喰らわねぇぜ? そら、『魔断』!」
サタールはその手に持つ刀で魔法を切り裂いた。
さすがの対応力だな。
……だがこの『魔断』という技。
これも文字通りの意味をとるなら、魔法を断つ技であるはずだ。
それならコイツに魔法は効かない?
―――いいや、そいつァちげェぜ?
俺の中から声が……
お前は、サタンだな?
―――おうよ。俺はサタン様だぜ!
っと……いいか?
アイツは魔力を纏わせた剣を振って魔法を消してるんだ。そうやって、魔力を相殺させてるんだよ。アイツの魔力でな。
だが、剣を振るのがどんなに速いスピードであれ、それを上回るスピードで魔法を撃ってやればいい。そうしたら相殺が間に合わなくなって、魔法も効く筈だろう?
まあつまりはゴリ押しってやつさ。それにさっき、雷の魔法は通っただろ? 隙を突いてやればいいのさ
……なるほど、確かに。
だが、ゴリ押し……ねぇ? ……まあいいか。それしか作戦は無いからな。
サタールをスピードで上回る。
そしてそこに魔法を撃ち込む。
単純で分かりやすいじゃないか。
俺はニヤリと口角を吊り上げ、そして言った。
「サタール、行くぞ……。ここから本気を見せてやる」
「まだ、本気じゃなかったのかよ。いいぜェ? 来いよ……!」
俺は構える。
両手には何も持たずに。
俺の得意な魔法でアイツを上回る……!
「お前も俺の傀儡にしてやるよ……!」
「ヘッ……かかってきなァ……?」
次は明日の昼頃?




