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case.2 【憤怒】の大罪サタール

四人目

 


「―――切り刻んでやるよ。……“敏速”」



 既に勝負は始まっていた。


 

「何処だ……」



 突然消えたサタールを目で捉えようと、前後左右をくまなく確認する。


 しかし姿は見えない。



「正解は……全部、だ。“剛斬パワースラッシュ”!」


 

 声と共に現れたのは、全方位からの攻撃。

 俺を取り囲むように現れたサタールは、そのまま刀を振り下ろしてきた。



(これは、分身か何かなのか……?)



「クソ、間に合え! “招壁雷しょうへきらい”!」



 招雷と壁雷の合体魔法。それが周囲を雷で満たす。



「無駄でい。『魔断』」



 刹那の剣。

 速すぎて目視出来なかった。


 そして気づいた時には、雷は消え、目の前にサタールが。



「“一閃”」


「速えよ……ッ! “飛剣”!」



 サタールの繰り出す剣技はみな速く、そして強い。

 それにさっきの『魔断』とかいう技。あれは恐らく魔法を無力化出来る技だろう。

 なら魔法は効かない。


 剣だ。

 

 物理しかない。


 そう思った俺は剣を抜き、サタールに対抗する。



「それも無駄でい。“剣天ソードレイン”」



(ッ……! 魔法……か!?)



 剣が空から無数に降ってくる。

 まさに剣の雨。


 あれは、俺のよく使う……“炎天”とかと同じような―――



「お前……魔法も強いのかよ……!」



 なんとか避けながら、俺はそう言った。



「ハッ、そいつぁルシファルナの野郎から聞いたんか?! なら訂正しておきな。俺の剣と魔法は『まだ弱え』んだよ!」



 これで……弱いだと……?



「だがアンタと俺じゃあレベルがちげぇよな!?」



 自分の事を弱いと言っておきながら、その上こちらに煽りを入れてくるサタール。

 まさに“鬼”だ。


 だが、俺もそんな言葉一つで折れる程やわじゃない。



「んなことたぁ分かってる! だから俺は俺のやり方でお前を超える!」


「ヘッ……面白え……。前の魔王じじいと違って、なかなか面白え魔王じゃねぇか!」



 剣も……魔法も通用しない……。

 ならどうするか。



(考えろ、考えろ俺の頭……ッ!)




「―――考える暇は与えねェぜ? “剛斬パワースラッシュ”!」



 言葉通り、考える暇を与えてくれないサタール。

 素人目じゃ理解の出来ない剣技を、目視できないレベルのスピードで繰り出される。


 俺はそれを、無理矢理剣で防ぐのだが……



 ―――カキン……ッ



「折れちまったなァ……?」



 剣が……折れてしまった。


 もともと強い剣ではなかった為、いつかは壊れるだろうと思っていたが、まさかそれが今だなんて……!



 だが、所詮は魔力で出来た剣だ。

 いくらでも生み出すことが出来―――



「んじゃこれで終わりだぜ? “閃光”」



 刹那、サタールが消える。




 ……本当はこんなこと、怖くてしたくはなかったんだが。

 やってみるしかないだろう。


 俺の頭の中に、たった一つだけ思い浮かんだ、悪魔的な発想を試す。



 ―――あの、呪いにも近いスキルを使うのだ。



 サタールは俺が弱いって分かっていて戦いを提案してきた。

 なら、サタールには何か考えがあるのだろう。

 となればもちろん、俺を殺しはしないはずだ。


 現れるとしたら、背後か……正面か。


 いや……またさっきのように全部か。



 それなら―――



 俺は正面に向かって一歩進んだ。



―――グサリ。



 鈍い音。



―――ポタッ……ポタタタ……



 徐々に勢いを増す出血。



「これでこの戦いは終い……だ」


「主様っ!?」



 フッ……フハハ……計画通り……だ!

 これで俺は死ねる・・・



「おい、何やって……俺ァ殺すつもりなんて……!」


「おい! サタール、早く回復魔法を!」


「あ、あぁ……今すぐに……!」



 ルシファルナの指示で、サタールはすぐさま動く。


 させるか。


 ここで回復されちゃ困る。


 ここで、俺は死ぬ!



「さ……せ……る…………か!」


「は……?」


 

 俺は手に持っていた折れたままの“魔剣”をそのまま自分の胸へ持っていき、そして。



―――グサリ



「おい……おいおいおいおいおい! 何やってるんだオメェ!」



 これで、死ねる。



 全てが整った。



 俺はニヤリと笑う。



「笑っている……だと?」



 すぐ帰ってきてやるよ。




 ―――強くなってな!




▶スキル『転生リスタート』を発動します。

これは、呪いの力だから。

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