case.14 白き龍リガルテ
2回目
「なるほど、そういう理由が……」
俺はリガーテに詠唱の意味を教えた。
どうやらリガーテは、剣の知識こそあれど魔法の知識は皆無らしく、初耳だったという。
しかしまあ綺麗に更地になったものだな。
もう、ここに城があったなんて分かる人はこの国の人くらいだろう。
それくらい見る影もない。
「これは……まあ全員死んでいるだろうなぁ……」
「それが、私の望みですから」
自分たちでやっといて、何だが……こう、人を殺したという実感が無いというか。
本当に跡形も無いから、実感も無い訳だな。
って、何を冷静に分析してるんだか……。
俺も、変わったな……。
「……ってか、なんかマグマみたいになってないか? 下……」
更地になった地面からは沸々と煙が立っている。
表面はグツグツと煮立っているような……。
って、あれは溶岩だろ。
高温高圧の爆発が城を消し飛ばしただけでなく、マグマまで生みましてしまった……ということかよ。
俺はそんな城の成れの果てを見つめながら、リガーテに聞いた。
「さて、これからの事だが。リガーテ」
「はい?」
「お前はこれからどうするん―――」
と、そこまで言いかけた所だった。
『グァァァァァァァァァァァァァオ!』
突然の咆哮。
場所は……
「下……!?」
クレーターからだ。
一体何が……?!
「―――ほい、転移完了っと」
「うわっ、ビックリした」
突然、隣に三人が現れた。
マノンが他二人を抱えているような状態だ。
「浮遊できんのはオレだけだからな、まあちょっち逃げてきたって訳だ」
「た、助かりました〜」
「ありがとねマノン」
「おうよ!」
全員、逃げてこれたのは良いが―――
『―――グァァァァァァァァォォ!』
「龍の……叫び……」
地面からはまだ龍の叫び声が聞こえてくる。
一体これは……
「これが……俺の、目的です」
「……え?」
突然、リガーテがそう呟いた。
そのままリガーテは続ける。
「この城の地下には……我が父、リガルテが……封印されていました……」
「リガーテの、父……?」
すると、ちょうどそのタイミングで地面を突き破って現れたのは、一体の白い龍だった。
「父さん……」
『グァァァァァァァァォォ!』
あれが、あの白い龍が……
「―――お前の父なのかよ……?」
「はい……俺の父は、以前“竜王”なんて呼ばれて恐れられて来た竜人族の1人で、その力を恐れた聖皇国は、無抵抗の父を乱暴に捕らえたのです」
この国の奴は、一体どこまで汚れてるんだ。
話を聞くことが出来ないのだろうか。
「魔王殿は聞いたことがありますか。“暴走”、という言葉を」
「暴走……もちろん分かるぞ」
「この世界には“暴走状態”と言う物があります。それは激しい怒りは、絶望、深い悲しみなど、いわゆる「負の感情」が最大限まで引き上げられた時に起こる状態で、今の父はそれなんだと思います」
“暴走状態”、か……。
俺で言う『憤激焉怒』みたいな物なのか?
まあアレは俺の意思で発動できるスキルではないんだが……。
「どうして、そこまで怒っているのか分かるか?」
俺は、“暴走状態”になっているリガーテの父について聞いた。
「はい……理由は恐らく、俺です」
「お前が?」
「はい。父が……リガルテが捕まったのは約1年前。場所は城の遙か地下。俺はそこに何度も何度も助けに行こうとしました。しかし、いつも何かと邪魔をされ、結果的に会うことが出来ませんでした。それが約1年……。もちろん父は怒るでしょうね」
そんな……。
俺は話を聞く限り、聖皇国に対する怒りが暴走状態を引き起こしたのだと考えたのだがな。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ。別に貴方は悪くないでしょうが。むしろ貴方も被害者でしょう? だったらもっと被害者ヅラしてればいいのよ」
俺も思っていた事を口に出して言ってくれたのは、アスモフィだ。
「アスモフィ殿……。いえ、いいんです。とにかく、俺は父を止めてきます」
「……俺たちに、何か出来ることは?」
俺は、リガーテに問う。
「いえ、俺一人でどうにかしてみせます。―――あぁ、それなら。俺が死んだ時は、屍を拾ってやって下さい」
「リガーテ……」
「それじゃ、俺は行ってきます」
そう言ってリガーテ、自らの父の方へ向かって飛んでいく。
―――って、リガーテがどっか行っちゃったら俺は落ち……
(ない?)
「安心しな。オレが浮かせといてやってるから」
「ま、マノン。助かった」
それを見つめながら、ルインは話す。
「主様は、これでいいんですか?」
「ルイン……?」
「主様は、このままリガーテさんが、お父さんに殺されるのを見ていて、いいんですか?」
この質問の真意が何なのか、俺には分からなかった。
しかし、俺の口は言葉を放つ。
「多分。俺もそんな予感はしている。今のリガーテじゃ、リガルテには勝てない。でも、だからといって俺たちが介入していい話でもないんだ。これはアイツら家族の問題だ。だから俺たちがするのは、せめてアイツが死なないようにサポートする事だけだ」
「主様……。フフッ、やっぱり主様は優しい魔王様です!」
ニコリとやわらかい笑みを浮かべ、俺を見つめてくるルイン。
やはり、ルインには笑顔が似合う。
それほどまでにその笑顔は可愛くて、今すぐにでも抱きしめてしまいそうになるが、状況が状況なので、何とか自制する事が出来た。
「ルイン、アスモフィ、マノン。協力してくれるか」
全員に協力を要請する。
これは、俺一人に解決できる問題じゃない。
サポートするなら、全員で……だ。
「ふふふ、愚問よルミナス様。おねえちゃんはもちろんイェスよ!」
ルミナス……?
って……俺のことか。
みんな俺の事は“主様”とか“魔王様”って呼ぶもんだから、すっかり忘れていたな。
「もちろん俺もいいけどよ、アイツら殺しちまわないか心配だぜ?」
「構わない。そこはアスモフィがどうにかしてくれるだろうさ」
「ええっ!? 私も疲れてるのよ!? もう、そこは『俺に任せておけ』くらい言ってみなさいよ!」
「俺も疲れてるんだ。まあみんなで協力しようじゃないか」
第一俺が疲れてるのはお前のせいだからな、アスモフィ……なんて死んでも口には出さない。
―――やはり全員、魔力が底をつきかけているのだ。
それでも協力してくれるなんてな。やっぱりこんな奴らが殺されなきゃいけないのは、おかしい。
絶対に、魔族は守らないと。
俺の中の決意は、さらに固くなる。
「主様、私はずっと主様のお側におりますので。全ては主様の仰せのままに」
「ああ、ルイン。ありがとな」
空中で、頭を撫でてやる。
「ひゃわ! はわわわわわ〜」
なんてだらしのない声をあげたルインは、顔を真っ赤にして俯いてしまう。
そんな態度をとられると、こっちも恥ずかしくなってくるんだが……
「あらあら〜」
「なっ、なんだよアスモフィ!」
「いんや、別になんにも?」
何だか非常に嫌味を感じるが……。
まあいい。
そんなこんなで、俺たちは地上へ降り立つ。
さあ、リガーテのサポート戦……全力で行こうか!
◆ ◇ ◆
『グァァァァァァァァァァァァァァ!』
目の前で咆哮している龍は、俺の父だ。
「父さん……」
『リガ……リ……リガ……リガァァァァァァァァァァァァァァァァァァテ!』
酷く、怒っているな。
俺は、こんな状態の父さんを止めるのか……。
出来るのか? 俺に。
いや、出来るかどうか?
そんな事は関係ない。
“やる”んだ。やるしかないんだ。
「父さん、行くよ……」
『殺す……! 殺ス! 殺ス殺ス殺スコロスコロスァァァァァァァァァァ!』
ブクマ/シールド
高評価/ソード




