case.13 詠唱の意味
明太チーズ味
「私は……俺は……我は……ッ! 悪魔と竜のハーフ……! 半身だけだが、お前らの同族である!」
そう言って着ていた鎧を脱ぎ捨てたリガーテは、自らの歪な身体を見せてきた。
「お前……それ―――」
「言いたいことは分かります。気持ち悪い、ですよね」
そう言って自分を批判するリガーテだったが……。
いや、そうじゃないんだ。俺が言いたいのは―――
「―――かっけぇ!」
「は?」
「いや、だからかっけぇよ!」
そう、想像以上にカッコいいのだ。
竜の血が強いのか、全身は竜人族メインの構成で、白い竜をイメージさせる物だった。
とは言っても、この世界の竜を見たことが無いからハッキリと言い切れはしないが、それでも白い鱗で身体が被われていたのだ。
それに、ところどころにアクセントとして入っている黒色の傷のような紋様が、忘れかけてた少年心……いや、封印しようとしていた中二心ををとても湧き上がらせる。
角や爪、羽は悪魔の物だろう。
魔界で何度か見たことのあるような物だ。
そして鱗や尻尾はまさしくドラゴンのそれだ。
「―――おい、何があったと言うのだ!」
「この惨状は……それにあれは……?」
するとそこに、城内で起こった爆発の対応に駆けつけた別の騎士たちが見える。
「―――ッ!」
リガーテは、急いで鎧を着込み、急いで戦闘態勢に入る。
その間僅か10秒。常人には不可能な技過ぎる。
もしかすると、自分の姿を隠すために、そういう技術のレベルが著しく上がってるのかもしれないな。
「あ、これはリガーテ様! 一体これはどういう状況なのですか?」
ここまでやって来た騎士は、リガーテを様付けで呼び、質問をした。
何ともまあ、雑魚そうなペラペラ鎧を着てるな。
リガーテとは比べ物にならないくらい小物感が凄い。
「おい、エスペル様に報告しろ。城内に紛れ込んだネズミは、魔帝八皇と魔王だった、とな」
「魔王……ですって! わ、分かりました! おい、貴様はリガーテ様の加勢をしろ!」
そう言いながら2人の内の1人が、エスペルへと報告へ走り、もう1人はリガーテの横に並び、剣を構えた。
(ってか、さっきあのハゲジジイごと爆破しなかったっけ―――)
まあいいか。
「ではそろそろ始めようか魔王。ここが貴様らの墓場となるだろうさ」
……えっと、これは演技ってことでいいんだよな?
それなら俺もロールプレイで返してやらないとな。
「こほん。―――フッ……クハハ……クハハハハ! 黙れ愚民が。言葉をそのまま返させて貰おう。ここが貴様らの墓場となるだろうさ!」
最近の魔王、絶好調である。
とってもノリノリに答えてしまった。
しかもそのせいで、後ろでルインたちが「うわあぁぁぁ!」「うおぉぉぉお!」と目を輝かせてしまっている。
「―――ふ、フッ……行くぞリガーテよッ!」
「来い、魔王!」
俺たちは一気に駆け出した。
互いに剣を握りしめ、何度も何度も打ち合う。
(手を抜いてる訳じゃないが……この男、強いぞ……!)
「り、リガーテ様! 私はどうすれば!」
「援軍だ! 援軍を呼んで来い!」
「は、ハッ! 今すぐに!」
戦いながら後ろの騎士に指示を出したリガーテ。
指示を受け、援軍を呼びに走り出す騎士。
「さて魔王殿。それに魔帝八皇の皆様。この場所を更地にすることは可能ですか?」
俺たちしか居ないと分かったリガーテは、再び提案をしてくる。
「ほう……出来ると思うが、それだと中にいる人が……」
「安心してください、国の重鎮以外は自宅で休暇を取らせてますので」
「仕事が早いな。まるで俺たちがここに来ることが分かってたみたいだ」
「もちろん、分かってましたよ」
いやいや、普通に怖いことを言うでないぞ。
そんな予知みたいな事が―――
「時間がありません。決断は早めに」
「……むぅ。仕方がない―――派手にやっていいんだな?」
「ええ、どうぞブチかまして下さい」
「了解だ。―――皆、どデカイ一発、いけるか?」
俺は、振り返り皆に聞く。
「別にいいですけど……」
「貴方は一体何者なの……?」
「お!? まだ撃っていいのか!?」
「事情は後で説明する。今はこの男が俺たちの仲間であるという事だけ覚えておいてくれ」
まあ、敵だと思っていた奴が俺と親しげに話していたら、心配にもなるよな。
当然の性だ。
「それじゃあかますぞッ!」
「分かりました!」
俺の合図で、まずはルインが前に出た。
「ふふ、何だかこういうの久々で楽しいですね。それでは僭越ながら私から―――」
「まあ待てっ! オレも一緒に撃たせてもらうぜ!」
「それならお姉ちゃんも!」
……全員で、放つのか……?
それって、マジでヤバいやつなんじゃ―――
「皆さん……! それでは―――『魔を極め、覇を進む我が主に捧げる混濁の魔よ。」
「―――今幾重にも重なり、我らを遮る弊害を打ち滅ぼさん。」
「火よ、炎よ、焔よ! 我の手に集いて、全てを焼き焦がす最強へと至らん!」
魔法の、詠唱……?
って、これ……この感じはマジでヤバいやつ―――
「すまないリガーテッ! 空まで飛べるか!?」
「え、ええ。可能ですが」
「それなら早く俺を抱えて避難してくれ! すぐにだ!」
「え? よく分かりませんが……分かりました……ッ!」
俺の指示で、リガーテは上の鎧を脱ぎ捨てて翼を大きく広げた。
そしてそのまま勢いよく空高くまで飛んでいく。
「一体何が……」
「「「―――“爆滅崩壊炎魔”』!!!」」」
刹那、三人が放った魔法は。
■
―――辺りを更地にしてしまっていた。
「ほ、ホントにやるとは……」
「避難が少し遅れてたら、俺たちは……」
「こ、怖いこと言わないでください。それにしても、どうして危ないと分かったのですか?」
「ああそれは……」
魔法、魔術には“詠唱”という物が付いて離れない存在だ。
本来、無詠唱でも唱えられる魔法だが、詠唱をする事によって、その威力が本来のモノになる。
無詠唱だと、発動スピードが段違いに速くなるが、その代わり威力が本来より少し下がる。
だから、余裕がある時は詠唱をしたほうがいいのだ。
と、あのゴミたちに教えてもらった。
簡単な詠唱でも威力は上がるから、と。
(だが、まさかここまでの威力になるとはなぁ……)
と、俺はさっきまで自分たちが居た場所を見ながら、そう思った。
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