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case.12 リガーテという男

それでは聞いてください。

新曲、鼻詰まりラプソディー。


「おい、アスモフィ。一体どこに居るんだ? そのエスペルってジジイは」



 俺は、アスモフィに問う。



「あ、そこそこ! ちょうど今そこに居るよ!」



 アスモフィは、今居る2階から下の階を指差して言った。


 そこには、ちょうど大階段を登っていくハゲ頭のじいさんが居た。



「あのハゲオヤジが?」


「うん、皇帝エスペル。―――アイツが魔族を……!」



 グッ、と拳を握り、その怒りを顕にするアスモフィ。



「それで……? アイツをどうすればいいんだ」



 俺のこの問いに皆は、



「殺すのよ♡」


「爆発させちまおうぜ!」


「はい、殺しましょう」



 と、答えた。



(おお……うちの女性陣は怖いな)



 自分で提案したとはいえ、ちょっとあのジイさんが可哀そうに思えてきたぞ。



「う、うむ、了解した」



 と、言うわけで全員隠れる態勢から、立ち上がり、今すぐにエスペルを殺しに行こうとしたその時だった。



「―――何処へ、行くのですかね」


「ッ!?」



 声がしたのは後ろから。

 俺たちは即座に振り向いた。


 するとそこに居たのは、全身に鎧を纏った一人の騎士。

 声的に、コイツは男で間違いないだろう。




「……おいアスモフィ、“隠蔽”がかかってるんじゃないのか?」


「そ、そのはずなんだけど……」



 “隠蔽”によって視覚的には誰にも見えてないはずなのだ。

 しかしこの騎士には見えている。


 だから声をかけられた……そう言うことになる。

 なってしまう……が。



「はは、そんなの簡単な事ですよ。“隠蔽”なんていう初歩的な魔法が、聖騎士団長であるこのリガーテに通用するとでもお思いで?」



 聖騎士団長……リガーテ……。

 俺の疑問に答えた、リガーテと名乗る騎士。


 俺はそんなリガーテに問う。



「なあ、それで俺たちはこれからどうなるんだ?」


「その質問に答えることはもちろん可能です。しかし、3つほど貴方たちに確認したい事がありますので、先にそちらに答えてもらいたいですね」



 リガーテはそう言って、3本の指を立て、俺たちに一つずつ質問を始めた。



「―――まず一つ。貴方たちは魔族ですか?」



 いきなり、核心を突く質問。

 正直、真面目に答える義理はないが、わざわざこうして聞いてきていると言う事は、何か理由があるのだろう。


 そう思い、俺は正直に答える事にした。



「ああ、俺以外は魔族だ」


「あっ、主様!?」


「安心しろ、ルイン。この男は多分……」



 多分……その先の言葉はまだ見つからない。

 だが、何かある気がする。俺の勘がそう告げている。



 リガーテは「ふむ」と腕を組み、何かを考えていたが、やがて次の質問を始めた。



「なるほど、次です。貴方たちの、ここに来た目的を知りたい」



(やっぱりか……わざわざこんな質問をしてくるってことは……)



 その“勘”が、さらに強くなる。

 そして俺はその質問に答える。



「目的、か。目的は」


「それはおねえちゃんが答えるわ」



 と、割り込んで来たアスモフィが俺の代わりに言葉を紡いだ。



「この国の、特に上層部の人たちだけど。彼らは私たち魔族を心底毛嫌いして、聖魔法で殺したり、自分たちの都合の良いように利用しているでしょう。私たちは同族を、そして魔界を守りたいの。だからその為に、この国を悪くしているお偉いさんたちを全員ブチ殺してやるのよ……ッ!」



 少しずつ、その怒りを現していくアスモフィ。最後には叫びに近い訴えとなった。



「ふむ、やはり……そこまで聞ければあとは―――3つ目の質問だ。貴方たちは、“強い”か?」



 リガーテのその質問で、俺の“勘”は確かな形を得、実感へと変わっていく。



(この男、俺たちと利害が一致しているな)



 そう。利害の一致。

 まだ確信には至っていないが。



「……強いかどうか、か。まあ強い方ではあると思うがな」


「フッ、なら私と戦ってそれを証明してみてください。―――立場上こうしなければならないのを許してください……“魔王殿”」



 小声で俺だけに聞こえるようにリガーテはそう言った。

 確かに、“魔王”と。



 ―――ッ……! やはりか、やはりだ……!

 この男は完全に“こちら側”の人間である!


 ならこの、戦うという行為は、俺たちの強さを測ると共に、自らの主への見せつけとして行う、ということになる……はずだな。



「主様……?」


「おいおいどうするんだよ魔王! 俺は戦闘なら大歓迎だけどな!」



 まあ戦闘狂のマノンがいれば、もう勝てる気もするけどな。



「ではリガーテとやら。我ら魔王軍の力を受けてみるといい。マノン、派手にぶちかませ」


「え? いいのか!? なら! ―――爆発炎魔エクスプロージョンッ!!」



 俺の指示で、マノンは屋内で巨大な爆発を巻き起こした。


 チュドーン!!と、もちろん屋内で放たれたそれは、建物の内側のみならず、外にあった庭や城壁にも影響を及ぼす程の巨大な爆発であった。



「グッ……! さすがの実力だな……“魔帝八皇”よ……!」



 リガーテは立ち上がりながらそう言った。



「アァ? 魔帝八皇おれたちの事知ってんのかよ」


「ああ、マノンにアスモフィ。今代の魔帝八皇、その魔法使いと僧侶の枠に名前があったと思うが。違うか?」


「チッ、貴方……! 何者なのよ!」



 アスモフィは、叫びながらリガーテへと問う。



「私は……俺は……我は……ッ! 悪魔と竜のハーフ……! 半身だけだが、お前らの同族なのだッ!!」



 そう言いながら鎧を脱ぎ捨てたリガーテの身体は、角、尻尾、羽、鱗、と悪魔や竜に必要な部位が全て揃っている、いびつな形をしていたのだった。

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