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case.9 【色欲】の大罪アスモフィ(3)

よっす



(自然と体が軽い気がする。これも、スキルの力なのか……?)



 俺は、スキル『侵蝕アシッド』を選択した。

 都合よく現れたそのスキルは、俺の予想を超えた効果を秘めていたのだ。



 ・『侵蝕アシッド』……対象を、蝕む。



 いや、文面だけ見れば分かりやすくて何とも助かる説明なのだが。

 実際、この効果でさっきの呪いみたいな効果を打ち消したのだ。


 お陰で、体が異常なまでに軽くなった。

 もしかしたら、だが……『侵蝕』が俺の体の悪い部分とかも食ってくれるスキルなのかもしれない。




 だから今、俺は手に持った“魔剣”で―――




「クッ……」


「防戦……一方だな! アスモフィ!」



 ただ守ることしか出来なくなったアスモフィを間髪入れず攻め続けていた。

 攻撃し続けていれば、いつか勝機はある。


 そう信じて。



 だが、もちろんアスモフィも黙っちゃいない。


 

「……あまり調子に乗らないでくれるかしらッ!? ―――“風撃ウィンドハンマー”!」


 

 アスモフィは手を振りかざして風の魔法を放ってきた。



「クッ……だがその程度の魔法……ならッ!」



 一瞬態勢を崩すも、何とかすぐに持ち直した俺は再び攻撃を開始。



「おら……ッ! そろそろ負けを認めてはくれないか……ッ!?」


「うるさいわね! いいから早く死になさいよッ!」



 再び風魔法。簡単に人が吹き飛ばされるくらいの強い勢いを持った風が俺を襲うが、それも無駄に終わる。



 スキル発動、だ。



▶『侵蝕アシッド』を発動します。



「そろそろ落ち着いたらどうだ……ッ!?」



 俺の手からは毒霧のような物が放出される。

 これが、実体化した『侵蝕』の1パターンだ。

 どうやら他にも、固体や液体のバージョンもあるみたいだが。



 とにかく、俺の放った『侵蝕』が、アスモフィの風魔法を蝕み殺したのだ。



「何よ……何よ何よ何よ! 何で勝てない訳!? だって私は魔帝八皇なのよッ!? 魔法だって貴方より数百倍も上をゆく筈なのに!? なのに何で貴方は生きているのッ!?」


「マジでそろそろ落ち着けよ……ッ!」



 連発して魔法を放つアスモフィ。

 それを俺は『侵蝕』で蝕み殺していく。



「そろそろ……終わりにしようッ!」


「ハァッ!? 嫌よ! 負けるのなんて嫌ッ! だったら……! マノン! そんなゴミ早く片付けてこっちを助けなさい!」



 …………ァ?

 コイツ、今何て言った?


 ルインの事、ゴミって―――



「チッ、わーってるよ! オラ、アスモフィの頼みだからなァ! 早く倒されてくんな! “爆発炎魔エクスプロージョン”!!!」



 マノンによる爆発魔法が炸裂。

 今までの爆発より数段上の威力があるように見える……が。



(ルイン……大丈夫だよな……?)



「くううっ……! まだです……!」


 

 何とかルインは立ち上がっていた。

 良かった、まだ大丈夫そうだ。


 だが、このままだとルインは……



「ヘェ? まだ立つんだァ! んじゃあもう一発!」



 おい……マジかよ……!

 あれをもう一度喰らったら、流石にルインでも……!



「―――“爆発炎魔エクスプロージョン”!!!」


「キャァァァァァァァァッ!」



 ルインはマノンの爆発魔法を喰らってしまい、遥か後方へ吹き飛ばされる。



「ルインッ!」



 俺はすぐ助けに行こうとするが、



「次の相手は俺だぜェッ!」


「私も居るわよッ!」



 前方からはマノンが、後方からはアスモフィが同時に襲いかかってくる。



 この状況……勝ち目はあるのか?



 ―――いや……やるしかない。じゃないとルインが……!

 ルインの、怪我の手当てをしないと!



 フーッと大きく息を吐く。

 

 

 落ち着け、俺。

 いいか……?俺は魔王なんだ。

 魔王なら部下のしつけくらいちゃんとしとかないとな……?

 分かるだろう?



「何突っ立ってんだオラァァァァ!」



 マノンの攻撃。

 魔法使いのくせに物理で殴ってくるとはな。


 距離は僅か数メートル。


 なら……!



「“招雷しょうらい”! からの“連撃剣ラッシュブレード”!!!」


「おおっ!?」



 雷魔法による撹乱のあと、“連撃剣”で一気にダメージを稼ぐ。


 “連撃剣”は、文字通り剣で相手に連撃を加えるわざだ。

 絶え間なく攻撃をし続ける。



「クッ……そおっ!」



 マノンは耐えきれず、1度後退した。


 ホッと一息、俺が安心したのもつかの間、そこへすかさずアスモフィが襲いかかってくる。



「貴方まだ本気出してないわよね? そうよね? ムカつくわ! とっとと本気出しなさいよ!」



 そう言いながら風魔法を放つアスモフィ。

 まったく、無詠唱なのはズルいだろうが。



「『侵蝕アシッド』!」



 再びスキルで魔法を打ち消す。



「ああもう! マノン! 攻撃は頼んだわよ!?」


「了解だぜェ!? オラァ!」



 アスモフィがそう叫ぶと、後ろから高速で飛んできたマノンが一本の大剣を持って、それを振りかざしてきた。



(マノンのヤツ、剣も使うのかよ……ッ!)



「グッ……!」


 

 俺は大きな“魔剣”を作り、何とかそれを防ぐが……



(この状況……流石に2対1はキツイか……?)

 


「オラオラオラァ! 余所見すんなよ!?」



(クソ……しかもコイツの攻撃速いぞ!?)



 マノンの大剣での連撃を何とか、何とか受けているが……

 こんな連撃、受けるので精一杯だ……!



「クッ……」


「オラオラオラァ! どうした魔王様よぉぉ!?」



 クソ……このまま打ち合っててもジリ貧だ。

 それなら……ッ!



「―――“残影ざんえい”!」


「これは……ッ!」



 ―――“残影”とは、超高速で動き、影がその場所に残ったままに見える技だ。

 これも縮地との併用で可能になる技だ。


 まあつまりは、一度引くわけだな。



「逃げるなんて小賢しいぞッ! “爆発炎魔エクスプロージョン”!!」


「―――グァァァァァァッ!」



 俺は、マノンが放った爆発魔法を躱すことが出来なかった。

 直撃……ではないが、軽くダメージを負ってしまう俺。



(というかコイツ……自分ごと爆発魔法で攻撃してきたぞ……?!)



 何とか俺は態勢を立て直すが、どうも活路が見えない。



(何か……何か無いのか……!?)



 しかし、俺がそう思案している時だった。

 しばらく攻撃を仕掛けてこなかったアスモフィが声を上げたのだ。



「うふふふ………あははははっ……!」


「何だ? 何故笑って―――ッ! おい! 何をしている!?」



 俺が見たのは……ルインが……ルインがアスモフィに持ち上げられている姿。



(何だ?何をしている?)



「あはは……私分かっちゃったのよ。貴方が本気を出すにはまずこの女をどうにかすれば良いって」



 ァ……?

 コイツ、何を言って……?



「じゃあ、バイバ〜イ」



 ―――グサッ。

 鈍い音だけが、この闘技場バトルフィールドに響いた。



 あ……あ……。

 あああああ……あああああああ!



「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!」



 ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなッ!


 何で……何でまたルインが……



 あああああ……ぁぁぁぁぁぁッ!



「うふふ、安心なさい。この子は後で私のまほ―――」




「―――ブチ殺す……! テメェだけはブチ殺してやるッ!」



「えっ」



 また……俺はまた……!

 何でいつもいつも……!



「ウアァァァァァァァァァァァァッッッ!!」




▶スキル『憤激焉怒エンドレイジ』を再習得しました。

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