case.5 司りしは
次なる地へ
―――チュドォォォォォン…………!
と、マノンの魔法が炸裂し、綺麗な庭園のど真ん中で大爆発が起きた。
「いたた……」
「お、おいマノン! いい加減に落ち着け!」
「うるせぇなルシファルナ! オレは面白いことがしてぇんだよ!」
咄嗟に顔を隠していたが、それを戻すと、俺たちを守るようにルシファルナが防御壁を展開してくれていた。
「チッ、守りやがって……」
(コイツもしかしたら、ただの戦闘狂じゃねぇか……?)
……でも、まあバカっぽいし、もしかしたら簡単に仲間に引き入れられるかもな。
物は試しだ、やってみるか。
「なあマノン」
「んあ? 何だよ」
「お前、魔帝八皇なんだろ? 偉大なる力の持ち主の」
「おう! そうだぜ!」
「なら、俺と楽しいことしないか?」
「楽しいこと?」
「ああ、そうだ。俺たちでこの世界を“支配”しよう。そんで俺たちの理想を詰め込んだ、そんな世界を作ろうぜ」
「アァン……?」
うーん……無理だったか……?
さすがにそんな簡単に仲間になるほど、バカでもないか。
なんて思ったのだが―――
「おおおぉぉ! 面白そうじゃねぇか! 前の魔王は『平和に暮らそう』とか『争いは好まん』とかグチグチ煩えじじいだったからなぁ! お前みたいなのは好きだぜ! 乗った! オレを仲間に入れやがれ!」
お、おお。
やっぱりバカだった。
「もちろんだ。これからよろしく頼むぞ!」
拳を合わせる俺とマノン。
そして俺はそのままルシファルナに問う。
「お前も、来てくれるか?」
「もちろん。どこまでもお供いたします」
よし、これでピースは4つ揃った。
魔王、そして魔帝八皇が2人。
それに……
「―――ルイン、聞いてくれ」
「え? あ、はい」
「俺の選ぶ暗殺者はお前がいい」
そう、俺が選ぶ最後の魔帝八皇の一人、それをルインにしようと思うのだ。
「わ、私ですか……?」
「ああ」
「わ……私で良ければ! なります! 暗殺者に!」
良かった……。
これで、10個のピースの内、既に4つが揃った事になる。
具体的に、全部揃ったら何かが起きるとか、そういう訳では無いが、多分こういうのは揃えたほうが良いんだろうと、俺の直感がそう告げているのだ。
「―――改めて、これからよろしくな。お前たち」
「はい!」
「了解しました」
「おう!」
―――これが、ここに新たな魔王軍が築かれた瞬間だった。
■
「それで、気になってたんだが」
「はい?」
俺はルシファルナに気になっていた事を聞きてみた。
「あのさ、お前から聞いた魔帝八皇の名前で気づいたんだが、お前たちって、もしかして神話に出てくるような悪魔の子孫だったりするのか?」
「……ええ、その通りですが」
「やはりか」
まあ、流石にな。
《七つの大罪》は、日本でもかなり浸透している部類の神話・伝説の一つだからな。
もちろん元中二病患者の俺もよく使わせてもらっていたさ。
「私は堕天使ルシファー様の」
「オレはマモンって悪魔のだ!」
そしてルシファルナは、続けるようにまた他のメンバーについて語ってくれた。
・サタールは大魔王サタンの。
・レヴィーナは悪魔レヴィアタンの。
・ルヴェルフェは悪魔ベルフェゴールの。
・ベルゼリオは堕天使ベルゼブブの。
・アスモフィは悪魔アスモデウスの。
「七つの大罪に神話級の悪魔か……」
ホントに、ファンタジーの世界って言うか、ゲームの世界っていうか……。
(登場する題材がシンプルだよなぁ……)
「……それで主様、これからどうするんですか?」
ルインにそう聞かれて、俺は少し考える。
ルシファルナの話だと、今の魔界は不安こそ広がっているものの、別に何か脅威があるわけでもないらしい。
だったら今の俺たちがするべきことは……
「そうだな……。まずは残りの魔帝八皇を集める。ルシファルナ、一番近くにいる魔帝八皇は誰だ?」
「一番近く―――となると、彼女ですね」
「誰だ?」
「―――【色欲】を司る僧侶、アスモフィ。彼女が、外界の近国、《聖皇国ラーゼ》に居るようです」
《聖王国ラーゼ》に居る、僧侶のアスモフィさんね。
よし、覚えたぞ。
「それでは、私が魔界に残りますから、皆さんで彼女を探してきてください」
「ん? あ、了解だ」
魔界を守る人は、最低でも一人は居ないとだもんな。
それなら確かにルシファルナが適任かもしれない。
「それじゃあ、ちょっと休憩したら行くとするか」
「はい!」
「おうよ!」
と、いう訳で俺、ルイン、マノンの3人で《聖皇国ラーゼ》へと出発する事になった。
「すまないルシファルナ。なるべくすぐ戻るから」
「いえ、お気になさらず。それよりも気をつけて下さいね」
「何をだ?」
「いえ、彼女……アスモフィは、結構頭のおかしいヤツですので」
「そ、そうか。ご忠告どうも。それじゃあ行ってくる」
「いってらっしゃいませ」
そうして俺たちは魔界をあとにした。
目指すは聖皇国ラーゼ。
そこに居る【色欲】の僧侶、アスモフィに会って仲間に引き入れること。
(今回はどうか戦う羽目になりませんように……)
そんな願いが叶うことを信じて、俺たちは歩を進めたのだった。
ぶくぶくまっくぶっくまーく!




