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case.2 電子の世界



『ドーモ』


『コンナ ヘンピ ナ バショマデ』


『ゴソクロー クダサリ』


『マコト ニ』


『カンシャ!!』

 

『ドーゾ』


『ゴユルーリト』


『《ドライガル》ヲ オタノシミ クダサイ』



 ………………?



 …………………………?



 ……………………………………?




「な、な、なぁ。ベルゼリオ?」


「ぇ――――――――――――」



 戸惑いを隠しきれないのは、僕だけじゃなかったようだ。

 というか僕がこの空間に来たときには、ベルゼリオがこうして固まっていたのだ。



 もう少しだけ、今の状況を詳しく説明しよう。

 僕も少し頭の整理が必要だ。 


 まず。

 僕たちは、《護王国シュデン》の“秘境”の地にあると言う、《龍の隠れ里》と言う場所に向かっていた。


 ベルゼリオ曰く、『長閑のどか』で、『心頭滅却出来るような場所』らしいが……。



 そんな場所へ向かう目的は、大きく分けて二つ。



 一つは……というかこっちが目的の大半を占めているのだが、本来のそこへ向かう目的、『修行』をするという事。

 ベルゼリオ曰く、若くして“龍神”の位に至った師範が居るという事なので、その人に稽古を付けてもらうと言う。



 そして二つ目。

 こっちは、僕が勝手に考えているだけなのだが、先の戦いで大怪我を負った魔王ルミナスと、ミカエラの治療を行うということ。


 こちらは現在進行形でインドラ……改めディラと、ガネーシャ……改めリアが行ってくれているが、回復があまり得意では無い二人は、治療に苦労していた。



 ……とまあ、こんな感じで、少しは落ち着ける場所なのだろうと期待して、胸を膨らませていたのだが―――




「本当にこれは何なんだ」




 さて、状況説明を続けよう。


 そんなこんなで《シュデン》に到着した僕らは、建物と建物の隙間にあった小さな小路に入っていき、道の途中で、建物の壁にベルゼリオが手をかざすと、転移用の魔法陣が浮かび上がって来たのだ。


 当然僕たちはそれに入った。

 そうしてこの、《龍の隠れ里》にやってきた訳なのだが。



 それがどういうことか。

 今僕たちが居るのは、そんな、《龍の隠れ里》と言う名前に似ても似つかないような、とてつもなく発展した町に来てしまったのだ。


 僕たちが到着するなり、突然変なロボットがやってきて、カタコトで僕たちを歓迎した。


 

 そして、その歓迎してくれたロボットの内、最後のヤツがこう言った。




 ―――『ドライガル』をお楽しみ下さい。と。




 転移してきた先は、かなりの高所で、町を一気に見渡すことのできる場所だった。


 そこから眺めると、眼前には、かなり大きなビルや建物が立っており、とにかく、今まで見てきた国や町よりも大きかった。



 そして何よりも驚いたのは。

 この空間全てが、電子で構成されていて……というのも、もっと分かりやすく言うなら、バーチャル的空間になっていたのだ。


 足元の草むらや、その他各所がところどころバグのようにモザイク状態になっているのが分かる。



 さて、ここまで聞いてなんとなくお分かりいただけただろうか。

 そう。

 ここは、恐らく《龍の隠れ里》などという場所ではないのだ。



「おい、お前たち。どうでもいいが、早く目的地へ向かうぞ」



 と、怪我人を絶賛治療中のディラが、先へ進もうと促した。

 が、ベルゼリオは依然として口をあんぐりと開けてボーッとしていた。



「おい、ベルゼリオ。ベルゼリオッ!!」


「……ハッ!!!」



 ようやく目が覚めたベルゼリオが、目を充血させながら僕のことを見てきた。



「とりあえず先に進むぞ」


「……わ、分かった」



 そうして僕たちは、眼前に見える巨大な町に向かって、歩を進めるのだった。

 大きな大きな坂をくだって、町中へと入る為に。







「それで、ベルゼリオ」


「…………」


「ここは本当に、《龍の隠れ里》なのか?」


「…………間違いでは無い。だが―――」



 そう言ってベルゼリオは、再び周囲を見回した。



「我が居た頃とは、かなり……というか変わりすぎだ。もはや原型などこの空間の辞書には乗っていないな」


「ということは、何かがあったんだろうな」


「そう……だな」



 何かがあったんだろうな、なんて僕は言ったけど、もしここが本当にただの長閑な場所だったのならば、何かがあった程度じゃ済まない程の発展具合だろ。



「なあお前たち。今、我々はその“龍神”と呼ばれる師範を探しているのだろう?」


「ああ」


「それなら、恐らく先程通り過ぎたぞ?」



 ディラがそんな事を言ってきた。

 そしてリアまでもが、



「あー、さっきの? 確かに、オーラ凄かったけど、まさかあの人が……なんてねぇ……」


「気づいていたか。もし彼に会いたくば、今すぐ引き返すことを勧めるぞ」



 マジかよ。

 さっき通り過ぎた……っていうとロボット達ぐらいしか思い当たらないが……。


 まあ、とにかく……そこに師範がいたのなら、今すぐ引き返すことに賛成だ。



「おい、ベルゼリオ。ディラたちの言うとおり、一旦戻るぞ!」


「あ、ああ……」



 今度はくるりと踵を返し、また来た道を戻り始めた。



「むぅ……早く落ち着きたいものだな」


「そうねぇ……早く行きましょ?」



 二人は魔王とミカエラを治療しながらそう言っていた。

 確かにこんな大きな町に来たのに、そこに辿りついてすらいないという……。



「僕も二人の意見に賛成だ。早くその師範とやらに会いにいこう」


「そ、そうだな……」



 全員気怠さに包まれながら、足を進めた。

 目指す場所は先程の高地……いや、その隣に広がる森だろうか。



 とりあえずそこへ戻るのだ。

 とは言っても、もう目と鼻の先なのだがな。



「さて、ディラ、リア。さっき通り過ぎたというその師範は何処に行ったか分かるか?」


「ん……っとね」


「そこの森だろう?」


「ああ、そうね……確かに、気配はするわ」



 やっぱり森か。



「それじゃあ……まあ、行きますか」


「そうだなぁ……」



 ベルゼリオがもう心ここに有らずと言った様子で答える。



 驚くべき事は沢山あるが、ひとまずは目的を達成しよう。

 だから僕たちはまず、ベルゼリオの師範を探しにいく。


 そんな感じで、僕たちは森の中へと入っていった。



 この、電子の大国に似合わない、小さな小さな森の中へと。

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