case.6 【後編】からまるこうさく
《魔王ルミナス視点》
「おい、ここは何なんだ? 僕にはただの迷路にしか見えないが?」
「フム……そうだな。あれから、かれこれ30分くらいは迷っているのではないか……?」
「次は右よ!」
「おい待てよクソ天使! さっきも右行っただろうがッ!」
……うーん。どうしてこうなったのか。
さっきまでは普通に楽しい迷路だったのに、ミカエラが先導し始めてからだんだんと道に迷い始めて、ベルゼリオが言ったようにあの最初の扉に入ってからかれこれ30分以上は迷っていたのだ。
「ああもう! ボクが先導する! 皆ついてきな!」
「ちょ、待ちなさ―――」
「―――“麻痺毒”!」
「ひゃぁぁぁぁっ」
ルヴェルフェの魔法を喰らって、その場に倒れ込むミカエラ。
「お、おい、何をして―――」
流石に心配になった俺はルヴェルフェに声を掛けるが、ルヴェルフェはそれを気にせず俺に笑いながら、
「さ、進むよ」
と、痺れているミカエラを引きずりながら道を進んでいくのだった。
実際、それからというものサクサクと道を進んでいき、しょうもないなぞなぞも解き、しばらく歩いているとやっと光が見える空間が見えてきた。
「―――ゴールか……?」
■
《レヴィーナ視点》
「―――何とか罠からは逃れたけど……この迷宮、やっぱりおかしいわ……」
「おかしい……とは?」
「私のスキル……『罠検知』『危機感知』『気配感知』に何も引っかからないのよ」
……『罠検知』『危機感知』に引っかからないのは絶対におかしい。だってさっきの落とし穴(?)は明らかに罠だったはずだ。
でも、私にそれを見抜けなかった。
ということはこれを仕掛けた人物が、相当強力な魔法使いであるということは確かなのだ。
つまり、ソイツが『罠検知』のようなスキルからも逃れられるように、罠自体に隠蔽魔法を施している……と思われる。
「―――確かに、それはおかしいですね」
「『未来予知』を使いますか……?」
「いえ……月夜ちゃんの『未来予知』はかなりの体力を消費するはずよ。こんなところで使うべきじゃないわ」
今はとにかく先に進んでみないと。
そして、この迷宮が何なのかを調べないと。
「―――ハァ……どうして楽しい尾行計画がこんな事件に変わるのよ……」
「全く同感です。―――まあ、まだ事件と決まった訳ではないのですから、余り気負わずに行きましょう?」
「そうね。今はとにかく進んでみましょうか」
「はい」
「うん!」
と、いう訳で私たちは再びゴールを目指して迷宮を進むことにした。
ただ、そこからはそれといった異変は起きず、変ななぞなぞが出てきたり、割と難しい迷路が続くだけで普通にただの迷路と化していたのだ。
それはそれでおかしいと思うが、警戒だけは怠らないようにして進んでいた。
のだが―――一つだけ致命的な事実が発覚してしまったのだ。
それは何か。
「―――あれ、後ろだっけ」
「右じゃない?」
「あれ、でもさっきこっち通ったよ?」
―――全員が、方向音痴なのである。
まあつまり何が起きたかと言うと、同じ道を行ったり来たりを繰り返して、かれこれ一時間くらいは足止めを喰らっていた訳だ。
「そろそろ……この迷宮踏破に終止符を打ちましょう……!?」
「次は……右です!!」
「いや、待って!! そうやって何回も間違えてきたんだから、次は左じゃない!?」
「「月夜ちゃん天才!?!?」」
私よりも天才の逸材がいるとは。
まあ、私のほうが天才なんだけどね。
「じゃあ、行くわよ……!?」
ドキドキしながら、私たちは左の道に進んだ。そして道なりに進んでいくと……
「―――光……!?」
「来ましたね!」
「やったね!!」
ついに、ゴールと思わしき道を見つけたのだ。
これは……勝つる!!
「さあ、行きましょ!!」
私たちは思わず駆け出した。
目指していたゴールが……目の前にあるのだから!
「さぁ! ゴールよ―――って……え?」
■
理由は異なるが、《中央商帝国アルマス》へと足を運んだ、3つのチーム。
とある一人のローブの人物によって、各チームは超巨大迷宮、“呪占迷宮”へと入ることになった。
最初に到着したのは、レヴィーナ・ラージエリ・月夜のチーム。
彼女たちが選んだ道は、中央広間の左の道。
リーダーのレヴィーナは、迷宮内に自身の所持スキルである、『気配感知』『危機感知』『罠検知』の3つのスキルに、微塵も反応が無いことを不審に思っていたが、最初の道の落とし穴以外に罠が無いことに、少しだけ疑問を感じていた。
全員が方向音痴で、一時間以上も同じ道を迷うという、もはや神技と呼べるレベルの行動を起こしながらも、何とか迷宮中心部へと辿り着いたのだった。
次に到着したのは、魔王ルミナス・ルヴェルフェ・ベルゼリオ・ミカエラのチーム。
《護王国シュデン》の秘境、《龍の隠れ里》に向かう道中、“修行して強くなる”という目的を一時的に“天帝八聖の捜索”に変更し、シュデンに向かいつつも、その途中にあったアルマスへと到来したのだった。
彼らは中央広間の正面、鍵付きの扉の先の道を進んでいた。
先導者のミカエラについていった魔王軍面だったが、ミカエラの奇跡レベルの方向音痴によって30分前後の足止めを喰らっていたが、しびれを切らしたルヴェルフェが魔法でミカエラを動けなくさせ、代わりにルヴェルフェが先導する形で迷宮を進んでいった。
そしてそれからというもの、先程までの事が嘘のようにサクサクと攻略していき、ようやく迷宮中心部へと辿り着いたのだ。
最後に到着したのが、皇白夜とラグマリアのコンビ。
二人は中央広間より、残っていた右の道を選択。
ラグマリアの類稀なる空間把握能力、そして記憶力によって二人はサクサクと迷宮を進んでいき、特に詰まる事無く迷宮中心部へと辿り着くことが出来た。
とまあ、こんな感じで、それぞれ目的は違えど、タイミングよく“呪占迷宮”へと集まり、そしてタイミングよく迷宮の中心部へと辿り着いたのである。
さあ、いよいよ邂逅の時である。
■
「「「―――え」」」
全員、勢いよく道を飛び出して、迷宮中心部へと現れた。
そして、飛び込んでくる情報。
その全てをいち早く処理し、行動するのが早かったのは魔王ルミナスだった。
「―――“煙幕”ッ!」
魔王は姿を煙で隠すが、そこはレヴィーナの『気配感知』が力を発揮する。
「そこねっ―――!」
レヴィーナが考えるよりも早くに体を動かし、魔王を引っ捕らえようとしたその瞬間。
さらに事件は重なった。
「―――ヒヒヒッ! ヒャハハッ! 九名様ご案内……地獄の迷宮へヨウコソォォォオオォォォッ!」
何処かで聞いた覚えのあるかすれ声がそう叫び、直後地面が崩れ落ちた。
予兆などなく、一気に、勢いよく、だ。
「うぁぁっ!」
その驚きは誰のものだったのだろうか。
分からないが、飛べないものはそのまま落下していく。
そして、『飛翔』などの飛行スキルや魔法を持つ者はそれを試みる。しかし、不幸というものは度々重なるもので―――
「「―――飛べない……ッ!?」」
誰かと誰かの声が重なる。
翼でも、スキルでも、魔法でも飛ぶことが出来なかったのだ。
「―――ヒヒヒッ。さあ、そのまま地獄へおいで……」
そう、かすれ声に誘われるように、彼ら九名は迷宮中心部から、勢いよく落下していくのだった。




