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case.30 新たなる【傲慢】の罪






「フッ……ク……ァ……ァァァッ!」



 ルシファーが淡い光を放ち、ルシファルナさんの方へと吸い寄せられていく。それと同時に、ルシファルナさんからは苦しそうな声が発せられる。



「ククク……これで、我はようやくッ! ようやくッ!!!」


「おいヌアザッ! テメェでどうにかできねェのかッ!?」



―――今ならまだ間に合うかもしれませんッ! 早く交代をッ!!



「了解ッ!」



 するとこの状況を危ぶんだのか、一瞬にしてプロメテウスはヌアザとバトンタッチした。

 身体の感覚が機敏とした物に変わったのを感じられる。



「ヘル、周囲の警戒をお願いしますッ!」


「何をするつもりなの!?」


「“融合解除”を試みます! とにかく、説明は後でッ!!!」


「ッ……分かったわ!」



 そう言うと、ヘルは周囲に氷の玉を生成し、レーヴァテイン・改を構えながらヌアザを守る体制に入った。

 そしてヌアザは、今もなおルシファルナさんの方へと吸い寄せられているルシファーに向けて、その手をかざした。



「―――“融合解除”……ッ!」



 ヌアザの手からは青色の光が放たれ、ルシファーの体を包んでいく。



「無駄……だッ! 我の融合……は……ッ! もう……すぐ―――」


「私はまだ……諦めません……!」



 ルシファルナさんと一つになろうとしているルシファーと、それを阻止しようとしているヌアザ。


 一進一退の攻防が繰り広げられる中、ルシファーは言った。



「フフ……フハハッ! もう……すぐだ! もうすぐッ! 我の融合はッ! 完全に終わるッッッ!!!」


「クッ……マズイ……!」



 ルシファーの“融合”が、ヌアザの“融合解除”を上回り、少しずつルシファーの原形が見えなくなってきた。

 もう、限界なのだろうか。



「ヌアザッ! もうルシファーは……!」


「ですが―――くっ、分かりました。“融合解除”を諦めますッ……!」



 そう、惜しみながらもヌアザは後退していく。

 やはりもう限界だったのか。



「賢明な判断だッ! ―――さあ、ルシファルナよ……我と一つになろうぞッ!!!」



 ヌアザが引くやいなや、ルシファーは一気にルシファルナさんの中へと消えていく。刹那、辺りを覆う閃光。

 だけどやがて光は消え、そこにはルシファルナさんがただ一人浮いているだけとなった。



「……また……間に合わなかった―――」



 ヌアザがそう呟く。



(“また”……ってどういうことだ……?)



「ねぇ、彼……何か様子が変じゃない?」


「ああ、それは“融合”の―――」



 ヌアザがヘルの疑問に答えようとした、その瞬間だった。




「―――フッ」


「え……?」


(今の笑いは、ルシファルナさんが……?)



 確証はないが、ルシファルナさんの方から笑い声が聞こえてきたような気がする。

 しかし……そんな不安な思いは一瞬にして真実へと塗り変わっていった。



「フッ……フハハッ……! アーハッハッハッハッ! あぁ、可笑しいですねぇ……」


「急に、どうしたんですか……ルシファルナ様?」



 ルインさんが、突如高笑いをしたルシファルナさんにそう質問した。



「どうもしませんよ。これが、本当の・・・私なのですから」


「え……?」


「ああ、ようやく力が手に入った。―――【傲慢】の力が、私の中を満たしていくのが分かるぞ……!」


「ルシファルナ様……貴方は一体何を、言って……」


「ルシファー様の力を受け継いだことで、性格や能力が変化したのですよ。分からないのですか? ―――この低能クズがッ!!!!!」



 突然怒ったルシファルナさん……いや、ルシファルナ。


 もう、彼からは敵意しか感じられない。

 敵にはもうさん付けは不要だろう。



 ―――俺に、稽古をつけてくれていたときの、あの優しいオーラが、感じられないのだ。



「あぁ、もういいですよ。今の私には、先程までのルシファー様の考えが、思いが、全て頭に流れ込んで来ているのです」


「ルシファーの、思いが……」


「【傲慢】の大罪を、“堕天”の力を、神の……力を…………全てを受け継いだこの私は、もうルシファルナと名乗るのに相応しくはないでしょう」



 ルシファルナはそう言うと、両手を大きく広げ、そしてこう言ったのだ。



「―――私が新たなる“ルシファー”となるのですッ! 私こそが《七つの大罪》が一人、【傲慢】の大罪を司る堕天使であるッ!」



 ルシファルナ……改めルシファーがそう言うと、今度はまた新たな人物が現れた。




「―――そいつァ聞き捨てならねぇな!」


「―――勝手にボクたちの仲間を名乗らないでくれるかなッ!?」




「貴方たちは……フッ、フハハッ! まあ、そりゃあそうですよねぇ!? 同じ《七つの大罪》になった以上、貴方たちとは切っても切れない関係になりますもんねぇ……!? ―――そうでしょう? “サタン”、“アスモデウス”……ッ!」



 そう、その人たちとは。

 ルシファーと同じく《七つの大罪》であり、【憤怒】と【色欲】を司る二人の大悪魔。



 ―――サタンと、アスモデウスの帰還である。




「さて……と。どうしたもんかねェ?」


「そうだね……。殺すのは良くないだろうからね」


「だがまァ、数の力でどうにか出来るんじゃねェのか?」


「数の力?」


「だって、ほら……後ろ見てみろよ」



 そう言ってサタンさんはアスモデウスさんの後ろを指した。

 それに合わせて俺たちも指の指す先を追った。


 するとそこには……




「ぜぇ……はぁ……こっちは全部片付いたぜェ……?」


「はぁ……はぁ……こっちもなんとか!」



 「うぇーい」とハイタッチするサタールさん、クサナギさん。



「おっし、こっちも終わりだッ!」


「うん、おねえちゃんたち大活躍だったわね!」



 と、今度はマノンさんとアスモフィさんがガッツポーズを決めていた。

 さらにその後ろの方では、スレイドさんが一人、額の汗を拭ってた。どうやらそちらの方も片付いたようだ。


 確か、皆さんはルシファーが召喚した“魔人兵”だとか上級悪魔の掃討をしてたはず。

 結構な大軍だったけど、流石は《魔帝八皇》やその関係者だ。


 そして、それを見たアスモデウスさんが言った。



「数の力……なるほどね」


「あァ、そういう事だ」



 サタンさんは頷き、そしてそのままクルリと反対の、ルシファーの方を見た。



「どうする? 新たなルシファーさんよ。今から俺たち全員を相手するかい? それとも、【傲慢】たるお前さんが、臆病になって逃げるのかい?」


「クッ……」


「まあ、選択肢は二つに一つだと思うけどね、ボクは」



 確かに、気づけば堕天軍のメンバーは誰一人として居なかった。 メフィストフェレスも、フラウロスもサタールさんたちにやられたのだろう。


 そうなると残るのはルシファーただ一人のみ。

 ルシファーだけで、魔王軍のこの数のメンバーを相手にすることは不可能だろう。

 そうなれば、ルシファーが取る選択肢は―――



「―――いいでしょう。今は身を引きます。ですが、いつの日か……」



 ルシファーの周りに黒いコウモリが集まり始めた。



「いつの日か、貴方たちを全員殺します。―――ルシファー様の御心のままに……」



 そう言って、ルシファーは消えてしまった。

 しかし、最後に声が響いた。



「―――私はルシファー様の作戦を実行に移します。まずは《十二神将》を我が堕天軍に取り込みます。ですからどうぞお気をつけください。貴方たちの下にはいづれ、神が訪れるでしょうから……フフフ……フハハハ!」


「神……十二神将ねェ……ま、ひとまずはいいかァ」



 ルシファーの言葉は気になるが、確かに今はいいだろう。

 だって、ルシファーが撤退したということはつまり―――



「やっ……たぁ! ―――俺たちの……勝ち……だァッ!」



 その言葉は、俺の口から出ていた。

 つまり俺の体の所有権は、俺のもとに戻ってきたということになる。



「ああ、お疲れさん」


「サタンさん……! 俺……俺……!」


「どうどう、そんな泣きそうな顔すんなって。俺たちも来るのが遅れちまって申し訳無かったな」


「ちょっと調べたいことがあって、少し遅れちゃったんだよねー」



 調べたいことがあって、お二人は遅れたのか……。

 確かに、もう日が出てることから、兄貴を捜索するミッションが始まって、もう一日が経ったのか。



「いや、違うか……」



 まだ、一日しか経っていないのか。そう考えると、すごい濃密な一日だったんだな。



「それにしても、なんか足りなくねぇか?」



 今ここにいるメンバーを数えながら、サタールさんがそう言った。あぁ、そういえばあの二人がまだ戻っていないか。



「多分、ベルゼリオさんとレオンさんの事だと思います」


「そういやぁ、確かにアイツら居ねェな」


「まあ、戻ってこないという事は、兄貴たちに関する情報を掴んで、今もなおそれを追っているということなのでしょう」


「フーン……ま、そうだといいんだがなァ……」



 確かに、そうだといいなという俺の願望が混ざった予想だったかもしれない。

 実際は、かなり強い敵……そう、例えば《十二神将》のような敵に襲われていたりなんてしたら……。


 いや、それ以上考えるのはやめよう。 



「まあとにかく、だ。無事に戦いが終わったんだ。それでいいじゃねぇの」


「そうね……ま、これから後処理をしなきゃならないけど、そんなの些細な問題よね」


「ああ、アスモフィ! いまはひとまず、俺たちの勝利に祝杯をあげようぜ!」


「そ、その前に怪我した人たちの治療とか……やることやっちゃいましょうよ……」



 とまあ、こんな感じで堕天軍の襲撃は乗り切ることが出来た。

 アスモフィさんが言った通り、これからやることは一杯あるだろう。



 事後処理……そして倒れた堕天軍メンバーをどうするか。



 さらには本題である兄貴……魔王の捜索もしなければならない。

 と、いうかこっちがメインのはずなのに、今日一日だけでこんな事になるなんて思わなかった。 


 それでも、今は皆が無事だったことを祝おう。



 魔王アニキ捜索は、それからでも問題ないはずだ。



「大丈夫……っすよね?」



 そんな俺の呟きが、皆の会話の中に溶けていった。



 空には、俺たちの勝利を祝福するように、太陽が天高く昇っていた。

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