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case.28 堕天する堕天使






「ヌアザすら見えない暗闇……どうにかして晴らすことは出来ないかしら」


「ふむ……一つ手があります」


「あら。じゃあそれを試してみましょう?」



 ヘルとヌアザの二人は、互いの位置が分からないまま、声だけを頼りに会話をしていた。



「それでは、また後で会いましょう」


「また後で……って、ああ、そういう事ね。把握したわ」



 そう言うと、ヌアザは一つ頷いて、目を瞑った。



「フッ、無駄だ。この深淵は誰にも覗けないッ!」


「それはどうかしらね」


「何だと……?」



 と、そこで俺の目は開いた。

 視界が戻ってくる。


―――さて、頼んだわよタナトス。



「フォッフォッ……我に任せておけ」



 そうか……今の一瞬でヌアザはタナトスにバトンタッチしたのか。

 ということは、タナトスにはこの闇をどうにかできる手段があるという事だ。



「その通りである。闇に関わることであれば、我に任せておけ」


「ええ、頼んだわよタナトス!」



 タナトスはそう言いながら、グラムに黒い魔力を込めていく。


 これは、“死”の魔力だ。

 だが、それでどうするつもりなのか……?



「―――フッ……フハハッ! 無駄だ、何度も言うが、例えどのような手を使おうと、我の……我らの闇は消すことなど出来ないッ!」


「それはどうかな?」


「何……?」



 ルシファーは怪訝そうな顔をした。

 そしてそこでタナトスは、剣を一振りした。



「クク……意味の無い行動を…………なッ!?」



 それだけ。

 たったそれだけだが、ルシファーは驚愕した。


 何故なら。



「何故……闇が晴れていくのだ……!?」


「何故か……聞きたいか?」


「当たり前だッ!」


「いいだろう、教えてやる」



 タナトスは余裕そうな表情でそう言った。

 さらに言葉を続ける。



「お前の闇を、我が“殺した”。“死”の魔力でな」


「“殺した”……だと!? いや、有り得ない……そんな事有り得るはずが無いのだ……!」


「ならもう一度試してみるかね?」


「クッ……いいだろう……やってやるさ……! ―――『明 宵 の 明 星ライトオブダークネス』ッ!!!」



 タナトスの挑発に乗ったルシファーは、負けじと同じ技を使って辺りを再び暗闇で包む。

 だが、タナトスはグラムに“死”の魔力を込めて、再び一振りした。


 すると、闇は切り裂かれたように晴れていき、ルシファーはまた驚愕した。



「そんな……馬鹿なッ!」


「馬鹿なのはお前だろう? さあて、次は我らの番だッ! ヘルよ!」


「了解よッ!」



 タナトスの掛け声と共に、ヘルは動き出した。



「あの闇が無ければこっちのもんよ!」


「クソッ! 我に近づくな……ッ! ―――来たれ、我が駒よ!」



 ルシファーは、近づいてくるヘルから逃げながら、たくさんの上級悪魔を召喚していった。



「そんな雑魚何体出したところで、私たちには敵わないわよッ!?」



 ヘルはその召喚されていく上級悪魔に臆することなく、レーヴァテイン・改で次々と悪魔たちを薙ぎ払っていった。

 さらにタナトスも、グラムに死の魔力を込めて悪魔たちを蹂躙していく。



「クソ……有り得ない……何故だ……何故―――」


「―――“氷槍アイスランス”ッ!!」



 嘆くルシファーの下へ、ヘルが放った氷の槍が飛んでくる。



「小癪なッ!」



 しかしルシファーはそれを軽く一払いしていなした。



―――タナトス。少し、私に時間を下さい。



「また、我はすぐ交代か? ……まあいいが……」



 そう言うと、また俺の視界は消え、再び戻ると、俺の身体はタナトスではなくヌアザの物になっていた。



「ヘル、さっきぶりですね」


「あ、ヌアザ?」


「はい。私です」



 しかしまた、一体どうしたのだろう。

 急に交代だなんて。



「それは……彼の口から直接聞きましょう? ―――憐れなルシファーよ」



 そう、静かにルシファーを見据えて言ったヌアザ。

 何だ……まるで話が見えないぞ。



「憐れ……だと? 一体何の話をしているのだ」


「……気づいているんでしょう? 貴方、“融合”したのにバラキエルの力を使えないでしょう」


「……ッ。何故……それを」


「簡単な事ですよ。もしバラキエルの力が使えるなら、もうとっくに使っているでしょうからね」



 ああ、なるほど。そういうことか。

 そういえば確かに見てないな、バラキエルの力。



「わ……我は……バラキエルを……力を……」


「もう、やめましょう……? このままいけば、貴方は暴走して、もう取り返しのつかないことになってしまう。だから、そうなる前に―――」



 しかし、そうヌアザが諭した瞬間。

 ヌアザの言葉を遮って、ルシファーは声を荒げた。



「―――黙れッ!! 我は……我はもう引き返せないのだよッ! だから……だから我は、消えたバラキエルの分も……あの魔王に自ら制裁を加えるまでは死ねないッ! まずは貴様らからだ……その身朽ち果てるまで、蹂躙し尽くしてやる……ッ!」



 そう叫びながら、ルシファーのオーラは高まっていく。

 異常なまでのオーラが目視できる。



「それ以上はいけません……ッ!」


「煩い……黙れッ!」



 ヌアザが静止するも、ルシファーはそれを聞く耳持たない。

 そこでヘルが動いた。



「さっきみたいなヘマはしないわ。今度こそ止めてみせるッ!」


「あっ……待ちなさいヘルッ!」



 再びヌアザが静止するが、ヘルも聞く耳を持たない。

 ヘルは、暴走寸前のルシファーに突っ込んで行く。



「永遠に凍てつきなさいッ!! “永久凍結エターナルフリーズ”ッ!!!」


「効かぬ……我には効かぬぞッ!」



 言葉だけ聞いたらなんか強そうな技をヘルが放つが、ルシファーはオーラだけでそれを弾き飛ばした。



「我の……最後の手だ」


「何をするつもりか知らないけど……アンタを放置しておく訳にはいかなそうねッ!」



 ルシファーが俯きながらそう言うと、ヘルはさらに突っ込んで行った。

 しかし……




「―――『強制堕天フォールンフォース』」



 ヘルが攻撃を仕掛けるよりも早く、ルシファーが動いた。



「まさか……ッ!」


「ちょっと、アレは何ッ!?」


「ヘル、下がりなさいッ! アレは……もう!」



 ヌアザがそう言うと、ヘルは後退して来る。


 そうこうしている間も、ルシファーはオーラを高めていく。

 そして同時に、自らの身体を……





 ―――黒く、黒く、黒く染めていく。





「ォ……ォ……ォ……ォ!」



 スキル『強制堕天フォールンフォース』の効果を、自らに掛けることで、ルシファーはさらに深くに堕天していく。

 もともと黒かった全身が、さらに黒く……その中には青色の光まで覗き始めていた。



「ウォォォォォォォォォオッ!」



 そして、ルシファーの雄叫びが聞こえた直後、その身に宿っていたオーラが一気に衝撃波となって押し寄せた。



「クッ……!」



 オーラが解き放たれ、スキルの効果も適応されたルシファーは、先程までの天使の姿ではなく、黒い、化け物になっていた。



「フフフ……ハハハハハッ! これが……我の堕天の力ッ! 素晴らしい……素晴らしき力だッ! なあ、バラキエルよ……共に破壊しよう、この汚くて醜い世界をッ!」


「もう……彼は……」



 狂ったように手を広げながらそう叫ぶルシファーを見ながら、ヌアザは一言そう呟き、そして―――




「―――災厄級の魔物の誕生を確認。これより、我ら神々と勇者が、対象を討伐、後に捕獲します」



―――さあ、いよいよこの戦いも佳境だな。



―――いいや、きっとまだだろうさ。



 ……ん?

 まだ……ってどういう……。



―――ヤツは……堕天使ルシファーなどではない。



 ……は?



―――真なる【傲慢ルシファー】は、別に居る。それが、恐らく……




「ヘル。力を貸してください」


「もちろんよ、まだまだ暴れたりないものね」


「ええ……そうですね。さあ、プロメテウス。また貴方に任せますよ。戦闘に関しては、貴方の方が向いてるでしょうからね」



―――いいのかァッ!? ヒャッハァッ! まだまだ楽しめそうじゃァねェの!




「我らが目的の為に、死んでもらうぞ……愚かな反逆者どもッ!」



 その言葉を聞いて、ヌアザは目を瞑った。

 そしてすぐ目を開けると、俺はプロメテウスになっていた。



「―――そいつァ、こっちのセリフだ。テメェには死んでもらうぞッ! 骨の髄まで燃やし尽くしてやらァ!」


「かかってくるがいい。―――我が全て堕としてやろうッ!」




 そうして、ルシファーとの戦いが佳境に差し掛かる中、俺は一つ考え事をしていた。



 ルシファーが……ルシファーじゃない……。



 それだけが、俺の頭の中を支配していた。

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