case.21 魔剣現界―Evil Create―
―――そんなこんなで今に至るわけだが……
「改めてさっきぶりだな、二人とも」
俺は、目の前に居るラグマリアとレヴィーナさんを見ながら手を振った。
すると、ラグマリアは俺を見るなり、うさぎのようにダッシュして俺の胸の中へと収まる。
「びゃく……やぁ…………よかった……よかったよぉぉぉぉぉ!」
「そんなに泣かないでくれよ……俺たちまだそんな深い関係じゃ無いだろう……?」
そうは言いながらも内心ではすっげぇ喜んでる俺。
顔が焼けるように熱い。
「えっ……そ、そうよね……まだ私たちそんな深い関係じゃないのよね……すっかり勘違いしてたわ……」
そう呟いてラグマリアはシュンと落ち込んでしまう。
そんな姿に、俺の胸にはズキリという痛みが生じた。
「ああ、いや……そんな深く考えなくても―――」
なんて、慰めの言葉を言いかけた時。
「―――もう、訳が分からない……貴様らは、一体何なのだ……!」
そう、エレボスが叫んだ。
そんなエレボスの言葉に、俺は答える。
「俺は……勇者だ。勇者、皇白夜。それ以上でも、それ以下でもない!」
「勇者……やはりこの世界にとって規格外の存在という訳か…………。なればこそ―――」
エレボスは下を向き、黒い大剣を再び構えた。
そして、言った。
「―――ここで排除しておかねばならないか」
さらに、その言葉にアルカナも同調した。
「―――そうね。伝説の死神の、真の力ってのを見せてあげるわ……!」
まだ、コイツらは本気を出していなかったのか。
なんて俺は思ったが、正直早く戦いたくてしょうがなかった。
なんていうか、さっきから戦闘欲というか、闘争心というか…………とにかく気持ちが高ぶって……荒ぶっていた。
―――それはきっと、私のせいでしょうね。
(ん……?それはどういう?)
―――私、何千年もあの世界に封印されていた訳だからね。戦いたくてしょうがなかったのよ。まあつまり、その欲が貴方に渡っちゃったって訳ね。
(ああ、なるほどな)
「……それなら、早く発散しないとな」
そこで俺は、もう一度右手に握られた魔剣グラムを見た。
それは、やっぱり俺の言葉に応えるように、赤く光った。
まるで意志があるかのように。
さらに、そんな事を考えていると、今度は左手の平が光り始めた。
「ん……? なんだ……これ」
赤い、光……。
俺は、右手と左手を繰り返し見て、とあるひとつの可能性に辿り着いた。
「まさか……スキルか……?」
確か……一つだけあったはずだ。
そう、『魔剣現界』……これだ。
(まさか、このスキルを使えって事なのか……?)
「物は試し……か」
このスキルが文字通りの意味なのであれば、きっと現れるはずだ。
この右手のグラムのように、魔剣が。
「―――来い。新たな魔剣よッ! スキル発動、『魔剣現界』ッ!!!」
そう叫ぶと、俺の左手には赤い光が集まって、やがてそれは剣のような形を形成していった。
「何を……しているの?」
ラグマリアが不思議そうに俺の手を見ながらそう言った。
「俺の予想が正しければ、きっとこの手には……」
―――魔剣が生まれるはず、ね。
「さあ……来いッ!」
そう叫ぶと、光は一気に輝きを増していく。
そして、一瞬だけ辺りを包むと、すぐに消えてしまった。
直後、俺の左手には、さっきまでは無かった、“何かの重み”が確かにあった。
これは……!
「魔剣……!」
―――ああ、この魔剣は覚えがあるぞ。我が愛用していた魔剣だな……。
(ヘルの?)
―――ああ。魔剣レーヴァテインという。
(それなら、聞いたことあるな……。確か、炎を司る魔剣なんだっけか?)
―――いや、実際には違うのだ。確かに、レーヴァテインは炎を司る魔剣に間違いはない。だが、私がちょっとだけ改造したのだよ。
「改造!?」
おっと、いけない。声に出してしまった。
―――そう。私はこれでも氷の神だからな。炎など性に合わんのだよ。だから、ちょーっとだけイジった。
(いや、イジったって……)
―――まあだから、この魔剣はレーヴァテインであってレーヴァテインでないのだ。名付けなるなら、そうさな……レーヴァテイン・改とかか?
「レーヴァテイン・改……」
俺は、左手にあった青色に輝く魔剣を眺めながら、そう呟いた。
―――強さは保証するぞ。氷の神たる私の力がふんだんに利用されているのだからな! スキル『絶対零度』と組み合わせれば、もうお前は最強だ!!
(絶対零度? ってそういや、まだ効果の把握はしてなかったな……。できれば教えてくれると助かるんだが……)
―――『絶対零度』のこと? いいわよ。『絶対零度』は、まあ簡単に言うと“氷に関わる全ての事象”を自由自在に操れる能力のことね。
(氷に関わる、全ての事象……?)
―――そう。氷が1ミリでも関わっていれば、何でも出来るわ。攻撃でも、防御でも、補助でも、妨害でも。
(それって、さては強いな?)
―――ええ。なんてったって、このスキルを持っているイコール氷の神という認識になるくらいのスキルなのだから。
それじゃあ……今の俺は、マジでお前の……ヘルの影武者というか、後継者というか……そんな感じなんだな……?
―――ああいや……そういう訳じゃ―――
と、そこまでヘルが言いかけた時。
「―――いつまで待たせるつもりだ。もう、殺してもいいのか?」
「―――いいんじゃない? 殺しましょ。なんにせよこの男は危険よ。早く殺さなくちゃ」
なんて言葉が聞こえてきた。
そこで俺は一度ヘルとの会話を終了し、日本の魔剣を握りしめて、エレボスたちと対峙する。
「フッ、待たせて悪いな」
さて……試したいのはスキルとこの剣の力の二つ。
コイツら相手にはちょうどいいな。
「白夜……? 大丈夫なの?」
「ああ。大丈夫だ、任せておけ……な?」
「分かった……信じてるわよ?」
ラグマリアが、瞳に涙を浮かべながら、上目遣いでそう言ってきた。
その顔を見て、俺の心は一瞬で決まる。
「よし、行ってくる」
「うん……」
ああ、やっぱり俺はラグマリアの事が―――
「そろそろ、この長い戦いにも方をつけようか」
「ああ。こちらはもとよりそのつもりだ」
俺は一歩ずつ歩きながら、戦いに備えてなのか、変化していく自分の身体に意識を向けていた。
視界は、透き通るくらい良好だ。
力もみなぎってきている。
両手の魔剣たちも光り輝いて、準備万端といった様子だ。
そして、俺の身体にはまとわりつくように冷気が宿っていた。
「これが、氷の神の力ってわけか―――」
言いながら、俺の頭の中には、流れ込むように力の使い方が思い浮かぶ。
だから俺は、それに従うがまま、言葉を紡いだ。
「―――『神威』」
刹那。
俺の身体には神気と思われる金色のオーラが現れた。
それを見たアルカナは、驚く。
「なん……で? 貴方……まさか……双神の―――」
アルカナが言葉を言い切る前に、エレボスが動き出した。
「フハハッ! 面白いじゃないか!!!」
「ちょっと待って……彼はマジでヤバいって―――」
まずはエレボスから、って事だな?
よし、じゃあ早速……
そう思って俺は、首をコキコキと鳴らし、手をポキポキと鳴らした。
軽いウォーミングアップみたいなものだ。
▶スキル『神速』『神力』『再生』『吸血』『飛翔』『気配感知』の常時発動を実行。
……?
なんだ?これ……。
「よそ見をするとは……傲慢だなッ!」
「うわっ……!」
俺が今気づいたこのログみたいなやつに気を取られている時に、エレボスは襲いかかってきた。
そこで俺は咄嗟に右手のグラムで受け流しだが……
「―――は?」
これは、エレボスの声だ。
俺ではない。
何が起きたか。
結論から言おう。
エレボスの大剣が、ポッキリと折れていたのだ。
「貴様……今、何をした……?」
「い、いや……俺にも分からない……」
どうやら、俺が思っていたより、今の俺はチートな存在みたいだ。




