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case.19 再会も突然に





「本当に、生き返るの……?」



 私は、確かめるようにそう問う。

 すると月夜は無言で頷き、そして言葉を続けた。



「―――全て、視えたのです。確かに、にぃは死にました。でも、あの魔剣の力で、蘇るのです……私が見えたのは、そんな景色でした」



 魔剣の……力?

 ああ、あれか。


 白夜が手に握ったままの、あの赤い剣。

 あれが、魔剣なのか。

 確かに、淡い赤い光を放ってはいるが、とても人を蘇らせてくれるとは思えない。



「―――魔剣が光り、紅の閃光が辺りを包んだ時、にぃは、赤い目をして、悪魔のような羽根を生やしてそこに立っていました。そして氷の力を操りながらエレボスとアルカナを蹂躙していました」


「え……?」



 月夜は、今かなり衝撃的な事を言った……と思う。


 赤い目に悪魔のような羽根。そして氷の力……?

 それは、もしかすると……



「―――魔剣の力、ですね」


「おねぇ……ちゃん?」



 と、そこに姉のラージエリが現れた。



「魔剣の力って、どういうこと?」


「あの魔剣は、昔見たことがあります。確か、名を……“魔剣グラム”と言った筈です」


「グラム……そ、それってまさか……」


「はい。吸血鬼神ヴァン・プル・カイザーが神話の時代に扱っていたという、古の魔剣です。これは、“強大な憤怒”と“絶対零度たる氷”の力を操る“吸血魔剣”と呼ばれている魔剣で、“神話十二魔剣”の内の一本なのですが、確か現在は所在不明だった気がします」



 姉が、また癖の博識アピールをしてきたが、確かにこれは私も聞いたことがあるかもしれない。



「へぇ……強大な憤怒に絶対零度たる氷、それに鬼神、ねぇ……」



 とさらにそこへ、妖精族エルフの女が現れた。



「あ、レヴィーナと言うわ。よろしくね」


「ええ、こちらこそよろしく」



 私たちは互いに微笑みながら握手を交わした。


 それにしてもこの女、突然どうしたのかしら。

 意味の分からない呟きだったけれど……



「何か気になる事でも? あ、私はラージエリと申します。どうぞよろしくお願いします」


「あら、ご丁寧にどうも。私はレヴィーナよ、よろしくね」



 と、今度はお姉ちゃんとも握手を交わすレヴィーナ。

 レヴィーナは手を離すと、お姉ちゃんの質問に答え始めた。



「えっと、貴女が言った話が、さっきまでの彼とそっくりだったから」


「そっくり……?」


「ええ。貴女たちが殺されて、異常なまでに怒って、そしてその想いに答えるかのように剣が赤く光って、そしてあの魔剣が生まれて。さらには彼、いつの間にか鬼のような姿になっていたのよ」



 怒り……魔剣……鬼。

 確かに、吸血鬼神ヴァン・プル・カイザーの特徴と似てはいる。



「なるほど。確かにそれは気になりますね」


「でも、今はそんなことより、彼を守ることが優先じゃないの?」


「それもそうね。彼が蘇るのであれば、奴らから彼の身体と、あの魔剣を守り抜くことが、この戦いの勝機と言えるでしょう」



 そうだ。

 悔しいけど、私たちじゃ奴らには敵わない。


 だったら、彼に……白夜に託すしかない……!

 その為の努力だったら、なんだってやってみせる……!



「あとは、皆さんに託します……私は、少し休みま―――」



 ―――ドサッ。



 月夜が突然倒れてしまった。

 私はそれを抱き起こしながら、回復魔法をかける。



「未来予知は、かなり体力を使うと聞いたことがあります……。多分、慣れない力を使ったせいで、疲れたのでしょうね……」


「そうね。お姉ちゃん、この子を守ってあげて。私はアイツらと戦って時間を稼ぐから」


「で、でも……」


「大丈夫よ。私の方が復活が早かったから、その分魔力とかも回復してる訳だし」


「……分かったわ。だけど、無茶するんじゃないわよ。次死んだら……今度こそ、あの子が……勇者が勇者で無くなるわ」


「……分かってるわよ。任せなさい」



 私は光の剣を生み出しながら、後ろへ振り返った。



「この天才の私も協力するわ! さっきまでの戦いで全然活躍出来なかったから……!」


「……レヴィーナ。助かるわ、ありがとう」


「いいのよ。さぁ、始めましょう?」


「ええ……行くわよ」



 レヴィーナは弓矢を引き抜いた。

 戦闘準備は完璧。


 あとは、彼が起きるまで時間を稼ぐだけ。

 別に勝つ必要は無い。



 なら余裕じゃないか……!

 自分に自信を持て!



 ―――【忍耐】の力を継承した私なら、絶対にやれる!




「準備が、出来たみたいだな」


「死ぬ覚悟が出来たようね」



 エレボスとアルカナが、こちらの様子を見てそう言った。



「ええ、準備出来たわよ」


「ならば、始めようか。―――消化試合、勝負の見えている戦いを」







「“矢弾アローバレット”ッ!!!」


「無駄だッ!」



 レヴィーナの放った矢の弾丸はエレボスが大剣で弾き飛ばした。

 そして、



「“獄死剣ヘルブレード”ッ!!!」



 その手に持つ大剣で、レヴィーナに襲いかかる。



「レヴィーナッ! ―――“障壁”展開ッ!」



 それを見て、咄嗟に私はレヴィーナの前に物理障壁を何重にも張った。

 そしてそこへエレボスの大剣が当たる。



「チッ……硬い……ッ!」



 エレボスは障壁の硬さに驚き、一度後退した。

 そこで、今度は私が動いた。



「復活直後で、あんまり力が出ないから……ここいらで籠城戦と行かせてもらうわ……!」


「ほう……我らがそんなことさせると思ったかッ! アルカナッ!」



 私が魔法を使う態勢に入った瞬間、エレボスはそうアルカナを呼んだ。



「―――任せなさい。“刈取スティール”!」



 アルカナは私の背後から突然現れた。


 だが、私はそれに驚かなかった。

 何故なら、アルカナが消えていた時点で、背後や側面からの奇襲に備えて罠を仕掛けていたからだ。



「―――罠発動、よ」


「えっ……? ひゃ……ひいやぁぁぁぁぁぁ!」



 アルカナは、一瞬にして空へ宙吊りにされてしまう。


 私が仕掛けた罠は、超絶初級魔法“捕獲罠トラップ”。

 対象をランダムな方法で捕獲し、無力化する魔法だ。


 これが一番魔力効率がよくて、使える魔法だったから、念の為仕掛けておいたのだが、まさかこんな初級魔法に引っかかるとは思わなかった。



「レヴィーナッ!」


「任せて! “矢弾アローバレット”ッ!!!」



 そしてその宙吊り状態のアルカナに、レヴィーナが攻撃を仕掛ける。

 しかし、そこへエレボスが現れた。



「おいッ! 早く脱出しろそんな初級魔法程度ッ!」


「分かってるけど……なんか変な絡み方してて……」



 エレボスはレヴィーナの矢弾を大剣で防ぎながら、背後のアルカナに向けてそう言うが、そのアルカナは、足を魔力で出来たロープでがんじがらめにされていてなかなか思うように抜け出せないでいた。



「さぁ、行くわよ……レヴィーナ、来なさいッ!」


「分かったわッ!!」



 レヴィーナが私の言葉に従って、私の後ろへやって来た。

 よし、これで準備は完了だ。


 さあ、ここからは籠城戦といこう……!



「―――“忍耐せし癒やしの花園アブソリュート・ヒールガーデン”!」



 刹那、私とレヴィーナの周りに何重にも張り巡らされた守護障壁が、展開され、そして足元には無限に花が咲き誇った。


 これが私の必殺技……!

 【忍耐】の天使たる私の、切り札!


 これを突破出来たのは、今まで誰一人として居ない!



「さあ、エレボス、アルカナ。かかってきなさいよ、この領域は、誰にも踏むことができないからッ!」


「フッ……フハハ……面白い……面白いな! 良いだろう。物は試しだ、アルカナ。全力でやるぞ」


「いいわよ。でも、見た感じこの障壁……」



 そう言いながらアルカナは障壁をコンコンと叩いた。



 フフ、何をしようが無駄なこと。

 絶対にこの障壁は破壊できない。

 なにせ、私の【忍耐】の力が沢山盛り込まれてるのだから!



「―――フンッ!」


「―――ハァァッ!」



 二人は、手に持つ武器を振り下ろして障壁を破壊しようとした。


 そんなの無駄だ。

 技や魔法を使うならまだしも、ただの攻撃でこの障壁が破られる訳が―――




 ―――ピキッ……ピキピキッ……。




「無い……のに」


「ちょ、ちょっとラグマリアッ!? 壊れそうだけどッ!」



 嘘、でしょ?

 まだ、力が完全に回復してなかったから……?

 それとも詠唱をしなかったから……?



「フハハ、やはりな。脆いと思ったのだよ!」


「紙のように軽いわ……!」



 ―――ピキピキ……バリーン……。

 そう、音を立てながら障壁は壊れていった。



「う……そよ」



 必殺技が、こんな簡単に破られるとは……!

 有り得ない……。



「そろそろチェックメイトといこうか」


「そうね。貴女たちを守るものが無くなった以上、もうこれ以上不毛な争いはお互いの為に避けるべきよ」



 クッ……また、負けるの……?



「ラグマリア……」


「どうする……もう、これ以上手は……」



 まだ、諦めたくない。

 そう思っても何か作戦を考えるが、何をしても奴らのパワーやスピードには勝てない。


 どうすれば……どうすれば……!



「諦めよ。そして散れ―――」


「死んだあとの魂は、私が美味しくいただくわ」



 クッ……もう、ここまでなの?

 このまま、また殺されなきゃいけないの……?



「さぁ、フィナーレだ―――」



 そう言って、エレボスがその大剣を私たちに向かって振り下ろした、その時だった。





「―――フィナーレになるのはどっちかな」





 そんな言葉が聞こえてきた直後、辺りは真紅の閃光に包まれた。

 視界が一瞬消え、そしてすぐ戻ってくる。



「その声は……」



 私は確かめる為に、後ろへ振り返った。



 するとそこに居たのは。




「白夜……っ!」



「あぁ、さっきぶりだな、ラグマリア。そんでエレボス、アルカナ。ここからは、俺のターンだ―――お前たちには大人しく捕まってもらうぞ」



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