case.17 【覚醒final】誰かを『守る』為の力
―――温かい。
まるで、誰かに抱きしめられているような、そんな感覚だ。
『ずっと、一緒よ。貴方と私は、これから一つになるの―――』
あぁ、そうか。
この温もりは、キミの……
『いい? 貴方は“勇者”。この世界を守る、唯一無二の存在』
俺は、勇者……。
『だから、この世界を守ってっ! 勇者としての使命を果たしてっ!』
分かった……分かったよ!
それが、キミの望むことなら……俺はなんだってやってみせる……!
この、湧き上がる力は……誰かを守るための力……!
そうだ……兄貴が言ってた!
勇者は誰を守って、誰と戦うのか選べるって……!
それなら、俺は……勇者はどんな状況でも、誰かを……何かを守らなくちゃいけないんだ!
じゃないと、願いを託されたラグマリアにも、俺を育ててくれた兄貴や師匠たちにも、顔向けが出来ねぇからな……!
▶種族強制進化―――開始
捕獲対象は、冥王エレボスと死神アルカナ。
エレボスには再生能力と、馬鹿が付くほどの怪力が。
アルカナには気配隠蔽や、超が付くほどのスピードが。
▶スキル『神速』が、“神域”へ到達していることを確認。現在取得可能なスキルの強制獲得を並列実行致します―――
それなら、俺はそれを超えるだけの力を使えばいい。
幸いにも、今の俺は“鬼神”。
力の権化たる鬼の神、怒りの化身なんだから、パワーで負けることは許されない。
そして、スピード。
これは、スキル『神速』でカバー出来るはずだ。
魔力もまだ残っている。
武器は……もう、刃こぼれが酷いな。
でも、何故だが赤く……不気味に光っているのは何なのだろう……。
▶魔剣の誕生を予知―――スキル『魔剣現界』の強制獲得も並列実行します
む……まあいいか。
こんな剣でも、出来ることはあるだろう。
まずは、エレボスとアルカナを無力化する。
そしてもう二度と、逆らえないように城の牢屋にブチ込んでやる。
「ラグマリア……俺は、やるよ。アイツらを捕まえて、キミの無念を晴らしてみせる」
俺は剣を強く強く握りしめた。
そしてその剣先を、エレボスとアルカナに向けて言い放つ。
「テメェらだけは絶対に許さない。だが、殺しはしない。俺は―――勇者だから」
「フン、つまらん。折角本気が見れると思っていたのに、今では先程の影すら無い。やはり人間はつまらん種族だ。これが神であれば、もう少し楽しめたのだろうがな」
▶種族進化完了―――種族が“半神”へと進化しました。
(ん……? な……んだ、これ。何か、手から金色のオーラが……?)
「……ッ!? と、突然……雰囲気が変わった……だと!?」
「あ……のオーラは……神の……オーラッ!?」
え。
神の、オーラ?????
「ッフ……フハハ、き、貴様はどこまで我を驚かせてくれんだ。勇者とは、ここまで規格外の存在だというのか……ッ!」
「ちょ……ちょっと、ふざけてる場合じゃないわよ……エレボス! このままじゃ、アイツに殺されて―――」
「いいじゃないかッ! ああ、勇者よ。お前は人を愉しませる才能があるようだなッ!」
「エレボスッ!!!」
楽しそうに笑うエレボスに、ついにアルカナがブチギレた。
「いい加減にしなさいよッ!」
「お前こそいい加減にしろアルカナッ!」
―――喧嘩を始めてしまった……。
「ああもういいわッ! 私はこの戦いから降りるからッ!」
―――ァ? 今、なんて言った?
この戦いから降りる? まさか、これだけの事をして逃げるというのか?
(ふざけるなよッ!)
「―――この“死神”がッ!!!」
俺は気づいたら身体が動いていた。
そしてアルカナを思いっきり蹴り飛ばしていた。
「―――ぁぐァッ……!」
「チッ……スピードだけじゃない……パワーまで上がっているというのか……ッ!?」
▶スキル『神力』、及びスキル『神威』の強制獲得。続けて、両スキルの常時発動を実行します
すげぇ……何だこれ!
体の奥から、力が湧いてくるようだ……!
心なしか、体も軽いし……!
「だ……だがまだだ……! それだけじゃ我には届かないッ! 純粋なパワーであれば、我の方が上だッ!」
「ヘェ? なら試してみるか?」
「ああ! 来るがいいッ! そして思い知れッ! 冥府の王たる我の力をゴォォォッ!!」
俺はそれを聞き終わる前に、エレボスを蹴り飛ばしていた。
(おおおお、すっげぇ勢いよく吹っ飛ぶなぁ!)
「さて、あとは……」
「―――私もまだ居るわよッ!! さっきはよくもッ!!!」
「―――お前だけだ、メスブタ」
俺はボロボロの剣を、後ろに振り返ると同時に凪いだ。
「それはさっきも受けたわ―――」
「なら、これはどうだ?」
俺の振るった剣は、アルカナの持つ“何か”に当たって綺麗に折れてしまった。
しかし、そんなのは計算済みだ。
だから、魔法を使った。
「グッ……! な、何……!?」
「さしずめ即席ファンネルってとこかな」
今俺がしたのは、折れた剣がアルカナの上空に達した時点で、魔法“磁力”を利用して、俺の持つ折れた剣の先と、折れて飛んでいった剣先の間に磁力を発生させた。
そしてその剣先が、磁力によって飛んでいく方向を変え、背後からアルカナを突き刺したのだ。
「しかし……剣が折れてしまった以上は、もう貴方は魔法で戦うしかないんじゃない?」
うっ……た、確かにそうなんだよな……。
折れたこの剣でも、戦えないことはない。
だが、流石に限度というものがある。
まあ、殴り蹴りで戦えるとは思うが、流石にそれだとカッコがつかない……と思う。
何か……いい方法はないか……?
「ねぇエレボスッ! 早く起きなさいよ……ッ! 今がチャンスよ!」
「ククク……分かっている!」
エレボスは大剣を、アルカナは闇みたいなので形成された鎌を構えてこちらへやってくる。
「クソ……この剣で戦うしかないか……!?」
俺が、そう覚悟を決めた時だった。
▶スキル『魔剣現界』を獲得。並びに強制発動。対象は鉄剣。対象を魔剣へと進化させます―――
俺の持つ剣が再び赤く輝き出した。
そして、その輝きは俺の手元で伸びてくる。
やがて赤い光が全てを包み、それが晴れた時、俺の手に持つ剣が、普通じゃないことに気がついた。
▶―――魔剣“グラム”の生誕を確認。進化成功です
何だ……これ。
全身真っ赤な刀身に、黒い装飾。
不気味に光り輝くこの真紅と、カラスの羽根を連想させるこの飾り……
―――かっけぇ……!
「う、嘘でしょ……!?」
「け、剣が……ッ!」
ふ……フハハ!
これで戦う準備は全て整った!
力に速さ、魔力に武器!
何だかよく分からないことが多いが、今なら奴らを無力化するのも余裕な気がするぞ……ッ!!!
「さあ行くぞ……テメェらはここで終わりだッ!!」
俺はそう言いながら、『神速』で距離を詰めた。
そしてそのまま、まずはエレボスへと仕掛ける。
「テメェは再生出来るんだったな……ならッ!」
「フ……そ、そうだ、我は再生能力を持つ! だから……我には普通の攻撃は通用しな―――」
「―――“無限剣”」
だったら、再生を上回る速さで攻撃すればいい。
斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って―――斬りまくるッ!
「ウグ……オォォォォォォォォッ!」
「ちょ……エレボスッ! アンタ……待ちなさ―――」
「テメェは黙ってろメスブタッ!」
俺は右手で剣を振るい続けながら、左手の平を後ろに向けて、炎を放った。
「“鬼神炎渦”ッ!!!」
「キャァァァァァッ!」
さぁ……そろそろフィナーレと行こうか……ッ!
「―――朽ち果てろッ! “鬼神連斬”ッ!!!!」
目にも止まらぬ神速で、俺は剣を振るい続けた。
再生されないように、ただそれだけを考えて。
「ちょ……もう……限か―――」
そんなエレボスの言葉にも気づかず、俺はただ夢中で剣を振っていた、そんな時だった―――
「ちょっと白夜!! もうやめなさい! ソイツは既に戦意を失っているわ!!」
(そ……その声は……まさかッ!)
俺は手を止め、後ろにすぐ振り返った。
聞き覚えのある声。
そう、そこに居たのは―――
「な……んでキミが……ここにッ!?」
一人の、天使。
「―――ラグマリアッ!」




