case.13 リスタート
淡々と人を殺す様はまるで、魔王だった―――
『魔王に“死”は訪れない。未来永劫な。』
■ □ ■
―――目を開けると、そこは森だった。
……一体どれだけ眠っていたのだろう。
その答えは分からないけど、ちゃんと記憶は残ってる。
さっきまでの俺の身に起きた事はよく覚えている。
(これが、スキル『転生』の力……なのか)
ひとまず、俺は辺りを確認する。
まず、周りは木、木、木。
さっきも言ったが、俺はどうやら森にいるようだった。
森、という事はルインと一緒に洞窟を出た後の話になるのか。
(……ん? それじゃあルインは何処に居るんだ?)
どうやら近くには居ないようだ。
……と思ったのだが、ふと足元を見ると―――
「う……うーん……?」
「うおっ!」
そこには、地面でぐっすり眠るルインの姿があった。
「―――ルイン!?」
「うにゅ……あるじはまぁ……?」
寝ぼけながら起き上がったルインは、寝ぼけた声で喋った。
俺はそんなルインを見ながら、ホッと一安心しつつも、少しだけ不安な気持ちになった。
「……う……ん? ―――ハッ、主様!」
「えっと……大丈夫か?」
手を差し伸べ、ルインを立ち上がらせる。
「えっと……ありがとうございます」
「いや、気にしないでくれ。……って、それよりもルイン。俺たちが今何をしているところか、分かるか?」
「はい……? えっと……あっ、そうです! 私たちは今あの洞窟を出て少し歩いたところで、目的は情報収集だったかと!」
「そうか。……ありがとう」
(洞窟を出た直後……と、いうことは)
―――木陰からあの獣人が出てくるあたりか。
(記憶を引き継いでる、ってのは強いよな……。こういうのには何か代償が付きものな気がするが……)
「主様? どうなされたのですか?」
「ああ、いや。何でもない。そろそろ行くとするか」
この先起こることは知っているから、全て先読みして行動しないと。
そして俺たちは歩き出す。
「それにしても、さっきの主様のお言葉、とってもかっこよかったです!」
「さっきの、俺の言葉……?」
「はい! あの、俺は魔王になる! ってやつです!」
「あ、あー、そこか……」
ほんとに洞窟出てすぐの辺りだったんだな。
「?」
ルインが何やら不思議そうな顔して、覗き込んでいるので、軽く誤魔化した。
「ああ、何でもないぞ。安心しておけ、俺が救ってやるからな」
「はい!」
と、そこで見覚えのある地点にやって来た。
(確か……ここら辺だったな)
なんて考えていると、狙ったかのように事件は起こった。
「―――ま、魔族だ! 魔族が出たぞぉぉ! クソ、クソが! 死ね! 死ね! 魔族なんて死んじまえ!」
(フッ……予想通りだな)
ここで何本も矢が飛んできて、ルインがそれを喰らってしまう……んだったよな。
あの時の俺は咄嗟に動くことは出来なかったが、今の俺はもう違う。
「―――『守護』」
静かに、俺はスキルを発動した。
発動したスキルは、ルインを守護防壁で包む。
「ひゃっ!? え、ええ!?」
「―――チッ、気づかれてたか……! クソがァァ!」
突然襲われたことに驚くルインと、防がれたことに動揺し、突撃してきた獣人。
だが、俺は一切動揺せず動き出す。
「ルイン、落ち着け。俺が守るから安心して見てろ」
「はっ、ひゃい!」
獣人と相対するように駆け出す。
「死ねぇぇぇぇぇぇ!」
「吹き飛べ。“魔刃”」
魔力による斬撃。
俺の放った魔刃は、獣人の右腕を切り飛ばした。
「ウアァァァァァァ! 痛い痛いいだぃぃいい!」
痛がる獣人を横目に、俺はルインに問う。
「なぁルイン。何か攻撃系のスキルで使いやすいものはないか?」
「こ、攻撃家のスキルですか? えっと、それなら……『大魔道』とかですかね」
「マジックロード……?」
「はい、ある程度の範囲の魔法を、無詠唱で唱えられるようになるスキルなのですが……」
何それ、カッコいいな。
魔法が使えるのは、ちょっとテンション上がるぞ。
「―――うん、採用だ。ありがとな、ルイン」
だが俺は、興奮する気持ちを抑えて、あくまでも冷静にそう呟いた。
「いえいえ! ですが、採用……とは?」
「まあ見ていろ」
そうルインに言った俺は空を見上げ、そのまま口を開いた。
「なぁ、居るんだろ? ―――“神サマ”」
返事はない。
「はぁ……なら申し訳ないが実力行使だ。俺の前に屈しろ。『支配』」
▶スキル『支配』を発動します。
何処に居るかも分からない神に向けてスキル『支配』を使う。
だが、もちろん何も反応はない。
(ふむ……やはりこういう事ではないか……。もしかしたら、と思ったのだがな。―――思い出せ……俺。俺は今までどうやってスキルを手に入れられたんだ……?)
『憤怒』を手に入れた時は、この獣人に対する怒りで満ちた時に。
『守護』を手に入れた時は、ルインを守りたいという思いが強くなった時に。
じゃあ『転生』は……?
確か、ルインが死んで……怒りだけじゃなくて悲しみとか、そういう色んな感情がごちゃまぜになってた時に……だったか。
そして俺は一つの可能性に辿り着いた。……というか、一つの共通点に気付いた。
(どれも、感情がピークの時に獲得出来てるのか)
つまり、“対象”に対する感情が強くなった時、スキルは自動的に獲得出来る、ってことか?
―――物は試しだ。
……とも思ったが、今はそこまで感情を豊かにする事が出来るような状況では無いな。
「……まあいい。魔法が無くても貴様は殺せる」
仕方なく諦めた俺は、
「ヒイッ……! 何なんだよ、お前ら!」
「俺は魔王。―――魔王ルミナスだ。死ぬ前に覚えておきな」
「しっ、死にたく―――」
「―――“魔刃”」
言い終わる前に技を放つ。
首をスパンと切断し、獣人を迷いなく殺した。
「主様……」
「行くぞ」
次は、あの悪魔のような“転生勇者”共だ。
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