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case.7 夜の帳が下りる頃

聖戦、或いは―――






 魔法陣から、6体の影が現れる。




 ―――一つは巨大な大剣を片手に持った筋骨隆々とした男性の影。



 ―――一つは体の小ささに見合わない大きな鎌を持った女性の影。



 ―――一つは巨大な白き龍の影。




 ―――一つは黒き両翼を広げた天使の影。




 ―――一つは凍てつくような神気を放つ灰色の獣人の影。




 そして―――




「我が下僕達よ。約束通りの時間の召喚に応じてくれて助かったぞ」


「いや。まあ主の命なら仕方ないだろう」


「それに、私たちは目標達成出来たしね」


「フッ、よく追い詰めてくれた。傷一つなく、完璧な状態だな」


「お褒めに預かり光栄だ」


「エレボス、アルカナ。貴様らには後に褒美をくれてやろう」


「「有り難き幸せ」」



 エレボス、アルカナ。

 そう呼ばれた二人は、ルシファーの目の前で膝を付き礼をする。


 元冥府の王エレボス。

 超絶パワータイプであり、その自慢の肉体から繰り広げられる技はどれも大地を切り裂くほどの威力があり、その手に持つ大剣は光を裂き、音を裂き、神まで穿つと言われている伝説の大剣であると言われている。


 伝説の死神アルカナ。

 『死神の食べ物』というこの世界の御伽話に登場する人物で、伝説では男性の容姿で無情で無残で、生者からもイノチを奪い取るとされているが、実際は女性であり、基本的には命令が無いと動かない出不精である。



 エレボスの治める冥府を滅ぼしたルシファーは、何故かそのエレボスと主従関係を結び、さらには御伽話の神まで仲間に引き入れているのを見て、神話の時代から生きるベルゼブブとラグエルは少し驚いていた。



「居るって分かってはいたけど、実際にこうして見るとねぇ……」


『ああ、そうだな。これはなかなかどうして現実味が無い』



 聞くのと見るのでは大違いだ。

 そもそもこうして主従を保てているだけでも驚きなのだから。



「それで、リガルテよ。どうして貴様はこんなにも傷を負っている? 何があったのだ」


「それは、私から説明しようルシファーよ」


「バラキエル。何だ、貴様も見ていたのか。なら早く教えろ」


「ハッ。その、よく分からないのですが、妖精族エルフの女にボコボコにされていました」


「……? 我もよく分からないのだが……まあよい。リガルテよ、傷を癒やす分しっかりと働くのだぞ」


『ハ……イ』


「バラキエル。貴様も傍観主義なのはいいが、やる時はやるのだぞ?」


「へい」



 リガルテ、バラキエルと呼ばれた龍と天使がさらにルシファーの前で膝を付いた。


 白龍王リガルテ。

 現魔王軍の一員にして、騎士の国シュデンの元龍王枠の一体。

 現在はルシファーの『強制堕天』のスキルにより洗脳状態にある。

 リガルテは尋常じゃない程の嘘つきであり、平気な顔をして嘘をつくことでレヴィーナの中では有名。


 堕天使バラキエル。

 ルシファーと同時期に堕天した元天使。同期であるルシファーとベルゼブブが《七つの大罪》の一員となる中、一人だけそれに選ばれなかったことを恨み、悔やみ、怒り、そして暴れた結果危険因子として堕天使界からも追放された。

 そんな彼をルシファーが拾い、力を与えた結果“八つ裂き”の二つ名をつけられた。



 そんな二人は、自分の意思でルシファーの下僕となったのではなく、ルシファーに洗脳されている為、忠義の欠片も無い。

 それが態度として現れている訳だ。


 ベルゼブブは、少し思うところがあった。

 堕天使バラキエルは、ルシファーと同じ過去の友であり、今の敵。

 かつての友を二人も相手にするという、精神的に辛い状況にあるからだ。



『フッ……奴らは愚かだ』


「ホントは寂しいくせに」


『……煩い』



 図星を突かれ、ベルゼブブは反論出来なかった。



「そして、フェンリルよ」


「ハッ」


「ソイツを渡せ」


「ハッ」



 フェンリル……通称神殺しの魔狼。

 灰色で獣人の姿をしたそれは、手に抱えていた一人の男をルシファーへと差し出した。



「クフフ……これでようやく……」



 そしてそのままフェンリルはルシファーの前で膝を付いた。

 さらにフルーレティとメフィストフェレスもその横に膝をつく。



「よくやってくれた皆のもの。頭を上げよ。そして、我でなく、我らの敵にその眼を向けよ」


 大きく手を振り、ムルたちの方へ指を向けたルシファー。

 それを追うように従者たちもそっちを向いた。



「クク……我は準備を開始する。お前たちはアイツらを殺しておけ」


「「「ハッ」」」



 そうしてルシファーは、一人の男を抱えたまま何処かへと飛び去っていった。



『これは……マズイな』



 ベルゼブブはそう呟いた。

 と、そこへ一つの魔法陣が現れた。



「ここかしらッ!?」



 そこから、妖精族エルフの女が一人現れた。


 レヴィーナだ。

 レヴィーナはベルゼブブたちを見つけ、駆け寄ってきた。



「やっぱり、ここなのね……」


『ああ。つい先程、奴らが全員集結したところだ』



 と、ルシファーの配下達を見ながらベルゼブブは言う。

 そしてさらに、



「それで、ついさっきルシファルナがルシファーに連れてかれたわ」


「ルシファルナが!?」



 ラグエルのその言葉に、レヴィーナは驚いた表情になる。



「何でアイツが!?」


「それは、私達にも分からないわ。でも、事実として連れて行かれた。それだけよ」



 事実を淡々と述べるラグエル。



「じゃあ、助けに行かないと……よね?」


「でも、それを邪魔するのが奴らってわけよ」


「うっ……わぁ」



 冥府の王に死神、龍王に堕天使に神殺し……揃ってはいけない相手のオンパレードみたいなこの面子を見て、レヴィーナは絶望した。



「まあ、あの人の為だもん。頑張りましょう?」


「うう……そういう貴女は誰よ」


「私? 私は海王。海王ムルよ!」



 ムルの簡単な自己紹介が、さらにレヴィーナを驚愕させた。



「は? 海王って……あの?」


「よく分からないけど、多分その海王よ」


「えぇ……いよいよもって分からなくなって来たわ……」



 頭を抱えてしまうレヴィーナ。

 そこへさらに新たな人物がやって来る。



「あ、あのー」


「あ、リガーテくん」


「自分もこの戦い、協力させていただきます」



 恐る恐ると言った様子で、手を上げるリガーテ。

 父が居るから、彼も戦わくてはと思ったようだ。



「助かるわ。それにしても……」



 ラグエルは、リガーテの協力を感謝しながらも、相手の戦力と自分たちの戦力の差を見て、軽く絶望していた。


 もうルシファーと出会ってから絶望しかしていないな、と思ったラグエル。



「こちらの陣営は5人。それに対して向こうの陣営は7人。戦力差は2人分だけど、向こうの力の方が圧倒的に高いはずよ」


『ああ、そうだな。我とラグエル、そして海王は一人で戦うとして、レヴィーナはそこのリガーテとやらと一緒に戦ってくれ』


「了解よ」


「了解しました」



 ベルゼブブの指示に、2人は頷いた。



「しかし……」


「そうね、これでも人数差は埋められないわ」



 7対4……つまり向こう側が3人余ることになる。

 どこからか3人分……それもかなり強い戦力を埋めなければ敵の相手にはならないだろう。



 辺りはもう日が沈み始めていた。

 それを見たベルゼブブは言う。



『そう言えば……他の奴らが帰ってくるのはいつだ?』


「えっと……夜、って言ってたわね」



 レヴィーナはそう答えた。

 魔王捜索ミッションの今日の刻限は夜としか提示されていない。


 ルイン・皇兄弟・サタール・クサナギ・マノン・レオン・アスモフィ・ベルゼリオ・サタン・アスモデウス……これだけ帰ってくれば今回は対処できるだろうが……


 まだ、夜とは言えない時間だが……逆に言えばそこまで耐えることができれば、もしかすると逆転の目はあるかもしれない。



 そうベルゼブブは考える。

 しかしそこまで耐えられないだろうとも同時に思った。




「―――さあ、ルシファー様の命です。そろそろ殺し合いを始めましょうか」




 フルーレティが地面に降り立つ。


 ムルたちは全員覚悟を決めた。

 とにかく今は戦うしかない。



「―――夜だ。夜まで耐えれば我らの勝利だ」



 ベルゼブブが呟く。

 その言葉に全員が頷き、戦闘態勢を取る。



「我らの堕天軍の力、思い知らせてあげましょう」



「皆……頼むから早く帰ってきなさいよ……!」



 そんな、レヴィーナの淡い期待が届くことを祈って、彼らは挑む。



 

 ―――この混沌とした戦いに。

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