表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
123/185

case.5 堕天




「貴女、答えなさいよ……ッ! なんで私が背後に現れるって分かったのッ!?」



 ラグマリアは、月夜に向けて問いかける。

 その声は、少し震えている気がした。



「―――私は、《巫女》なのです」



 月夜、たった一言。そう答えた。

 それを聞いたラグマリアの表情は、少しずつ歪んでいく。




『―――闇に紛れし孤高の戦士よ』




 ラグマリアが何か言う前に、誰かが声を発する。




 ―――これは、魔術詠唱だ。




 俺は隣を見た。

 そこには、一本の杖を構えて、足元に闇色の魔法陣を展開していたスレイドさんがいた。


 しかし、それにラグマリアは気づいていないようだ。



「巫女、ですって……?」


「はい。私とにぃと、そしておにいちゃんはこの世界の重要な役職を持っているのですよ」



 月夜のその言葉を聞いて、さらにブサイクに顔を歪めていくラグマリア。




『―――魔に魅せられし憐れな騎士よ』




 その間にも、スレイドさんの詠唱は続いていく。



「何よ……それッ! まさか、この世界の重要な役職って……!」



 どうやら、ラグマリアも答えに気づいたらしい。

 俺と、月夜と、アニキがそれぞれ勇者、巫女、魔王であることに。




『―――狂気に満ちし殺戮の魔道士よ』




「そろそろ……詠唱が終わります。私たちも準備しましょう」



 隣のルインさんが言った。

 しかし、俺はその言葉に疑問を抱く。



「俺も……やるんですか?」


「はい、先程の判断……とても素晴らしかったと思います。正直、貴方たちがここまでやれるとは思ってもいませんでした……」



 褒められてしまった。

 正直ちょっと、嬉しいな。



(もうちょっと、自信持ってもいいのかな……)



「まさかまさかまさか……! あの魔王……ッ! 勇者と巫女を……ッ!? そんな、あり得ないわッ!」


「でも、それが事実なのです」



 顔を真っ赤にしたラグマリアに、さらに追い打ちをかける月夜。



(今日の月夜は何だか毒舌な気が……?)




『―――覇道を極めよ。王道を極めよ。魔道を極めよ』




 スレイドさんの詠唱も、クライマックスっぽくなってくる。

 隣に居たルインさんも、いつの間にか消えていた。



(俺も、やるんだ……!)



「そんな……あり得ない……」


「貴女の負けです。もう……負けを認めてください……!」


「嫌よ……嫌よ……! まだ、私は負けてない……!」


「いいえ、もう、貴女の負けですよ」


「え……?」



 月夜も、どうやら気づいていたようだ。


 スレイドさんが詠唱していたことも、ルインさんが消えていたことも、俺が動くことも。



 気づいていないのは、本当にラグマリアただ一人だった。




『―――ヘッ、こっちは準備完了ッスよ!?』



 スレイドさんが、俺に向かってそう言った。



『私も大丈夫です』



 どこからともなく、ルインさんの声も聞こえてきた。



「何……何よ……! 何なのよッ!?」


「だから、月夜は貴女の負けだと言ったんですよ」



 俺は、剣を握り直しながらそう言った。



「貴方が……勇者だと言うのね……ッ!」


「はい、俺が勇者です」



 俺は馬鹿正直にそう答えた。

 

 答えながら俺は考える。

 殺しちゃいけないから、少し加減しないといけないはずだ。


 ルインさんと、スレイドさんが大掛かりな術を使うだろうから、俺は月夜と二人で何か一つ、大技を放とうと思うが……。



「いいわ……やってやるわよ……! 勇者と巫女……二人を落とせば彼女たちも私を認めてくれるはず……! だから、だから私は……ッ!!!!」



 何だ……ラグマリアを包む雰囲気が黒く……染まっていって―――



(ラグマリアの様子が……おかしいッ!)



「グッ……アァ……ヴァァァァァァァァァァァッ!!! 神よ……私に力をッ!!!!」



(月夜が……危ないッ!)



「月夜ッ! 早くこっちへ来いッ!」


「えっ……う、うん!」



 俺は咄嗟の判断で月夜に指示を出した。

 すると月夜は大きく旋回しながらこちらへ駆けてきた。


 その間も、ラグマリアの苦しそうな声が辺りに響く。



「グッ、ガァァァァァァッ……ヴァァァァァァァァッ!!!」



 ラグマリアは、紫電と共に段々とその身体が黒に染まっていく。



「チッ……! しゃあないッスね……少年!」



 その様子を見ていたスレイドさんが、俺に向かって言った。



「大魔法を一発、ヤツにぶちかますッス! 少年たちも俺に合わせてくださいッス!」


「ッ……! は、はい!」



 今、か。

 よし……やるぞ。



「月夜、強化を頼む!」


「おっけー! ―――精霊よ、彼の者に大地を揺るがす力を与えよ! “剛力オーバーパワー”ッ!」



 月夜の強化魔法で、俺の攻撃力もろもろが上がる。

 ここからは、俺の番だ。



「“付与エンチャント : ファイア”―――」



 まだまだ。

 俺の使える属性全てを盛り込んでやる。



「“付与エンチャント : ドラゴン”―――」



 ここから先は本邦初公開、ってね。

 さあ、ここからが本番だ。一気に行くぞ……!



「“三重付与トリプルエンチャント : ライト : アース : デス”―――」



 これで計5つの属性の重ねがけエンチャントをしたことになる。


 炎、土、光、死、龍の計5属性。

 これが、今俺の扱うことができる5つの属性なのだ。



「ガァァァァァァッ……」


「ラグマリア……」



 何か、とても苦しそうだ。

 まるで、何かに蝕まれているような……というか、実際に黒く染まっていっているから、蝕まれているのだろうが。


 早く解放しないと、危険な気がする。



「準備が出来たみたいだな! んなら行くッスよ!」



 俺たちが強化しきったのを見て、スレイドさんが動き出した。

 既に、詠唱は完了しているので、あとは魔法を放つだけだろう。



「師匠から教えてもらったコイツを喰らいやがりなッ! ―――“大罪の宴デッドリーフェスティバルスリー”ッ!!!」



 スレイドさんが魔法を放った。

 すると、黒い火玉がラグマリアの周りを囲んでいく。



(詠唱したのは3回……だから“参”?)



 なんて考えていると、今度はルインさんの声が響く。



「―――“分身”」



 すると、突如空に無数のルインさんが現れた。

 そして、



「―――“暗影之地シャドーフィールド”」



 そう、一言。

 刹那、辺りが真っ暗になる。


 視界には、目先の物しか映らない。



 そんな状況だが、俺は光属性の魔力を自らの目に流すことで、先程までと同じ視界に戻した。


 そして、最後になった俺はラグマリア目がけて駆け出した。



「皆さん、行きますッ!!!」



 俺のその掛け声で、全員に同時攻撃を促す。

 まずは俺からだ!



「―――“天地五王斬てんちごおうざん”ッ!!!」



 剣に宿った5つの属性が一気に解き放たれて、虹色の衝撃波となる。

 そしてそれがラグマリアに襲いかかる。



「んじゃあ俺も……! ―――“着火ファイア”ッ!」



 さらにスレイドさんが辺りに漂わせていた黒火を一気に爆発させた。



「行きます……ッ! ―――“無限連斬むげんれんざん”ッ!」



 最後にルインさんが、全ての分身と共にラグマリアを襲う。



 全ての攻撃が、ラグマリアに直撃し、彼女を中心として白爆発による煙が立ち込めた。



 しかしそんな中、月夜が眉間にシワを寄せる。



「何……これ。この、違和感は……」


「……? どうした、月夜」


「待って、何か変な……まさか、彼女……ッ!」



 一体、何が変なのだ―――




「アハハハ……」




(ッ……!? 煙の中から、笑い声が聞こえる……? まさか、そんな……!)




「結構痛かったわぁ……?」




(まだ、立ち上がるのか……!?)




「アハハハ……アハハハッ! “堕天使フォールンエンジェル・【忍耐】のラグマリア”……ここに参上よ……ッ!」




(堕天使……だと?)



 確かによく見たら、全体的に色が黒くなっていて……まさしく文字通り堕天使だが……。



 じゃあ、あの苦しんでいたのは……堕天使へと身体を侵蝕させていたからだと言うのか?





「―――ここからが本番よ? 【忍耐】の恐ろしさ、その身をもって体感させてあげるッ!」



ブックマークや高評価をぜひよろしくお願いします〜!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ