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case.10 失ったモノは

よ!



『もう決める時だ。覚悟を決めろ。』





■ □ ■





「―――お前も俺の傀儡くぐつとなれ」




▶スキル『死配デストゥルー』を発動しました。



「ひ……ヒィッ…………!」



 後退あとずさる勇斗であったが、その目からは光が消え、やがて力も無くなって腕を無力に垂らし、ついにはその場に倒れ込んでしまった。



 安心してほしい。

 殺してはいない。



「お見事です、主様」


「ああ……終わったな……」



 ルインに会えた喜びも、この勇者ゴミのパーティーを殺した悲しみも、今の俺には何も無い。


 あるのは、ただの達成感のみだ。



「主様……」


「……ルイン。もう一度俺のもとに来てくれて、ありがとう。本当に……本当にありがとう」



 俺は、改めて帰ってきてくれたルインに涙ぐみながらお礼を言った。



「―――いえ……。私も、また主様に会えて、嬉しいので……」



 ルインも、そう返してくれた。

 ニッコリと微笑みながら。


 不覚にも、そんなルインに俺はドキッとしてしまう。



「―――それで、主様はこれからどうなされるのですか?」


「えっ?……あ、ああ、俺がこれからどうするか、か。うーん……ルインは、どうしたい?」


「……私が、ですか? ……そうですね―――私は魔族がしいたげられない世界をつくりたいです。今回の件で、その思いは一気に強くなりました」



 魔族が虐げられない世界、か。

 そうだな。ルインは……いや、“魔族”はずっと他種族に狙われてきたんだったな。



「―――俺がこの世界に来た意味。そして、俺の、この世界との向き合い方。魔王である理由……」


「主様……」



 俺は、考える。


 俺が、これからどう生きるのか。



 しかし。

 その問いに対する俺の答えはもうほぼ出ていた。



 だから改めてそれをルインに伝えよう。

 そう思って、俺は口を開いた。

 


「―――俺は、決めた。……ルイン、俺はこの世界に魔族の国をつくる。俺がこの世界を『支配』するんだ」


「えっ……?」


「その為には……俺には―――お前が必要だ、ルイン」


「えっ……えっ?」


「こんな俺だけど……ついてきてくれるか?」



 その問いを聞いて、ルインは迷わず頷いた。



「―――はい……! はいっ! 前にも言いましたが、私は貴方にずっとついていきますよ! 主様!」


「ルイン……! ありがとう、本当に、ありがとう……っ!」






 感動してしばらく涙ぐんでいた俺たちは、近くに作った切り株に座りながら、休憩をしていた。


 二人の間に、変な緊張感が漂う中、俺は口を開いた。



「……いい機会だから、少しだけ話さないか?」


「はい……。もちろんいいですけど、一体何を?」



 話の内容……か。


 実は、ずっと言わなきゃって思ってた事が一つのあるんだよな。



 今は、それを話そうと思ってこの話を切り出したのだ。



「それは―――俺の話だ」


「主様の……?」



 少しだけ息を吐く。


 別に、隠さなきゃいけない事でもないが、不意に隠してしまった事があるから、ちょっとだけ緊張している。



 しかし、やがて意を決すると、俺は言った。



「―――俺はな、元々この世界の人間じゃないんだ」


「……えっ……? それ、は……どう……いう?」


「―――“転生者”……って言っても分からないかもしれないけど……。

 でも、そういうやつなのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。気づいたら、この世界に居たんだ。そして気づいた時から“魔王”だった。

 ―――そしてルインと出会った。あの時はドキドキしてさ、同時にワクワクもしたんだ。なんて可愛い子なんだろう、これからどうなっていくんだろう、って」



 ルインは黙って俺の言葉を聞いている。


 ちょっとだけ顔が赤くなっているような気もするが……。



 俺は続ける。



「ルインは前に言ったよな。魔族を救ってくれって。俺はその言葉を聞いたときから、お前を……いや、魔族を救おうって決めたんだ。

 それなのに、俺は、ルイン一人すら救えなかった。あの時は悲しくて、悔しくて、辛かった。そしてそれをした奴らが憎かったんだ……ッ」



 だからもう一度帰ってきてくれた時、今度は絶対に守ろうって思えたんだ。




「―――今度は、絶対に守ろう。俺が、約束しよう」



 異世界から来たからなんだ。


 もう、この“現実”を受け入れるしかないだろう。


 なあ、三雲翔一。

 俺はもう、“魔王ルミナス”にならなきゃいけないんだ。



(覚悟を、決める時だ)




 ―――するとルインは、目を閉じ、そして優しく語り始めた。



「主様は、最初から主様です。魔族の……いいえ、私の魔王様です。誰がなんと言おうと、私の大好きな人です。

 私の為に、怒ってくれた。魔族の為の国をつくってくれると言ってくれた。

 そんな、優しい、優しい魔王様です。怖い時、辛い時はいつでも頼ってください。

 私が、隣に居ますから。



 ―――もう、二度と離れませんから」



 俺は、そんなルインの言葉を聞いて。



 一気に心の中に色がついた。

 溜まっていた感情が溢れてきそうな、そんな感じがした。



「―――ルイン……!俺はもう、半端な覚悟は捨てる。もう躊躇もしない。

 俺はただ、蹂躙するのが怖かっただけなんだ。過去に、イジメられてたから……。それを俺がやっちゃったら、もう元の俺に戻れなくなるんじゃないかって……そう、思ったんだ」


「……主、さま……」


「……でももう決めた。魔族を救うって、ルインを守るって。もう、決めたんだ。

 だからもう一度言わせてくれ。


 ―――ルイン、俺と一緒に来てくれるか?」



 俺は手を差し出した。




 するとルインは、その手を取って、

 


「はい。もちろん!」



 と、にこやかに微笑んだのだ。



「……ありがとう……ありがとうッ!」







「よし……なんか、やる気が出てきたぞ!」



 俺の話から一転、俺は立ち上がって両手を空に掲げて、そう意気込んだ。



「そろそろ戻って、サファイアと合流するか?」


「はい、そうですね……。そろそろ戻りましょうか、主様!」


「ああ!」



 という訳で、俺たちは二人並んで歩き始めた。



 ―――まずは目先の事から!

 あの洞窟へ戻って、サファイアと合流してから、また俺たちの計画は再始動するんだ……!




 

 ……なんて考えていると、ある事が脳裏をよぎった。


 しばらく歩いてから、一つだけ思い出したのだ。



「……あ、そういえばあのゴミたち忘れてたな」



 戻っている途中で、支配したまま置いてきたあの勇者パーティーの事を思い出した俺は、そう呟いた。



「え……? いいんじゃないですか? 放っておけば」


「……いや、そうもいかないだろう。奴らが勇者であるならば、奴らを雇っていた国側が、勇者たちが帰ってこないことに疑問を抱き、こちらの方へ調査にくるだろう。そうなったら、奴らの死体が見つかってしまう」



 言いながら俺は再び考えた。


 そうだ。

 もし今言ったように、雇い主が居るなら帰ってこない勇者たちの事を探しに来てしまうだろう。


 それは、今の俺たちにとってはかなり危険だ。

 


「……あれ? でも主様、今もあのゴミを支配してるんじゃないですか?」


「―――あ。そういえばそうだったな。……なら命令しておくか」



 そうか……『死配デストゥルー』の効果で死んでても動かせるのか。


 それなら……



 ―――“洞窟へ行く。勝手についてこい”



 と、簡潔な命令を出したところ、ゴミ3つが後ろからのろのろと歩いてくるのが見えた。



「よし、まあこれでいいだろう。さ、俺たちは早く戻ろう」


「はい!」





◆ ◇ ◆




 ルインと並んで歩く魔王ルミナス。



 彼は気づいて居ないようだったが、一つだけ彼の身体には変化が訪れていた。





▶“破滅の願い”の代償を支払います。




 そう。

 それは、忘れてはならない、“破滅の願い”の代償だった。




▶『死配デストゥルー』が『支配ルール』へと変化しました。


▶『憤激焉怒エンドレイジ』が『憤怒レイジ』へと変化しました。




▶以後、幾つかのスキルを消去対象と致します。




 彼が失ったのは、一部のスキルの消失と、そして―――





―――蹂躙を嫌う、その人格信念であったのだった。



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