case.2 勇者と巫女
勇者と巫女は、転生者。
「さーて到着だァ」
転移が終わると、俺たちは森の中に居た。
《森ノ大国》は、とても広い樹海を国土とし、国全体が大きな町である不思議な国だ。
見渡す限りの木で、視界は埋め尽くされているが、これでも町中なのだ。
「それで、クサナギ。勇者と巫女を観測したのはどの辺りなんだ?」
「えっと……ちょっと待ってくださいね」
そう言ってクサナギは周囲を見回し始めた。
「んーっと……すいません。ここって森ノ大国のどの辺りなんですかね?」
「うーん……? 俺は初めて来たから分からないな。サタールは分かるか?」
「そうさなァ……近くにこの国のシンボル、《守護霊樹》が見えるってこたァ……《森ノ都》の近くだろうさ」
ああ、あのでっかい木のことか。
もうホントにデカくて、見上げてもそのてっぺんが見えないくらいだもんな。
それの下にある、少し栄えた地域……そこが《森ノ都》と呼ばれているらしい。
「森ノ都……と、いうことは。恐らくすぐ近くに居ますよ、件の二人は」
「ほう? 詳しい位置とかは分からないのか?」
「うーん……私のスキル『気配感知』を使えば分からないこともないですが……」
スキル『気配感知』、か。
それなら前に、サタールから聞いたことがあるな。
なんでも、誰しもが持っていて良いスキルなんだとか。
「……あれ……? この感じ……まさか」
「……? 何かあったのか?」
突然クサナギが、キョロキョロし始めたので、俺は不思議に思った。
「いや、その……『気配感知』のスキルに、我々以外の人間が引っかかりまして……」
「俺たち以外の……?」
「はい……ちょうど、そこら辺に……」
そう言いながらクサナギは、俺たちの後ろの方を指差した。
指差した地点には、木・木・木……。う……ん? 木しかないけど……。
「少し、調べてみるか」
「了解しました」
俺の言葉にルインがそう答えて、俺たちは後ろの木を調べ始めた。
すると、探し始めて数秒で、
「あっ」
「ヒエッ……」
「おにいちゃん……っ!」
―――見つけた。
何と、クサナギの言う通り、木の裏に居たのだ。
「勇者と……巫女……?」
一人は、背の高いイケメン。
(また……イケメンかよ)
まあいいや。そのイケメンの特徴は……黒髪で、ラフな格好で、武器や防具の類は何も持っていないな。
(これが……勇者??)
それに、もう一人。
もう一人は、少女だった。
イケメンと同じく黒髪で、長さは割とある。それに、服装も何だか似ている。武器や防具も持っていない。
(これが……巫女????)
「あっ、あの! その……俺たちは違うんです! 人違いです! ですから国に連れて帰るのはやめてくださいッ!」
(……? 国に連れて帰る……?)
「いや、俺たちは」
「いやっ……いやだよにぃ……助けてぇ……!」
「大丈夫……大丈夫だ月夜。俺が絶対に守るからな……!」
(……あれ? 俺もしかして、怖がられている?)
「いや、あの、だから」
「や! やめてください!」
「いや、その」
「ですから! 俺たちは勇者でも巫女でも無いんですッ!」
「え、ちょ、待って、話を」
「もう、何なんですかッ!!!」
「こっちのセリフだよッ!!!」
「「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬっ!」」
クソ……何なんだ一体。
この男……と話してると何だか調子狂うな。
「まあまあお二人さん、落ち着きなって。俺たちゃァ、お前さん達を連れて帰るとか、そういうのの為に来たんじゃねェからよ」
サタールが仲介してくれたお陰か、勇者と巫女(?)は落ち着いてくれたようだ。
「そう、なんですか」
「アァ、まずは落ち着いて話をしようぜェ?」
「……わか……りました」
「おっし、それじゃァ場所移すぞ〜」
そう言うと、サタールは突然刀を生み出した。
そしてこう一言。
「―――剣鬼之刀真空間」
すると、一瞬にして辺りの風景が変わった。
真っ白い空間に、机と椅子が人数分。
「これは……?」
「まあ、俺が戦闘訓練で使う用の特別性のフィールドさ」
「へぇ……」
と、俺は素直に関心してしまう。
そうか……専用のフィールドを作れるのか。
何だか羨ましいな。
確か、ルインも使えたよな……?似たようなやつ。
「そんじゃ、全員座んな」
サタールに言われるがまま、俺たちは椅子に腰掛けた。
三、三に分かれた椅子には、俺が中央、ルインとクサナギが両隣に。反対側には中央に勇者のイケメンが、その隣にサタールと巫女の少女が座った。
「まずは自己紹介からだ。大将、アンタから頼むぜ?」
「へ? あ、ああ分かった。俺はルミナス。魔王ルミナスだ」
俺が軽くそう言った時だった。
「―――魔王?」
一瞬にして、勇者の目つきが変わったのが分かった。
背筋の凍るような、鋭い眼光を向けられて、少し萎縮してしまうが、すぐに冷静になる。
「ああ、まあそれ以外の詳しい話は、また今度な」
「ほい、んじゃァ次は俺だ。俺はサタール。こっちの魔王と一緒に、世界支配に勤しんでいる鬼の戦士さ」
「私はクサナギ。こちらのサタール様の弟子として、日々修行中の戦士です。以後、宜しくお願い致します」
「私はルイン。主様の側近……です。暗殺者やってます」
と、これで簡潔だが、こちら側の自己紹介が終わった。
すると、今度は問題の二人が話し始めた。
「俺は……“皇 白夜”。18歳です。ついさっき……この世界にやって来たばかりで……何も知らなくて……それで突然勇者が出たぞとか言われて、ずっと追いかけられて……それでそれで……」
……“スメラギ”……?
おい、待てよ。まさか、この感じ……。
この世界にやって来たばかり?
いやいや、まさかな。
「私は、“皇 月夜”、です。15歳です! あの、私は、白夜にぃの妹です……! ゲームしてたら、この世界に来ちゃったんです……!」
スメラギ……兄妹、か。
それに、今ハッキリとこう言ったな。
「ゲームしてたら」って。
これで確信した。この兄妹は……
「―――転生者、だな? いや……正確には“転移者”か?」
しかも、俺と同じタイプの転移者の可能性が高い。
「……はい。恐らく、それであってます。俺たち、とあるゲームをやっていたら、その、突然意識を失って……」
ビンゴだ。完全に俺と同じタイプだな。
いや、正確に言えば少し違うんだけど。
「私も、おにいちゃんに進められて、同じゲームをやろうと思って、始めたんですけど……一緒にプレイしようと思ったんだけど……意識が消えちゃって……」
同時……か。
そんなことも起こるんだな。
さて、そろそろ聞くとするか。
核心に触れていこう。
「―――『Scarlet Online』。プレイしようとしたゲームの名前だな?」
「何で……それを!?」
「そんなの、簡単な話だろう? それは俺が―――」
「―――俺たちと同じだから……?」
「うむ。その通りだ」
察しが良くて助かるな。
ともかく……
「しかしまあ……ゲームのNPCのみに与えられた三つの役職がここに揃うとはな……」
「勇者と巫女と魔王……ホントにすごい並びですね……」
だいぶ俺に慣れてくれたのか、白夜は普通に話してくれるようになった。
「それで……この世界は……一体?」
「ああ、そうだな……。俺が今までに得た情報を全部話そう。だが勘違いするなよ、これは俺がお前たちを信用しているからだ。“敵”になるというのなら、即座に排除させてもらうからな」
俺がそう言うと、二人は緊張した顔つきになる。
少しくらい威圧しとかないと、突然裏切られたりするかもしれないからな。
「それじゃあ話すぞ。俺が……この世界に来る前のことから、今現在までに起こった話を―――」
そう切り出した俺は、言葉通りに全てを話した。
■
「まあ、結構噛み砕いて話したが、一応これで終わりだ」
「―――やっぱり、キャラ作成のボタンを押す時なんですね!!! 俺たちもそこで意識が無くなっちゃって!」
「―――ああやっぱりそうなんだな! 良かった……初めて理解してくれる人が来てくれて、俺は嬉しいぞッ!」
ガシッと固く握手を交わす俺と白夜。
それを見ていた魔王軍メンバーの三人はポカンとしていた。
(とは言え、俺は少しだけ状況は違うんだけど……まあ、大体同じだから問題は無いだろう)
「ああ、良かった! 貴方が優しい人で!」
「ああ、俺も良かったぞ! お前も結構いいやつじゃないか!」
「二人が仲良しさんで、私も安心です!」
……結構、仲良く出来てるんじゃない?
最初の想像では敵になるもんだと思っていたが、まさかの展開だったな。
「あの、一ついいですか?」
「なんだ?」
「俺たちを、貴方の仲間に入れてください!」
「私からもお願いします!」
「ああいいぞ!」
「いいんですか!」
「ああ勿論だ!」
「やったぁ! やったねおにいちゃん!」
流れるように話が進んでいく。
が、コイツと話してみて分かったけど、コイツ……俺と馬が合うぞ。
手のひら返しもいいところだが、マジで楽しいかもしれない。
しかも、サラッと流れたが、コイツらを仲間に出来たぞ!
「スッゲェな大将。一瞬で勇者サマと巫女サマを仲間にしやがった」
「流石です主様!」
すげぇ称賛されてる。
なんか気持ちいいな。これ。
「それじゃあ、早速色々語ろうじゃないか皇兄妹よ!」
「はい! 三雲さん!」
「何だかおにいちゃんみたいです! 三雲おにいちゃん!」
あっ……これはヤバいかもしれない。
なんか、父性というか、母性というか……そんな親心的な気持ちがすごい湧き上がってくるぞ。
兄弟が一人も居なかったから、何だか嬉しいな。
「それじゃあ、俺たちの拠点に戻ろ―――」
そこまで言いかけた時だった。
「待ちなさい魔王! 何処へ行くつもりなのかしらッ!」
突如として空から声が響く。
この声は……聞き覚えがあるぞ……?
「しゅたっ! 綺麗に着地できたわ! 魔帝八皇、【嫉妬】! レヴィーナがここに参上したわ!」
可愛く現れたのは、妖精族のスレンダーな女性、弓使いのレヴィーナその人だった。
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