case.23 魔王会議
章完結
目が覚めると、俺は魔王城城内の一室、《治療室》のベッドの上に寝ていた。
この部屋にはベッドが左右に四つずつ連なる形に設置されているのだが、俺はそのベッドの内、扉側から見て左の列の一番手前のベッドで寝ていた。
左隣にはサタール、その奥にはルシファルナが寝ていた。
俺は、ゆっくりと起き上がって目の前を見ると、マノンが寝ていた。さらにその隣にはアスモフィが寝ていた。
俺は軽く思考を纏めながら、身支度をするべく立ち上がる。
すると、ちょうどそのタイミングで部屋の扉がガチャッ! と勢い良く開かれた。
開いた扉から現れたのは、ルインだった。
「あ、ルイン。おはよう」
「主様! 起きられたのですね!」
「ああ。それで……もしかしてお前が俺をここに?」
「あ、はい! 後片付けのあとすぐに運ばせていただきました!」
そう言いながら、ペコペコと一礼するルイン。仕草がいちいち可愛いんだよなぁ……。
「あ、あと主様! このあと会議をすると思いますので、会議室のセッテイングは済ませておきました!」
「え? あ、ああ助かる」
すごい、こんな言わなくても分かるなんて。
確かに、このあと今回の結果と反省、そして突然帰ってきたアスモフィに色々話を聞きたいと思っていたんだ。
あと、皆忘れていたかもしれないが、当然のように居なかったクサナギとレオンについても言いたいことがあるし。
ベルゼリオがどうしてるのかも気になるし……。
だからこのあと、全員が起きてから会議をしようと思っていたんだ。
まさかそんな俺の意図を汲み取って、先に準備していてくれるなんて、相当すごいことだぞ。
「それでは、私は先に行ってますね!」
そう言うなり、そそくさと立ち去ってしまうルイン。
今度、ちゃんとお礼しないとな。いつも助けられてばっかりだ……。
さて……それにしても俺の身体に変化が起きるみたいなことをハヌマーンが言っていたが……どうなっているのやら……。
▶起きたか、魔王よ。
おっ、ハヌマーンか。なあ、俺の身体に起こった変化ってあるのか?
なんか、種族進化がどうとか言ってた気がするんだけど。
▶ああ、その事か。それなら分かりやすく簡潔に話そう。
頼む。
▶うむ、心得た。それではまずは汝の種族についてだが―――
そう言って、ハヌマーンは語り始めた。
話の内容を簡単に纏めると、
・俺の種族は“半神”から“天魔神”というものへ変わったこと。
・その際にスキル『天使』と『悪魔』を融合してしまって無くなったこと。
・その代わりにその二つの統合スキルである『天魔』を得たこと。
・システムスキル『Scarlet』と神将スキル『猿神』が解放されたこと。
ということらしい。
詳しく聞きたいことは色々ある。というか全部聞きたい。だが、今はやめておこう。
なぜなら、俺がハヌマーンからその話を聞いている間に、隣で寝ていたサタールや、向かいで寝ていたマノンを始め、皆が起き始めたからだ。
「皆、寝起きで悪いがこのあと会議を開く。準備ができ次第会議室へ来てくれ」
俺はそう簡潔に伝えた。
すると皆、俺の言葉を寝ぼけ眼で聞きながら、
「ういー」
と気の抜けた返事をしてきた。
俺はそんな彼らを見ながら、会議室へ向かうべく、治療室を出た。
会議室は、治療室の隣の部屋なので大した移動距離ではないが、寝起きだと少し気だるさが残るな……なんて考えながらも、俺は会議で話す内容を脳内で纏めていた。
そんな時だった。
「―――魔王様、只今帰還しました」
突然、そう呼び止められて、俺は声のした後ろを振り返った。
すると、そこにいたのは。
「―――ベルゼリオ……!」
「ハッ。ベルゼリオ、只今帰還致しました」
それは、護王国シュデンを支配するべく行動していた魔帝八皇の一人、【暴食】のベルゼリオだった。
■
「それでは、魔王会議を開く」
確か、そんな名前だった気がする。
まあ、こんなの些細な問題だろう。
「まずは今回の戦帝国フラウの襲撃についてだ。反省点とか、何かあれば遠慮なく言ってくれ」
俺がそう言うと、ルシファルナが手を上げた。
「はい、宜しいですか?」
「ああ、いいぞ」
「今回の戦いで、欠点はあまり無かったように感じられます。今回は神ハヌマーンの襲撃という特例だった為、防衛設備が上手く機能しませんでしたが、まあ概ね良かったと言えるでしょう」
確かに。今回は神相手だったから強化した設備が無意味に感じられたが、実際、普通の相手であれば、この防衛設備は最強であると言えるだろう。
「そうだな、確かに今回は相手が悪かっただけだろう」
俺は頷きながらそう答えた。
すると、今度はルインが手を上げた。
「あの、私からもいいですか?」
「ああ」
「えっと、戦いが終わったあとの死体処理や崩れた箇所の修復、地面の整地などの事後処理を今回は私一人でやったのですが、流石に大変なので、どうにかなりませんかね?」
俺はそれを聞き終わってから、そういえばと頭を抱えた。
確かに、それは気になっていたんだ。
「うーん……それについて、何かいい案がある奴はいるか?」
俺はこの場にいる全員にそう聞いた。
すると、再びルシファルナが手を上げた。
「ああ、それは私の『蟲繰』のスキルでどうにかしましょう」
「何とかなるのか?」
「ええ、余裕ですね」
「そうか、なら頼めるか? ルイン一人に負担をかけるわけにはいかないしな」
「かしこまりました。それでは後ほど召喚しておきますね」
そう言って一礼するルシファルナ。
それにしても、ルシファルナってかなり優秀だよな。それこそ、さっき言ったルインのこともそうだが、魔帝八皇のメンバーってかなり性格に偏りがあるよなぁ。
「ルインもそれでいいか?」
「あ、はい! すごい助かります!」
そう言いながら眩しいくらいの笑顔でこちらを見てくるルイン。
俺は、そんなルインの表情に少しドキッとしてしまうが、すぐに気持ちを切り替え、次の話題を振った。
「じゃあ、ひとまずこの話はここで終わろう。次なんだが……」
俺はベルゼリオとアスモフィの方を見ながら言葉を続ける。
「お前たちからの報告を聞きたい。いいか?」
「ハッ」
「おっけー!」
(なんか、二人とも少しキャラが変わったか……? それとも気のせいか……?)
……ま、いいや。
「それじゃあ、まずは結果から聞きたい」
「それでは私から」
ベルゼリオが立ち上がって、先に話し始めた。
「結論から言いますと、完全に成功しました。現在、護王国シュデンは先の一件で王が居なくなりましたので、代わりに私が育てていた弟子を代役として置いてきました」
「ほう」
「国民に寄り添い、情に訴えかけたところ、情に厚いあの国の民たちは馬鹿正直に我々を支持し、その結果シュデンは我々に支配される形となったのです。もちろん表面上は優しくしていますがね」
……なかなか腹黒いな、コイツ。
しかしまあ、シュデンの支配は成功したのか。
これでまずは世界支配第一歩目ってところか。よしよし、いいぞ……。
「それじゃあ、アスモフィ。お前の結果も聞かせてくれ」
俺がそう言うと、ベルゼリオは座って、代わりにアスモフィが立ち上がった。
「おっけーよ、任せなさい! おねえちゃんの結果は……」
直後、訪れる静寂。
全員が息を、唾を飲み、アスモフィの言葉を待った。
「―――結果は」
クイズ番組なりに結果を言うのを延ばすな。
ああもどかしい!
「結果はッ!?」
「―――成功しましたぁ〜☆」
ダブルピースでニッコリ笑顔のアスモフィはそう言った。
そうか……良かった。成功してたんだな。
「私も、聖皇国ラーゼで見つけたお弟子ちゃんに王の代役を任せてきたの。だから私は帰ってこれたってワケ。どう? おねえちゃんすごいでしょ!」
ポンポンと胸を叩きながらドヤ顔で自慢してくるアスモフィ。
てか、アスモフィも弟子を……?
「それで、今の国の状況はどうなんだ?」
「あー、そうね……。実はね? 私が弟子にしたって娘が、あの国の死んだ王の娘さんでね。自然と信頼が集まったのよ」
……おっと。
今、コイツ……王女を弟子にしたって言ったのか???
「それで、その王女様に魔王軍の傘下に入らないか、って言ったら『はい、いいですよ!』って言ったのよ!」
おっとっと。
しかも魔王軍って言っちゃったのね!?
「と、いうワケだからラーゼに関しては問題なしよ!」
「お……おう。ありがとな」
……さて、これで残る問題はあと一つか。
クサナギとレオンの今後についてだな。
「さて……それじゃあ最後の議題だが―――」
俺が、そう切り出した時だった。
「た、大変です魔王様ッ!」
会議室へ突如飛び込んできたのは、件のクサナギだった。
「ど、どうした! てかお前―――」
俺がそう言いかけると、クサナギはそれを遮って、しかも声を荒げてこう叫んだ。
「―――勇者と、巫女が現れました!」
「……は?」
俺は、クサナギからその情報を聞いて、全身に鳥肌が立つのが分かった。
まさか、ここに来て勇者と巫女……とはな。
果たしてそいつらは敵か味方か……。
そしてそいつらが《Scarlet Online》と何か関係があるのか……。
俺は情報を得るべく、クサナギに話を聞くのだった。
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