新一とカオスとゴッドと競馬場(3)
「あれ? 秋山さんって親の仕送りで競馬しているんですか?」
ゴッドが驚き、真琴の方に目をやる。
「うっつ。あんたもそういうこと言うの」
真琴は、右手を胸に当て、心臓を鉄砲で撃たれたようなそぶりをみせた。
「いやいや、これが普通の反応ですって」
カオスは言う。横で新一もウンウンと頷いている。
「なんでバイトしないんですか?」とゴッド。
「いや、だから、私はこんな見た目だし、人と接するのが好きじゃないし」
「でも、秋山さんは、そのメガネを取ったら美人そうに見えますけどね」
ゴッドの言葉に、真琴はぽかんと口を開けた。
カオスと新一は、「あー」と言いながら二人から目を背ける。
「ねぇ、二人もそう思うよね?」
ゴッドは、新一とカオスの方を振り向く。
カオスと新一は、「いやぁ」と言いながら斜め下を向く。
「一回見せてくださいよ」とゴッド。
「いや、ダメだ。絶対に見せない。これを見せたがために、ややこしいことになったんだよ」
真琴は断固拒否する。
「あのー僕、考えたんですけど。決め台詞の、メガネをクイッのところを、メガネを外して、髪をふさぁってするのはどうですか? そしたら、みんなウィンウィンですよ」とカオスが言う。
「いいわよ。当たったらね。じゃあ、今回はパスで。次当たったら、それやったげる」
承諾しながらも、このやろうという目でカオスを睨む。
「わー。パチパチ。期待しています」
ゴッドはわざとらしく手を叩く。決め台詞がなんのことか、この際どうでもイイと言う感じである。とりあえず次に真琴が当たれば、真琴のメガネなしの顔が見れるということだ。
真琴は家に帰ると、ベッドに仰向けに寝転んだ。ふくよかな脂肪のかたまりが真琴の胸の上でぽよぽよと振動する。
「いやぁ、やっぱりみんなで行くと楽しいなぁ」
真琴は腕を天井に向けてあげる。そして、大きく深呼吸をした。幸せを噛みしめるために。
『真琴のレース収支;マイナス5300円』




