カオス接近
真琴が、新一に告白されてから、数日が経つ。
講義室で何度か顔を合わせたが、目をそらされる。
普通に接したいのだが、避けられている気がする。
確率論の講義に、新一は来なかった。他の講義で彼を見たので、理由はわかる。
そして、ついに0班は真琴とカオスの二人になった。
真琴とカオスは、確率論の教科書を普通に読み進めた。
「もしかして新一となんかあったんですか?」
と、カオスが真琴に聞いたのはゼミが終わった後だった。
「いや、なんていうか、こないださ。新一に告白されたんだよね。で、ごめんなさいって、言っちゃったのよね。どうしたんだろうね、急に私のことを好きになっちゃったとかいうのよね」
真琴は小さくため息をつく。
「いや、僕も」と、カオスが言いかけた。
「やめて」と真琴は心の中で叫んだ。
「僕も、新一の気持ちはわかります。この間から、秋山さんのことが気になっているんです。僕も、秋山さんのことが好きです」
真琴の表情は消えていた。
「あ、ごめん。私、ほんと、そういうつもりじゃないの」
真琴の目に涙が浮かんだ。なぜだかわからない複雑な気持ちで。
「泣くほど嫌ですか?」と、カオスが言う。
「あ、ごめんなさい。これは、違うの」
真琴は右手で涙を拭う。
「いやとかじゃない。嬉しいよ、ありがとう。でも、あんたのことも友達としてしか見られないから。ごめん」
真琴は俯いた。涙が頬に伝った。




