新一とカオスと競馬場(10)
競馬場からの帰り道。
カオスを見送った後、真琴と新一は二人になった。
すでに日は沈み、あたりは暗くなっている。
「あ、秋山さん、暗くなってきましたし、家まで送りましょうか?」
新一は立ち止まり、真琴に言う。
「ん? どうした? いきなり。いいよいいよ。大丈夫、一人で帰れるから」
真琴は大きく首を振る。
「あの、その。この間、秋山さんの綺麗な顔を見て恋に落ちたというかなんと言うか。秋山さんのことを考えると苦しくなるんです」
新一の言葉を、真琴は口をやや半開きにしながら聞く。
「だから、その。秋山さん。好きです。僕と付き合ってください」
新一は言った。じっと真琴の顔を見ている。
「あー、なんか、ごめんなさい。恋愛はまだいいかなぁ、っていうのもあるし、あんたをそうゆう対象として見てないから、ごめん。あんたは一緒に楽しく競馬をやっている競馬友達だし。今のところ、私の恋人はナリタブラリアーンよ。はは。あ、ごめん」
真琴は新一から目をそらし、少し俯く。
「いや、大丈夫です。こちらこそ、いきなり変なこと言っちゃってごめんさない。じゃあ、秋山さん、気をつけて、さよなら」
新一はそう言い残し、帰っていった。
真琴は家に帰ると、ベッドに放物線を描き倒れこんだ。
「あーあ、なんなんだよ、もぅ。こんなはずじゃあなかったのになぁ」
真琴は枕に頭を埋めて、呟いた。
『真琴のレース収支;マイナス7100円』




