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第14話:少女の願い

本日二話目の投稿になります。

前の話を読まれていない方は、一度目次に戻られるよう、お願い申し上げます。

※本人により語られる、サナラの過去の話がメインです。


 私の今までの十五年は、とても早く過ぎ去っていきました。


 決して数が多いとは言えませんでしたが、父の孤児院で暮らす子供達の中には、お友達と言える子達も居ましたよ。


 でも皆、一様に口を揃えて言うのです。

『早く大人にならないかなぁ』って。


 私は内心、首を傾げるような思いでした。

 私の時間は、いつだって飛ぶように過ぎていきましたから。


 気が付いたら四歳の時でしたかね。

 父が怖い顔をして、私に(いしゆみ)を渡して寄越しました。

 弩の弦を引くのは、幼い私には、まだ無理でしたけど、的当てだけは当時から得意でしたね。

 母は早くから読み書きや計算、この世の中の色々な物事を教えてくれましたし、時折私を優しく抱き締めてくれたのです。

 小さい頃の私は、ずっと頭部をすっぽり覆う羊毛の帽子を、被らされていました。

 これも母が編んでくれた物でしたね。

 ある夏の日、あんまり暑かったので帽子を脱いでいたら、普段優しい母に、珍しく叱られてしまいました。

 翌日には綿で出来た薄手の帽子を、買い求めてくれましたけど……。



 八歳になった私は新しく、父の知り合いに、体術や短剣の扱いを学ぶようになりました。


 この頃から父は時たま旅に出ては、帝都以外の町や村でも、孤児を保護して連れてくるようになりました。


 中には私を『半分エルフ』と呼んで蔑む子供も居ましたが、大半は後になってから、きちんと謝ってくれましたよ。

 中には私を好きだと言ってくれる男の子も居ましたが、八歳かそこらの私には、まだ恋とかそういうのが分からなくて、ただ戸惑うばかりで、具体的には何も応えてあげられませんでした。

 そのうち皆、違う女の子と仲良くなっていき、私のことは無かったかのように振る舞うのです。

 幼心にも不思議だったのは、人族の男の子は人族の女の子と、ドワーフの子はドワーフの子ばかりと仲良くなって、種族が違えば友達の関係にはなっても、恋人の関係にはなり得ないことでしたかね。

 一人の例外も有りませんでした。


 正直、私は悲しかったし、寂しかったです。

 私には、同じ種族の子が居ませんでしたから。


 私は、やりきれない思いをぶつけるように、勉強や武術の鍛練に打ち込みました。

 それまで以上に、です。

 子供らしい遊びも、この頃には、ほとんどしていませんでしたね。


 毎日のように母からは学問を、父からは弩を習いました。

 父の不在時に、ジャクスイさんから武術を教わるようになったのも、この頃のことです。


 ジャクスイさんは、先ほど言った私の体術と短剣の師匠でした。

 中でも、ジャクスイさんの生まれ故郷に伝わる『合気』という武術は、非力な私には、とても相性が良かったのです。


 日を追う毎に目に見えて上達し、技術的には『下手な大人より確実に上だ』と師に誉められるようになりました。



 そして夢中になって鍛練の日々を過ごすうちに、私は十歳の誕生日を迎えたのです。


 その日、私はアステール導師と出会いました。

 カインズさん、貴方と同じ理由です。

 父は主に神聖魔法を、母は多少ですが精霊魔法を使えますから、父からアステール導師に依頼して来て頂いたと聞いて、大変に意外に思いましたけど。


 儀式の結果、判明した私の魔法適性は、私を大変に落胆させるものでした。

 私には父と違い、神聖魔法の適性は無かったのです。

 私に備わっていたのは、水と風の属性魔法と、僅かながら母から受け継いだ、精霊魔法の適性とのことでした。


 それを知って、とても悲しかったのを、今でも鮮明に思い出せます。

 小さい頃から、父が人々を魔法で癒やすのを、こっそり見ていましたから、私も将来は神官になるのだ、と何の疑問も無く、そう思っていましたから。

 それが叶わない夢だと知ると、私の胸は張り裂けそうなほどに、ズキズキと痛んだのを忘れることが出来ません。


 ただ、私が両親から授かったこの体には、普通の人とは違った特異な魔力の流れが有るのを、アステール導師が見つけて下さったのです。

 すぐさま、冒険者ギルドに連れて行かれた私は、大きな鏡の前に立たせてもらいました。


 その鏡が映したのは、あまり好きになれないチビな私の姿だけでは有りません。

 召喚魔法……今は失われた魔法の適性が、私には備わっていました。


 なぜ私に、その様な力が有ったのかは、私にも分かりません。

 いいえ、未だに誰にも分からないそうなのです。

 とても不思議なことに誰に教わるでもなく、その鏡の前に立った時から、召喚魔法の呪文は、まるで以前から知っていたかの様に、私の脳裏に浮かぶようになりました。


 それ以来、今までと同様に鍛練を続けると同時に、召喚魔法を始めとして、着実に魔法の腕を磨いてきました。


 そして私は自らの意志で、十二歳から冒険者として活動をすることにしたのです。

 トリスティアさんとは、その時からのお付き合いですよね?


 当初は、父やジャクスイさん、ジャクスイさんの仲間の方々。時には大変に多忙なハズのアステール導師らと共に、迷宮に潜ったりもしました。

 普通、冒険者になるには冒険者養成所などを経て、十五歳になってからみたいですが、早すぎると反対されるかと思ったものの、返ってきたのは意外な反応でした。

 両親やジャクスイさんも反対どころか、むしろ諸手をあげて賛成してくれたのです。


 十五歳となった今では多様な依頼もこなし、Cランク冒険者として認められるほどになりましたが、最初は本当に大変でしたよ。


 父や、ジャクスイさんと行動していない時は、中々パーティ募集にも、拾って頂けませんでしたから。

 トリスティアさんが声を掛けてくれたのは、いつもそんな時ですよね。

 トリスティアさんや、そのパーティの方々には、今でも本当に感謝しています。


 生んでくれた両親は、もちろんですが、ジャクスイさんや、アステール導師、トリスティアさんらが居なかったら、今の私も有りませんでした。


 とても言葉で言い表せないほどに、感謝の気持ちで一杯なのです。


 つい先日、私にはとても嬉しいことが有りました。

 これは、わりと最近の話なのですが、ある時私は、さる(とうと)い方に請われて、この春から統合開校されることになった『学院』に、非常勤の講師として勤めることになりました。


 それがきっかけとなって、私は生まれて初めて同年代のハーフエルフの方に、巡り会うことが出来たのです。


 そして偶然にも、カインズさんと今こうして再会し、お話することが出来ています。


 正直、学院で再会したとしても、話しかけることが出来たかどうか分かりませんから、とても嬉しく思っています。


 カインズさん、私は貴方と仲良くなりたいのですよ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 最後に屈託の全く無い綺麗な笑顔を見せて、サナラさんは話を締めくくった。


 それまでの間、その場の誰も、サナラさんの話に口を挟まなかった。

 オレも含めて、穏やかに語られるサナラさんの話にすっかり引き込まれて、誰一人として口を開くことすら出来なかったのだ。


 トリスティアさんは、途中から目に涙を浮かべるどころか、今にも泣き出しそうな顔で聞いていた。

 ソホンさんも、黙って目を瞑り時折頷いて話を聞いていたが、今は労るような目線を静かにサナラさんに向けている。


 サナラさんの話が終わってからも、しばらく誰も口を開かない。


 結局、その沈黙を破ったのは、サナラさんだった。


「カインズさん。えーと、ダメ……ですか?」


 困ったように上目遣いでオレの顔を覗き込むサナラさんの表情は、いっそ暴力的なまでに可愛いものだった。


「ダメじゃないです! むしろオレから、お願いします!」


 気が付くとオレは、勢い良く椅子から立ち上がり、壊れたように首を縦に振って承諾していた。


 その途端、まるでパァーっと花が開くような笑みを、満面に浮かべたサナラさんの顔は、今まで見たどんな表情よりも可憐に思えたんだ。




 ……カインズ、十二歳、今回の人生ではこれが初恋です。


お読み頂き、誠にありがとうございます。


更新スピードですが、しばらく早めて参ります。


ご意見、ご感想等ございましたら、ご遠慮なくお寄せ頂ければと思います。


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