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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

7つの大陸に7人の魔王がいる世界の話。

賢者と養い子の恋愛未満な関係。

作者: 島田莉音


なんとなく書いてみました。

何も考えてません、ふざけてます。

よろしくどうぞ‼︎







「サナちゃんや」

「なんです?賢者様」



白髪の老人は、大きな石に座ったまま。

石の下で双剣を振るい続ける美しい少女に声をかける。

プラチナブロンドのセミロングの髪に、翡翠の瞳。

色白の肌に真紅を基調とした制服。

可愛らしい顔立ちをしている彼女は、その阿修羅のような剣技さえ振舞っていなければ必ずモテていただろう。

しかし、そうはいかない。

彼女は今、賢者を捕まえんとする王国の放った騎士達を斬り倒しているのだから。


「サナちゃんやい」

「だからなんですってばっ‼︎」


少女……サナは、騎士の顔面を蹴り上げて空に舞う。

そして、重力を重ねた双剣で最後の一人を仕留めた。



「いい加減、儂のために頑張らんでも良いぞい」



敵を全滅させてから言うことではないだろうと、普通の人ならば思うだろう。

しかし、この賢者、頭はいいのだがどこかズレてらっしゃるのだ。

サナはそんな賢者に向かって笑顔で答えた。


「嫌です」

「そーかい」

「はい」


先ほども言ったがこの賢者は、一般的にズレている。

だから、その一言で納得して岩から飛び降りた。


「いい加減、面倒になってきたのぅ」

「私が敵を倒してるから賢者様は面倒じゃないと思いますけど?」

「うーん。あ、そうじゃ」


サナの言葉をガンスルーして賢者は魔法を発動する。

辺り一面を照らす光。

サナが目を瞑って顔を逸らして数秒。

光が止んだ後、彼女はバッと振り返り激怒した。


「賢者様っ‼︎せめて光るとか一言、を………」

「成功じゃな」


サナはその姿を見て言葉を失う。

長かった白髪や真紅の瞳は変わっていない。

しかし、彼の姿は六十後半のヨボヨボお爺ちゃんから、ピッチピチの二十代(美青年)の姿に変わっていたのだ。

流石のサナだってその変化に驚いてしまう。


「あら、凄い。その顔なら金持ちのマダム達の燕になれますよ」

「………サナちゃんって地味に思考が残念じゃのぅ」

「別名、間男ペット‼︎」


残念なことに……賢者だけでなく、サナもどこかズレているタイプだった。

まぁ、育ての親に似たってことで。


「で?元々がジジィだから若くなればバレないと?」

「そうじゃのー」

「はぁ……っていうか、あの人の興味はなくなるでしょうけど、他の女性達からのアプローチが増えると思いますよ?逆に、イケメン過ぎて目立つってヤツです」

「…………oh……」


とか言いつつ、風の魔法で長い髪をザクッと切る賢者。

若干襟足が長い程度になった彼は、ゴキゴキと肩を鳴らした。


「ジジ臭いですよ」

「ジジィじゃし」

「というかコレからどうしますか?その姿なら、もうこの国にいても問題ないですけど。っていうか、若くなれんならとっとと若くなっとけや(怒)♡」


サナは「うふっ」と笑うがその目が笑っていない。

それはそうだろう。

こんな風に騎士と対立することになったのは……賢者がジジィだからなのである。

大事なことなのでもう一度。



賢者がジジィだから国に追われているのだっっ‼︎



いや、意味分からん?

説明しよう‼︎

この国の第一王女(中々にヤバい性格してる)はジジ専。

賢者に一目惚れ。

結婚しようと賢者を狙う(結婚したら監禁されるだろうと予測)。

賢者に育てられた孤児のサナは、育ての親を守るため、賢者と共に逃亡の日々が始まったのだった……(今ここ)。


「いや、若くなれるっていうか元に戻しただけなんじゃけど……まぁ、いっか」

「ん?どうかしました?」

「取り敢えず、儂らは夫婦って偽装するかの。そうすりゃ問題なかろう」

「えぇぇ……育ての親と偽装夫婦ぅぅぅ……?」


サナは怪訝な顔をするが、賢者様は気にすることなく彼女の腰に腕を回す。

見た目美男美女である。

余り違和感がない……というか無駄にピッタリだった。


「取り敢えず、儂の兄のところへ行くかのぅ。起きたみたいじゃし」

「えー。賢者様、お兄さんがいたんですか?」

「おう。双子だからなぁ」

「……………成る程…つまり、もう一人のジジイ……」



そして、なんだかんだと二人は賢者の兄に会いに行くことになった。

段々と大陸の中心に向かっていく二人。

サナは(え?これ、魔王の領地に入っちゃいません?)とか思いつつも、賢者はマイペースに進み続ける。



そして……辿り着いた古城を見て、サナは言葉を失った。





*****




「久しいな、ディオン」

「久しぶりだな、ディラン」


玉座に座る賢者様と同じ顔をした青年と、その膝の上に座ったメイドを見てサナは頭を抱える。

それはそうだ。

何故、メイドが膝の上?


「そっちの娘は?」

「儂の養い子だな」

「あ、サナです。よろしくどうぞ」


とか現実逃避しつつも挨拶はちゃんとする。

そういう教育はちゃんとされてるのである。

それを見て青年は笑顔になった。


「俺はディラン・ブラッドレイ。真祖の吸血鬼で、《第Ⅰの魔王》だ」

「…………うわぉ」

「で、私がロゼと言います‼︎ディラン様に手篭めにされちゃって、吸血鬼になっちゃったメイド兼お嫁さんです‼︎」

「そちらはそちらでなんか凄い‼︎」


サナのノリツッコミに、ロゼも「なんか同じ残念な匂いがします‼︎」と目を輝かせる。

そんな無駄に息ぴったりな二人を見て、双子の吸血鬼は苦笑した。


「で?どうしたんだ?」


賢者……ディオンは、これまでのことを話す。

なんとなく魔法の研究をしてたら、賢者に祭り上げられ。

ジジ専のクレイジー王女に狙われ、サナと共に逃げてきたことを。


「クレイジー王女って……」

「いや、あの方は本気でクレイジーです。まぁ、ジジ専なのは許すとしましょう。ジジイハーレム作って、ジジイ相手に色欲狂いなのも、まぁ許すとしますよ」

「…………いや、許さない方がいいと思うぞ?」


ディオンは苦々しい顔で言うが、サナはそれをガンスルー。

そして、思いっきり拳を握り叫んだ。


「でも、たかがジジイを手に入れるために一家根絶やしにせんとするのはアウトです‼︎」

「「それは普通にアウトだな(ですね‼︎)」」


ディランとロゼは思わず同意してしまう。

どうやら、ジジイのためなら見境なくなるタイプらしい王女。

ディオンも狙われて堪ったもんじゃなかっただろう。


「まぁ、とにかく。俺の元にいる限り、俺が守ろう。安心しろ」

「すまんの、ディラン」

「構わないさ。大切な弟のためだからな」


双子は同じ顔を見合わせて笑い合う。



なんかちょっと会話の内容が残念だったけど、見た目は綺麗だから……感動的な場面だと勘違いしそうだった。





*****





それからの日々は、まぁ至って平和(?)だった。



サナは今まで通り、研究三昧で放置すればするほど衣食住を忘れる賢者ディオンの世話をする日々。

一応、城に置いてもらっているのでメイドとしても働いていて。

時々、ディランの友人(?)らしき魔女姫様とはなし合いをしているが……とても普通(?)の日々だった。



いや、少し変わったところがある。






「ちょっと、ディオン様。離して下さいぃ〜……超邪魔なんですけど?」

「むーん」

「何がむーんですか」


ディオンはサナの反論を無視して、彼女を抱き締めベッドに横たわる。

サナは呆れたような溜息を吐いた。


「どーしたんですか?」

「………別に?」

「別にで抱きつかないでしょーに。ほら、まだ洗濯物が終わってないんですから離して下さい」

「ヤダ」

「………ヤダって子供か‼︎」


サナのツッコミに、彼はクスクスと楽しそうに笑う。



そう……ディオンの言動が幼くなってしまったのだ。



言葉遣いだってジジ臭かったモノではなく、若者……よりは若干幼い喋り方になったし。

行動もジジ臭くない。

加えて、スキンシップが多くなった。

甘やかすように頭を撫でたり、確かめるように手を握ってきたり……温もりを分け合うように抱き締めてきたり。

単に賢者時代の言動の方が、作り上げたモノだったのだから……元に戻ったという表現の方が正しいのだが。

それをサナは知らないし、ディオンも言うつもりはない。






まぁ、なんだかんだで。

サナは育ての親が相手だというのに、何故か無駄に息苦しくなり始めていた。



彼女は自身の胸を押さえて首を傾げる。

こんな動悸は初めてで……後で医師に見てもらった方がいいかもしれないと考える。


「どうしたんだ?サナ」

「……ディオン様、呼び捨てやめい」

「なんでだよ」

「なんか、慣れないんです……」


サナは若干顔を赤くして、目を逸らす。

それを見たディオンはニヤリと笑う。


「なんだよ。オレのこと、意識してんの?」

「はぁっ⁉︎」

「サナ、可愛い」

「っっっ⁉︎」


〝可愛い〟という言葉だけで、サナは顔を真っ赤にして絶句する。

まぁ……残念娘であるが、実のところ男性免疫ほぼ皆無で。

育ての親であろうが、無駄に若くなりやがったディオンに迫られたら、顔を真っ赤にしてしまうのは仕方ないのだ。


「ちょっと…ディオンさー」



チュドォォォォォォォォォン‼︎



「「……………」」


グラグラと揺れる古城。

二人は顔を見合わせて、勢いよく部屋を飛び出した。

ディランと魔女姫のはなし合いでは、どんなに激しくても一度も古城自体に攻撃ダメージがいったことがない。

つまり、この振動は何者かから襲撃を受けているということなのだ。


「ディラン‼︎」

「ディラン様‼︎」


二人は、古城の門の前に立つディランの元へと駆け寄る。

彼の前には、距離を置いて軍隊がズラリと並んでいて。

その軍隊の前には……燃えるような赤髪の美女がいた。


「「げっ」」

「やっぱりっ……ここにいたのね、サナ‼︎」


美女は般若の如き顔で叫ぶ。

そんな彼女を見て、ディランは嫌そうな顔をした。


「もしかして……」

「クレイジー王女ことデイジー王女です」

「そのまんまだな」


思わず呟くディランは、溜息を吐きながら彼女達を睨む。

そして、城の主人として彼女らに問うた。


「ここが我が城だと分かっての狼藉か。なんのつもりだ」

「貴方には関係ないわ‼︎わたくしが用があるのはそこにいる娘ですの‼︎」

「だからと言って人様の家を攻撃するバカがいるか」

「その女が悪いのよ‼︎賢者様を連れて逃げるからっ……‼︎わたくしがどれだけあの方を愛しているかっ……‼︎賢者様がどれだけ、わたくしを愛してくれているかっ……‼︎なのに、サナはわたくし達を引き裂いた‼︎わたくし、頑張ったのよ⁉︎賢者様の情報が集められなくて……仕方なくサナらしき人物の情報を沢山集めて‼︎それでやっと、やっと辿り着いたの‼︎さぁ、サナ‼︎賢者様を出しなさいっ‼︎」


ボロボロと泣きながら、叫ぶ王女。

そんな彼女を、とんでもなく冷たい視線で……三人は見ていた。



「「「…………………」」」



サナとディランは、ゆっくりとディオンを見つめる。

彼は無表情で首を振った。


「いや、ないわ。愛してねぇーわ。あの女のモンになるくらいなら、サナと結婚する」

「…………なるほど……弟を頼んだ。サナ殿」

「えっ⁉︎まさかのお兄さん公認なんですか⁉︎」

「というか、よく兵士達は従っているな?」


マイペースに話を変えるディオンの言葉に、サナは「いや、何言ってんですか……」と胡乱な目になる。

自分がいた国の事情くらい把握しておいて欲しいというのが本音だ。


「兵士が彼女に従っているのは、王族だからか?」

「違いますよ、ディラン様。ジジイが関わらなければ彼女、素晴らしい指揮官なんですよね。ウチの国の国防はデイジー王女に依存してるんで……だから、大目に見られてるというか……」

「…………あぁ……」


なんかもう色々と混沌カオスってきた現場に、三人は諦めにも似た顔になる。

(情緒不安定型)暴走系ジジ専王女は、サナを睨んで言う。


「サナ‼︎賢者様をどこに隠したのっ‼︎」

「コレです」


もう面倒になったサナは、王女の言葉に従って賢者を指差す。

しかし、彼女は納得しない。


「何言ってるの‼︎そんな若い男、賢者様な訳ないでしょっ⁉︎」

「ところがどっこい。若返ったよ、賢者様ってヤツです」

「っっっ⁉︎」


王女はそれを聞いて絶句する。

あの皺枯れて、棺桶に片足突っ込んだような儚さを兼ね備えていた賢者が……あんなピチピチな男になっているなんて。

信じられなかった。

信じたくなかった。


「うっ……嘘よっ‼︎だって、賢者様はヨボヨボだったもの‼︎」

「いや、こっちが本当の姿だから。っていうか、お前のこと愛してないし」

「………声が…声が似てる……?いや……賢者様の声が若くなって……嘘……嘘よ、嘘だと言ってよっっ‼︎」


泣き崩れる王女に、ディオンはどこ吹く風でサナを後ろから抱き締める。

そして、大きな溜息を吐いた。


「とんでもなぁーく、面倒なんだけど……送り返すか」


ディオンは賢者らしく、転移の魔法を構築していく。

そして、彼女達に向かって微笑んだ。


「さよ〜なら〜」


シュンッ‼︎と光と共に消え去る王女と軍隊。

なんかもう場の収まりがつかないとはこんなことを言うんだろうなぁ……と三人は悟りの境地に達しそうになっていた。


「………取り敢えず。お前が原因なんだから、城の修繕頼んだぞ」

「分かった」


ディランはそう言い残して疲れた足取りで城の中に戻っていく。

本当、なんでこうなったのだろうか?とサナとディオンは遠い目になっていた。


「…………取り敢えず、ディランもオッケー出したし。結婚するか、サナ」

「…………わっつ、どー、ゆー、せい」

「実は元々、嫁にする予定で拾っていたり」

「聞いてないんですけどっ⁉︎」

「言ってないからな。いい加減、独身暮らしが寂しかったんだよ。後、小さい頃から俺好みに育てようかと……」

「逃げさせて頂きます」

「逃がさん」


逃げようとするサナをディオンが捕まえて、無理やり自分の方に向かせる。

その顔はとても、いい笑顔で。

サナは顔を引攣ひきつらせた。


「まぁ、この姿はサナも満更でもないみたいだし?覚悟しろよ?必ず花嫁になることを了承させてやる」

「……………あのマイペース賢者様が、一応、私が納得するまでは待ってくれるスタイルなんですね……明日は槍でも降るんですか?」

「まぁ、待てなくなれば実力行使に出る」

「やっぱりマイペースでした‼︎」




かくして、一言で言えば光源氏計画を決行されて育てられていた(と知った)孤児の少女は、ジジイだと思っていたら吸血鬼でぴちぴち美青年に戻った育ての親(賢者)に捕まえられてしまったとさ。







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