後編
あまり実の無い話ですが。
真っ暗な海をフェリーは進む。
長い船旅、家族にメールを打ったり、夕食、仮眠をとったりして過ごす。
思いがけず北海道上陸・・・私はかの地での旅の算段を船上で考える。
行きたいところは、富良野、札幌、小樽と西南のルートに定めた。流石に道を一周などという、無謀なことは考えなかった。
夜の函館に上陸、気持ちはハイテンションのまま北上する。
北海道はでっかいどう、まさにその通り。
広々とした道を進んでいると空が白け、朝が訪れる。
まずは登別で温泉に入りたい、漠然とそう思った。
車は次第に山間に入ると、かなりの恐怖を覚えた。時期は4月上旬、道の両脇に雪が見えはじめた。
愛車RVRはノーマルタイヤのまま、まさかこんな時期でも雪があるとは、九州男痛恨の判断ミス、スピードを落とし、そろりそろりと車を走らせる。
あっ!
山道のカーブに差し掛かり、タイヤがスリップする。
わわわわわわわ。滑る、滑る。慌てる私。
車はちょっぴり対向車側へとはみ出し、なんとか戻った。
しまった。大丈夫か、この旅・・・しかし、行くと決めたのだ。とりあえずケセラセラの精神で乗り切ることにした(笑)。
登別の温泉に辿り着き、ひとっ風呂・・・でも、こんな時ってソワソワする。
次の場所へという気持ちが高まり、早めに温泉を後にした。
それから富良野へ、ひたすら車を走らせる。
雪も見られなくなり快適に旅は進み、恐怖も止んだ頃、富良野へと入り再び山に近づくと、やはり雪景色となってくる。
だが、止まらない、はーはん!
「北の国から」のロケ地麓郷を巡り、丸太小屋など見学する。
気分はまさに五郎だ。
「まだ、子どもがたべてるでしょうがっ!」
一人名言を吐きつつ、白い息が消えていく。
雪深い森の辺りで「るるるるるる」と、キタキツネを呼ぶふり。
近くに安いペンションを見つけたので、ここで一泊することにする。
チラホラ雪が舞ってきた。
頼む。積もりませんように。
久しぶりにゆったりと、おいしい夕食に舌鼓、あったかいベッドでぐっすりと寝た。
朝食の時間、共同の食卓にテレビがあり、ビデオデッキがあり、その横に並ぶのが「北の国から」・・・いいね~。
店主にお礼を言い、記念写真をパチリ、英気を十分に養い、車へと乗り込んだ。
幸いのピーカン天気、だけど、まだ少し雪が残る富良野を後にした。
どこまでも続くような、長い道をひたすら走らせ、札幌へクラーク博士がいる羊ヶ丘展望台に到着、ソフトクリームを食べ、みやげの定番「白い恋人」を購入する。
パチ屋を発見、そこで私の好きな台「デビルマン」を発見・・・しかし全く回らない、後いろいろと打ち散らかして、結果はしょんぼりだった。
すすきのに行き、味噌ラーメンを堪能、おそらくビジネスホテルに宿泊し、朝、テレビ塔や時計台(びっくりするぐらい小さかった)を見て、小樽へと向かう。
小樽では、海鮮丼を食べ、石原裕次郎記念館へ。
昭和の大スターのカッコ良さに胸を躍らせる。記念館を出ると・・・思考は戻るか(本州)になった。
車は再び函館へ。
青森に再上陸し、今度は太平洋側から戻ろうと決める。
さあ、後半戦だ!と思うもなんだかやる気が起きない、そうだ!富士山を見ようと、車を爆走させる。10時間近く運転したり、のんすとっぷ・・・いや~若いって素晴らしい(笑)。
道々のパチ屋には挨拶程度で「CRイタリアン・ドリーム」など軽く触る。
道中、高速に乗り、パーキングで車中泊をして、山梨県へと入る。
途中のパチ屋で新台の「CRイエローキャブ」を打つ、回るも諦め、何故か羽根物「レレレにおまかせ」を打つ始末。
夜、青木ヶ原樹海の看板を見、鳥肌をたてていたら、しなびたラブホを発見し、そこで一夜をとる。
中に入ると、本当に古い建物で、古いちゃぶ台みたいなテーブルとテレビしかなく、枕元にぽつんと置かれたコン〇ームが侘しさを誘った。
エロケーブル番組つけといてよ~!男の虚しい心の叫び。
仕方ないのでふて寝だ。
翌日、朝焼けの中を車は走る。
次第に見えるは、日本一の山。
「眺めのいい場所」と書かれた看板を発見、その駐車場に車を停めた。
富士山を見る。
ああ、これが生の富士山、不思議と胸がアツくなり、思わず車のボンネットに乗った。ぺこんと凹むのも構わず、胡坐をくんで山を見る。
いい、いい。
思わず涙腺か緩む・・・雄大な富士山を見ていると、どーでもいい、そう、きっと、なるようになるさと、ふっきれた気持ちとなった。
じーっとただただしばらく見続けて、心は決まった。
「帰るか」
桜の花びらがチラリ舞う。
こうして、私は弾丸となりて家路に着いたのであった。
勿論、道々のパチ屋によって、まあまあやられたのは言うまでもない。
おしまい
読んでいただき、感謝です。




