表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、中身はアホのこのままでした【連載版】  作者: 空飛ぶひよこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

42/52

アホのことヒロイン5

「……今日は、なんかちゃんとしてるな、お前」


 いつものように一緒にお昼を食べてたら、要からこんなことを言われてしまった。


「あれ? 分かる?」


「お前が、そんなピッシリしてるの見たの中等部以来だぞ」

 

 ……まじか? そんなに違う?

 そういやスケバンマッチョさんにもなんか驚かれたけど。


「いやあ……実は朝、済木姫乃ちゃんが寮の部屋押しかけて来て、直してくれたんだよね」


 私の言葉に、要の表情が険しくなった。


「ちっ……あの変態女、俺が女子寮いないと思って、そういう手段に出やがったか。明日の朝は、いつもより早めに出ろ。入り口まで迎えに行ってやるから」


「い、いいよ! そんなことまでしてくれなくても! ……姫乃ちゃん、そんな悪い娘じゃないし」


 確かに、ドエムだし、赤いピンヒール履かされそうになったけど、身嗜み整えてくれたし、話が通じないわけでもない。

 それに何より、彼女は数少ない転生者仲間だ。良好な交友関係築けるなら、それにこしたことはない。


「……お前、衆人環視の状況で、ドエスに調教するとか言われて、よく平気でいられるな。ああいう変態は、はっきり拒絶しねぇとつけ込んでくるぞ」


「いやあ……でも、まあ、精神的な被害はそこまでないし」


 ……むしろ、要のよだれ掛け強制のが、精神的にショックだったとは黙っておこう。そして今日のハンバーグはけして、制服に零さないぞ……! けして!


「お前が気にしねぇなら、いいけどよ……って、何さり気に、つけ合わせの野菜、俺の皿に乗っけてやがる。全部食えよ」


「……だって、甘いニンジンのグラッセも、シイタケのソテーも苦手なんだもん。良いでしょ? 要、これ好きじゃん」


「たく……サラダはちゃんと食えよ」


 やった……! どうしても駄目なんだよねー、こればっかりは。

 でも残すのも心苦しいし、要が食べてくれてよかった。


「ーー何やってるのよ、貴女は」


「……っ!」


 く、首元に生ぬるい息がかかったー!


「ひ、姫乃ちゃん」


「野菜を好き嫌いするなんて……本当、女帝様らしくなく、調教がいある人ね。貴女は」


 け、気配なかったよ! いつの間に後ろにいたの!?


「サラダで野菜取るくらいは意識してるみたいだけど、それだけじゃビタミンCが不足してるわ。生だと一見多く見えても、火を通すとかなり少なくなるのよ。それに、ニンジンは加熱した方がより栄養が取れると言われてるの。シイタケをはじめとしたキノコはローカロリーで食物繊維が豊富。ちゃんと食べなきゃ駄目じゃない」


「く、詳しいね、姫乃ちゃん」


「これくらい常識よ……貴女は見た目だけは私の理想そのものなんだから、その美貌だけはちゃんと維持してもらわないと困るわ。その白くて綺麗な柔肌を、不適切な食生活でニキビだらけにしたら怒るわよ」


「……おい、何勝手に、綾華の隣に座ろうとしてるんだ、変態女。ここはお前が来ていい場所じゃねぇぞ」


 そこでようやく要を視界に入れた姫乃ちゃんは、器用に片眉を上げた。


「あら、貴方は生徒会長の癖に、まだ友人も少ない孤独な編入生の相席も許さないくらい狭量なの?」


「俺の器の問題じゃなく、規則だ。ここは生徒会用の特別席。一般生徒が使うことは許されてない」


「……それじゃあ鳳凰院さんは、どうしてここにいるのよ。権力があっても、一般生徒のはずでしょ」


「綾華は、俺が任命した生徒会庶務だ。お前と違ってな」


「そう……制服が違うと思ってたら、そんなことなってたの……面倒ね」


 ……おかしいな。これ、うっかりフラグが立ってもおかしくない状況なのに、要と姫乃ちゃんの声にはとげとげしさしかないぞ?

 こう、ブリザード吹き荒れてる感じするぞ。

 これ、一応メインヒーローと正ヒロインの会話だよね?

 甘さが全くないにもほどがあるんだけど……出会ったばかりの時はこうなんだっけ?


「仕方ないわね……ここは私がいったん引くわ」


 結局折れたのは姫乃ちゃんの方だった。

 ……ホッ、よかった……これで平和にランチの続きが……。


「だから、鳳凰院綾華。私は、明日は貴女用に栄養バランス取れたお弁当作って来てあげるから、それ食べなさい」


「………へ?」


「……ちょっと、待て。変態女。お前何を……」


「食堂じゃなければ、別に規則も何もないでしょ。美容効果抜群のお弁当用意してあげるから、楽しみにしてなさい」


「ちょ、姫乃ちゃん、待………」


 って、足速っ! 言うだけ言って、さっさどっか行ってしまったよ! 私、何も返事してないのに!

 ……どこまで、マイペースなんだ。姫乃ちゃん。

 しかし、困ったな。


「……おい、綾華。なんか一方的に言い捨てていったけど、あんな変態に付き合ってやることないんだからな」


「……い、いや、そうも行かないでしょう。お弁当作ってくれると言ってたし」


 ……お弁当、無駄にさせるのも、悪いし。

 しかし、一人で行くのは怖い……そうだ!


「要も、明日お弁当にして、三人で食べようよ! それなら……」


「ーー絶対いやだ」


 ……って、あれ? 要さん?


「……そうやってお前は、俺と変態女くっつけようとしてやがるんだろ。俺は絶対あいつはごめんだからな」


「え? いや、そういう意味じゃなくて……」


 姫乃ちゃんが要を幸せにしてくれると思わないし、ただ純粋に要にもついてて欲しかっただけなんだけど……。

 てか、要すごく嫌そうな顔で、シイタケ口に入れてるんだけど、もしかしたら嫌いだった? 嫌いなのに食べてくれてるの?


「俺は行かねぇから……お前は勝手にしろよ。誰と昼食食べるのも、お前の自由だ」


 ーーどうしよう。

 今、なんか空気中に乙女ゲーの選択肢が見える気がする。


 明日の昼食は?


 済木姫乃と弁当を食べる ←

 竜堂寺要と食堂で食べる


 こ、こう言うの! ……ど、どっちが正しい選択肢だ……?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ