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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、中身はアホのこのままでした【連載版】  作者: 空飛ぶひよこ


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アホのこと生徒会7

「愛那ちゃんってば……むっつり」


「な、何でですか! 当然の心配でしょう!」


 ……いやー。放課後、高校生の男女が同じ部屋で二人で作業してるってだけで、いかがわしいこと想像するのは、十分むっつりだと思うよ? エロ小説読み過ぎじゃない?

 顔を真っ赤にして、狼狽えていた愛那ちゃんだったが、咳払いをしてシルバーフレームのメガネをくいっとすることでどうやら少し落ちついたようだ。(あ、言ってなかったけど愛那ちゃんはメガネキャラです。腹黒全開シチュではメガネ外してドヤ顔?のモーション出てくるアホの子です。……ゲームの会話シーンのモーションは限られてるものだけど、冷静に考えると突っ込みどころ満載だよね!)


「……だって貴方達は、その……交際しているわけでしょう?だったら私の心配も当然……」


「え? 私と要が付き合ってる? ないない」


 なんだ、愛那ちゃん、そういう勘違いしてたのねー。まあ、私と要は自他共に認める仲良しさんですから、勘違いされるのも仕方ないけど。

 甘い、甘いよ。愛那ちゃん。


「私と要はだね……男女の仲だなんて、いつちぎれるか分からない脆い絆よりも、硬い絆で結ばれてるのだよ!」


 だって私は飼い主! 要はわんこ!

 カップルの関係より、ずっと強固な絆で結ばれてるに決まってるじゃないか! ……少なくとも、今はまだ、ね。まだ、姫乃ちゃん、来てないから。うん。


「………………」


 って、なんで要さん、黙ってるの?

 愛那ちゃんもなんか呆れたような顔してるけど。


「……それは、そうでしょう。だって貴方達は婚や………むぐっ」


「……こいつに、よけいなこと言うな、斎ノ原。こいつだけ、何も聞かされてないから」


「……っ嘘でしょ! 結構大々的に公表されてたじゃないですか。学園の生徒なら、誰でも知ってますよ!」


「………鳳凰院の親父さんが暴走した結果だ。家同士で取り決めができたから、後は外側から埋めるつもりらしい。本人には事後承諾でな」


「……じゃあ、会長も同意されてないんですね?」


「…………………………」


「……あ、はい。理解しました。……会長もまた、よりによって、どうして」


「うっせぇ……仕方ないだろ。ずっと一緒にいたんだから。今さら隣にいない未来なんて想像できねぇよ」


「……私、今まで結構会長にコンプレックス抱いていたんですが、なんか今初めて、会長を身近に感じました」


「……そりゃ、どーも」


 ……なんか要と、愛那ちゃんコソコソ話してるけど、自分達ばかり仲良くなってずるくない?

 てか、ちょっとさみしいんですが。

 ちょっと、要、愛那ちゃん構ってないで、私構いなさい!

 要に対する私の熱い想いが一人相撲みたいで、さみしいじゃないか!


「ーー分かりました。会長を信じて、私も持ち帰りで業務をすることにします。無自覚なイチャつきにあてられたくないですから」


 あれ、今の流れで、何故か愛那ちゃん納得してくれた?

 もしかしなくても、要から愛那ちゃんに私との絆の深さを語ってくれた?

 ……ぬふふ。だったら、私にも聞こえる声で言ってくれれば良いのにさー。もー、うちのわんこは、恥ずかしがり屋さんなんだからー。


「ーーただし! 万が一、億が一の事態に発展しないよう、私が定期的に抜き打ちチェックしに行きますから、そのつもりでいて下さいね!」


 ……って、ええー!




 そんなわけで、放課後の生徒会室での業務は、基本的に私と要が二人で行うようになった。

 授業終わりに、三人はいったん生徒会室に来て、持ち帰りの業務を提出後、要から先日の業務についての指摘を受けて、また新たな業務を持って帰るというシステム。放課後だらだら皆でするよりも効率が良かったらしく、この新システムは周囲からなかなか高評価である。……まあ、要の作業分配能力があってこそできる技だけど。

 部活に集中している武士ニキはそれ以外では生徒会室に来ないけど、宣言した通り愛那ちゃんは抜き打ちでチェックに来るし、そのタイミングに合わせてウサギ会計も生徒会室を尋ねてくる。

 ……だけど、実はこの時間がとても楽しみだったりする。


「ーー変なことはしてませんね!」


「やったあ! 愛那ちゃんだ! 今日のおやつは何?」


「だから、愛那ちゃんと呼ぶのはやめなさいと……今日の差し入れは、先日オープンしたばかりの人気店、オンディーヌのクッキーです! ふふん、どうせ女子力低い貴女は聞いたこともないお店でしょう」


「なんで男である愛那ちゃんが私に女子力で勝ってドヤ顔してるのか分からないけど、わあい! 愛那ちゃんが持ってくる差し入れはどれも美味しいんだよね。あ、愛那ちゃん紅茶入れてよ」


「……差し入れ持って来たうえに、なんで私がいつも紅茶入れなきゃならないんですが」


「だって、愛那ちゃんの入れる紅茶すっごく美味しいんだもん! 今までうちの高井さんが入れる紅茶が世界一だと思ってたけど、愛那ちゃんには負けるね」


「ふ、ふん……まあ、私の紅茶の淹れ方は、本場イギリス仕込みですからね。先日私が持って来たせっかくのアールグレー台無しにされるのも、癪ですから淹れてあげますよ」


「あ、副会長ー。俺のも淹れてー」


「……海棠。貴方は、いちいち私が来る時見計らって生徒会室来ますね。女の子とのデートはどうしたんですか」


「だって、俺が女の子と行くカフェの紅茶より副会長の紅茶のが美味しいし、俺とデートしてくれる女の子より、綾華ちゃんのが美女なんだもん」


「全く、貴方は本当に調子が良いですね。……あ、クッキーですが、明日、大河にあげる分は残しておいて下さいよ。先日、報告の時に空の缶見て、切なそうにしてましたから」


「……正直、大河があれほど甘味好きとか意外だったな」


「それを言ったら、私には会長が存外食べてるのも意外ですけどね」


「……甘いもの好きな奴に、付き合って食べてた結果だ」


「……ああ、なるほど」


 愛那ちゃんって、腹黒というか、アホのこと言うか……ツンデレ?

 ちくちく嫌味は言われるけど、差し入れと紅茶の美味しさでプラスマイナスプラスです! 愛那ちゃん、素敵!

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