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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、中身はアホのこのままでした【連載版】  作者: 空飛ぶひよこ


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アホのことわんこ3

 ま、前も武宮の話した時に思ったけど、なんか要、武宮やたら嫌ってない? あれですか? わんことしての本能がキャラかぶりを許せない感じですか?

 ……個人的には、武宮のわんこと要のわんこはベクトルが違うから、別に同時でも良いと思うんだけどなー……まあ、前世の私の好みドストライクは武宮のわんこですが。(やっぱりツンデレわんこより、デレデレな忠犬がよいよね)


「……で、武宮は、お前の前世の知識通りの反応だったのか?」


「え? ……ああ、うん、まんま! 幼い頃、いじめから救ってくれた斉木姫乃ちゃんにベタ惚れ! ……これはこの世界の斉木姫乃ちゃんがどんな娘であれ、間違いなく来年の五月に武宮ルートは確定だね!」


「……そうか」


 ……おんや? 要、なんか少し機嫌が直った? え、今の流れで何で? そんなに、正規乙女ゲーム的展開期待してたの?

 ……なんか、わからないけど、取り敢えずさっきまでの要は怖かったから、ちょっとホッとしたや………。うう。くわばらくわばら。要は怒らせるもんじゃないね……と言いつつ、何だかんだでしょっちゅう怒らせてる気もしなくもないけど。


「武宮に関しては、お前の想定通り動くだろうことがわかっただけで、今後の対策は練りやすくなったな。……俺がメイン攻略対象? とやらで、当事者になる可能性が高いからには、斉木姫乃の情報は多いにこしたことはねぇ。綾華、よく聞き出した。褒めてやる」


「何でめちゃくちゃ上から目線で言われてるのか分からないけど、そうでしょ? そうでしょ? 私が武宮に接触したの、正解だったでしょ?」


 根本にあったのは、単にわんこと戯れたいという願望だったけど、要的にも私の行為は有益なものだったのはず。

 なんせ要は、「箱庭の虜囚」のメインにして、人気ナンバーワンヒーロー。この世界の斉木姫乃ちゃんと関わる確率も、ラブフラグが立つ可能性ももっとも高いはず!

 で、要が斉木姫乃ちゃんに恋心抱くことになったら、一番ライバルになりそうなのは、6歳の頃から姫乃ちゃんを想い続けてる武宮のはず……!

 そう、私が武宮に接触さかさるすべては……すべては要の未来の為なんだよ! ……結果的には!


「そうだな……だから、それが分かった以上、もうお前が武宮に接触する必要もねぇわけだな?」


「え」


 ……え、ちょっと待って。ちょっと待って。何でそうなるの?


「私まだ武宮に話したいことが……」


「何を話す必要があるんだ?」


「えと、その……恋の相談に乗ってあげるとか?」


「よけいなお世話にもほどがあるだろうが、アホ。んなもん、武宮だって求めてねぇよ」


「で、でも、やっぱりここは、同じ斉木姫乃ちゃんのことを知ってる同士で情報交換の必要が……」


「武宮が斉木姫乃と交流したのは、6歳の頃の三ヶ月のみ。しかも当時斉木姫乃は幼稚園に通っていた為、接触したのは公園でたまたま遭遇した数回だけだ。そんな状態で、武宮が斉木姫乃に対して有益な情報を持ってるとは思わねぇな」


 ……うう。正論。確かに、これ以上要にとっては、私を武宮に接触させるメリットはない。

 要に関してはない、けれど………。


「……いーじゃん。ちょっと交流の場を設けるくらい。たまに私も、わんこと戯れて癒やされたいんだよ……」


 ーーええ、認めましょう。完全に私欲だと。

 どうしても私は前世の最推し・最萌えキャラとの接触を諦めきれないんだ……!

 わんこキャラは一途が鉄則。だから武宮は、斉木姫乃ちゃんにだけ懐くべきであり、いくら接触しても私に懐くことはないのは重々承知してる。

 で、でもさ! ちょっと恋愛相談のりながら、たまーにつついたりして、わんこが一喜一憂する姿を堪能するくらい許されるはず……って、要! さっき以上に顔怖くなってるんですけど!


「え、えと……要、さん?」


「……綾華……てめぇ……」


 次の瞬間ぐっと襟元を掴んで引き寄せられ、思わず殴られる!? と思ってしまった。

 それくらい、要の顔は恐ろしいことになっていたから。

 何でこんなことになったのか分からないまま、反射的に目を瞑った瞬間、聞こえてきた声は完全に予想外のものだった。


「…………………わん」


「……へ?」


 消え入りそうな低い声と共に、ほっぺたに感じた生温いぬるりとした感触。

 何が起こったのか分からず、唖然とする私を、乱暴に突き放すと、要は苦虫を噛み潰したかの表情で吐き捨てた。


「アホが………てめぇの犬なんて、一匹で十分だろ。ろくに世話もできてねぇ癖に、新しい犬欲しがってんじゃねぇよ」


 そしてぽかんと口を開けたままの私を置いて、早足で先に行ってしまった。


 ーーえーと、ちょっと待って。全然脳が追いついてない。状況を整理しよう。

 さっきの生温い感触……あれは、要の舌、だよね? 要、私のほっぺ舐めましたよね?

 で、謎の「わん」と鳴き声と、今の要の言葉から察するに……。


「え………要、飼い主である私を、同じわんこの武宮から取られると思って嫉妬した?」


 ……なにそれ。

 なにそれなにそれなにそれなにそれ!


 ーー要、超かわいいじゃん!!

 わんこ扱い不本意そうにしていながら、裏ではめちゃくちゃ私に懐いてるじゃん!!

 ……やばい。顔がにやける。うわあ。どうしよ。すっごく嬉しい!

 そうだよねー。いくら成長して、口悪くなっても、要は私のわんこのまんまだもんね。だって、もう出会ってから五年だもんね。ふふふ。

 馬鹿だなあ。要。武宮は確かにかわいいけれど、所詮は人のわんこ。私にとって一番大切でかわいいわんこは要に決まってるのに。うふふふ。焼いちゃって。かわいいなあー。愛おしいなあー。うっふふふふふふ。


「……あ、でも、青虫触った手で、触ったほっぺ舐めちゃ駄目じゃない? ばっちい」


 ……あとで要には、うがい薬を贈呈しよう。

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