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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、中身はアホのこのままでした【連載版】  作者: 空飛ぶひよこ


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アホのことわんこ2

「……姫乃が……この学園に……?」


 ーーなんていうことでしょう。

 私と対面した瞬間から、ずっと不機嫌そうに顔を顰めていた武宮京成。身長も高くハーフで彫りが深いこともあり、美形ではありますが、とても近付きにくいオーラを放っておりました。

 それが匠(私)が、斉木姫乃ちゃんが編入する可能性を示しただけで、一気に雰囲気が切り変わりました。

 頬は薔薇色に染まり、青い目は期待できらきらと光り輝いております。現実には存在しませんが、パタパタと勢いよく触れる尻尾が見えるかのよう。まさに、匠の技。

 ーーくうっ! イイ! これよ、これ! このモードの武宮が見たかったのよ! やっぱりわんこはイイ!

 さて、もうちょい武宮を揺さぶっていみるかね。


「それで物は提案なのだけど………貴方が望むのなら、私が鳳凰院家の情報網を使って、斉木姫乃ちゃんの情報を集めてあげても………」


「……あ」


「?」


「肩」


 何だよ……せっかく女帝様モード最高潮だったのに、急に。

 一度女帝様モード解除すると、戻るのなかなか大変なのに。

 だいたい「肩」ってどういう………。


「ーーーーっ!」


 次の瞬間私の体はカチンと固まった。

 右肩の上に見えたは、明らかに制服の色とマッチしていない緑の塊。

 うねうねと動きながらも、私の視線に気がついたのか「やあ!」とばかりに顔をあげたこやつは………。


「うぎゃあああ! 青虫いいいい!」


 無理無理無理無理無理! 私、虫は駄目! いや、見る分は黒光りしてるGじゃなきゃまあ平気なんだけど、体に触れたり密室で二人……というか一人と一匹だけになったりするのは本当無理ぃ!


「やだやだやだやだ! 武宮とってえ!」


「……いや、俺も、青虫は……」


「うわん! このわんこ、わんこの癖に役立たずだあ!」


 ワイルドわんこみたいな外見してるのに、なんでこう言った時役に立たないんだよぉお! 虫が出やすい、植物たくさんの温室根城にしてるくせに……って、青虫さん首! 首の方に上ってくるのやめてぇえ! やだやだやだやだ、このままじゃ、直に肌に……肌に来ちゃう!


「……助けて、要っ!」


「ーー綾華!」


 咄嗟にここにはいない幼なじみの名前を叫んだ瞬間、温室の扉が開いた。

 え、ちょっと待て? 何このタイミング? 要、実は某パン顔ヒーローの生まれ変わりだったりする?


「お前の叫び声が聞こえたから、駆けつけてみたら……こんなとこで一体何してやがったんだ」


 息を切らして駆けつけた要の姿が見えた瞬間、安堵で視界が霞んだ。同時にずるりと鼻水もこぼれそうになるが、何とか気合いで耐えきる。

 そんな私の様子に、要はハッとしたように目を開いてから、見たこともない険しい表情で武宮を睨んだ。


「ーーてめぇ、編入生の武宮だったか? こいつに一体何を……っ」


「要えええ!」


 要が何か言おうとしていたが、とりあえずそんなことはまずいい! 青虫は確実に上にのぼってきてる! 時は一刻を争うんだ!

 私は咄嗟に要の体に抱きついた。


「綾……華?」


「ーー今すぐ! 今すぐ私の肩についた青虫をとって!」


「…………はい?」


「いーから、早く!」

 

 あと、1㎝! あと1㎝で青虫が地肌に触れるんだああ!


「………………」


 要は無言のまま、私の肩についた青虫をとって、脇に放り投げてくれた。

 ………た、助かった!


「ありがとう! 要! 間一髪……あと5秒遅かったら、青虫が肌に触れるところだったよ。要は私の恩人だよ!」


「…………………………」


「……あ、とってもらってなんだけど、要。手は洗った方がいーよ。毒がある青虫だっているかもだし、そもそも気持ち悪……ぶふっ!」


 ーーや、やめてええ! 青虫触った手で、懐かしのあひる口の刑するの、やめてっ!

 要が青虫触ったことによって移ったなんかが、ほっぺに着いちゃうから!


「……悪い。武宮。変な誤解で睨んだりして」


「構わない……それより、そいつ」


「ああ、回収しておく。……迷惑かけたな」


「……え、ちょっと待って! 私まだ武宮との話終わってな……やめて、要! 帰るから、帰るから青虫乗ってる葉っぱ近づけてくるのやめて!」


 抵抗もむなしく、私は要にドナドナされるままに温室を後にしたのでした。




「……で? 綾華。てめぇ、あんなところで何してやがったんだ」


「……その前に要………本当に手を洗った方が……」


「あぁっ?」


「ーーわんこキャラ武宮京成と接触してみたくて、押しかけてましたあああ!」


 ……うう。最近の要、前以上に口が悪くて怖いよ。今の巻き舌とか、本当ヤンキー張りじゃんか。

 確かに出会った時の要は、ゲームの時より口調優しかったから少し違和感あったけど、こうやって口調って変化していくのね。うう、息子がグレるまでの軌跡を見ていた母親の気分よ。


「……あれが、お前が言っていた『イチオシのわんこキャラ』か」


「そうそう! ね? ね? 言ってた通り、金髪碧眼で身長大きかったでしょ? 髪の毛はゲームの時点より長いし、身長はもうちょっと伸びるはずだけどね。で、ゲームの流れ通りなら、来年には美化委員長に……って、要、顔怖い! 初対面の子どもが見たら大声で泣き出しそうなくらい、顔怖いよ!」

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