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乙女ゲームの悪役令嬢に転生しましたが、中身はアホのこのままでした【連載版】  作者: 空飛ぶひよこ


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アホのこと中等部10

「昨日の敵は今日の友っていうからには、三日前の敵は親友だと認定して良いと思いませんか? 要さん」


「……どういう理屈だ。それは」


 さて、例の呼び出しから三日経過しました。

 今日は、祝・スケバンマッチョさんの停学明けの日でーす!


「ぬふふふ……お祝いの花も用意したし、親友になる準備はバッチシだぜ……あとはスケバンマッチョさんを待つのみ」


「……別にお前がしたいなら、止めねぇけど、自分の停学の理由になった相手から花を贈られるって捉え方によってはすげぇ嫌味だぞ」


「しゃらっぷ! 拳で語りあっていない要は黙ってて! スケバンマッチョさんなら、きっと喜んでくれるはずだもん!」


 要をキッと睨みながら、里田さんに見繕ってもらったブーケをぎゅっと握りしめる。

 「友達になりたいと思った女の子にあげるんだ……すっごく漢気があって格好よいこに」と言ったら、里田さんは笑いながら赤を中心にした華やかなブーケを作ってくれた。……「前あげた花、要坊は喜んでましたか?」ってニヤニヤしながら言われたのは、ちと恥ずかしかったですが。やっぱり、見栄張ったのばればれだったのね………。


『友情の意味を持つ花言葉の奴を集めておきました。……綾華お嬢様は、ちょっと抜けてますがとても良い子なんですから、自信持って渡して下さい。綾華お嬢様なら、きっと百人だってお友達を作れるはずです。俺はその度、何個だって花束を作りますから』


 ……ナイスミドルに白い歯見せて、そう言われたら、ちょっと涙がでてきたよ。うちの使用人はみんな良い人です。本当。


「……ざわついてるな」


「……こ、この畏怖に満ちたざわつき方は、恐らくスケバンマッチョさんが近づいてきてる証! じゅ、準備せねば」


「何の準備だよ」


「もちろん、笑顔の準備!」


 にっこり笑顔で、朝の挨拶をするのだ! そして自然な流れで花束を渡す!

 イメージトレーニングは、ばっちりだ! さあ、スケバンマッチョさん、いつでも…………ってええええ!


「おや、要様に、鳳凰院綾華。おはようございます。こんな所で会うとは、奇遇ですね」


 現れたスケバンマッチョさんの姿に、要は絶句している。

 私も、口をパクパク動かすだけで、用意した言葉が全く口から出てこない。

 いや、だって! だって!


「か………髪………」


「ああ、これ? 反省の証として刈ったのさ。目に見えて分かった方が、効果あるだろ?」


 ……言ってることは、分からなくもない。いや、女の子が頭刈るとかやり過ぎだとは思うけど、まあ千歩譲って、丸坊主なら理解はできる。


 でも……でも……


「ーー何故に、モヒカン………!」 


 これじゃあ完全に、核戦争後の世紀末でバイク乗り回すひゃっはーさんではないか……!

 スケバンマッチョさん、よりにもよって何故、そのセレクト……!


「いや、行った美容院で、似合うようにできるだけ短く刈ってくれと言ったら、何故か真ん中だけ残されてね。……似合わないかい?」 


「似合います。似合いますからこそ、その美容院の名前教えて下さい。ちょっと殴り込みに行ってきます」


 スケバンマッチョさんは、漢女だぞ。言い変えればワルキューレ、もしくはアマゾネス。……屈強でも、ちゃんとした女性なのだ!

 いくら似合うからって、モヒカンはあかん! 


「個人的には結構気に入ってるんだけど、さっきもファンクラブの娘に泣かれてね……仕方ない。取りあえずワックスで立てるのはやめておくか」


 って、自分でノリノリでセットしてたんかい……!

 スケバンマッチョさん、読めない……なんてか考えが読めないよ!


「ところで鳳凰院綾華。花なんか持ってどうしたんだい? 今日は誰かの誕生日か何かかい?」


「あ………」


 本来の目的を思い出した私は、手の中のブーケを見つめながら逡巡する。

 ……あの髪型を気に入ってしまうスケバンマッチョさん改めてモヒカンマッチョさんは、果たして花なんか喜んでくれるのだろうか。

 要にも嫌味にとられるかもしれないって言われてしまったし……どうすんべ。

 しかし、せっかく里田さんに作ってもらったブーケ、無駄にするわけにはいくまい。……ええい! ままよ!


「これ……スケバンマッチョさんに! 停学明けのお祝い!」


「……私にかい?」


「に、似合いそうな花を、うちの庭師に選んでもらったの! よかったら……!」


 スケバンマッチョさんは、目を丸くしていたが、それでもちゃんとブーケを受け取ってくれた。


「ーーありがとう」


「!」


「似合わないってよく言われるけど、こう見えて花は好きなんだ……嬉しいよ。きれいな花束だ」


 ……おおう。さすが漢女。意外性の固まりだぜ。モヒカンマッチョが、花束を大事そうに抱えて、頬を染める姿のミスマッチ具合がすごい。

 ……だけど、これ良い感じじゃないかい? いい手応えなんじゃない?

 よし……この流れで、言ってしまおう……と、友達になってと!

 同じ男(要)を愛した女として、強敵ともになろうと言ってしまおう!


「ス、スケバンマッチョさん!」


「ああ、そうだ。鳳凰院綾華。あんたに言わないといけないと思ってたんだ」


 え……もしかして、スケバンマッチョさんも同じこと言おうとしてた?

 トゥンクと心臓が高鳴った。

 ……こ、これはやっぱり三日前の敵は親友フラグ……!


「私を倒したからには、今日から要様ファンクラブのボスはあんただ……駒にするなり、解散させられるなり、好きにしな」


「……え」


「そうさな……私は今日からあんたのことを『姉御』とでも呼ぶことにするかね」


 ーー………いやいやいや! おかしい! 色々おかしい!

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