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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
最終章 君たちが戦うくらいなら、この寿命尽きるまで共に眠ろう
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1話 事前の話し合い


 文化祭が終わってすぐ。三好さんより連絡があり、救出作戦のことは一先ず伏せ、各親に映世のことを説明するよう頼まれた。


 最後にそれに関して、ミヨシブラザーズの弟から話があるので、空いてる日時の指定をしてくれとお願いする。


 映世の証拠としては。

 まず有名人が接触してくること自体がただ事ではない。

 そして三好弟と言えば、精神病患者が目に見えて減っている現象を調べている。

 手鏡は映世の関係者じゃないと確認できないけど、スキルそのものを見せれば手っ取り早いだろう。

 また説明書と攻略本のコピーもしておく。



 結果として神崎さんが以前予想していたとおり、危ないことをしてと両親から怒られたそうだ。でも迷人になった理由を話したことで、お母さんが落ち込んでしまったらしい。


 女の子らしくってやつだね。

 ただ母親に言われなくても、中学になったころから落ち着かなきゃとは思ってたそうで、自分も異論はなかったと慰めたんだと。実際に自分からやる気ださなきゃ頑張れないもんな。


 でもそれが想像以上にストレスで、人付き合いにも少し嫌気がさしてしまった。

 映世に関わるようになってから、パッシブのお陰で日常生活にもいい影響があったこと。なによりも活動でのストレス発散。


 両親も感じていたそうだ。最近の娘がとても楽しそうで、以前よりもずっと元気になっているって。

 たしかに成績は少し落ちたけど、親としても許容範囲っていうか、毎回1位を取るために無理していると心配してた。


 巻島さんのところはもうポーションで父親が納得していたそうだ。術後ってのは病気の重さにもよるけど、以前のようにはいかない。

 だけど彼女が渡したそれを飲み始めてから、確かな効果は感じていたらしく、これは何処で手に入れたか聞いてもはぐらかされていた。

 そしてやっぱり迷人になった理由を聞いて、とても落ち込んでいたらしい。



 我が家なんですが三好さんの到着を待ってから、雪谷家と一緒に説明をしました。

 なんとうちの父ちゃんだけどね、活動はできなくても映世の存在自体は知ってました。

 雪谷のおじさんとおばさんも信じてなかったけど、そんな話を家族から聞いたことはあったんだってさ。


 今はボケちゃってるけど、雪谷家のお爺さんは俺らと同じで、昔は活動もしてたらしい。


「孫を最近みんと思ってたら、向こうに閉じ込められとったんか」


 映世の存在は認めるも、娘がいた事実には半信半疑だったけど、ケンちゃんが〖雫さん〗を召喚したら態度が変化してた。

 謝罪に関しては助けてから改めてしてくれと言われた。


 母ちゃん最近さ、美玖ちゃんの話題を良く出してたんだけど、幼馴染の話を聞いて困った顔をしてました。

 そして爺さんが言う。


「巌のやつは今どこにいる。呼び寄せた方が良いだろ」


 イワオってのは俺の叔父さんです。

 携帯はしばらく前から契約を解除しちまってるそうだけど、日本国内にいるなら何軒か心当たりがあるとのことだったので、さっそく父が連絡を試みることになった。

 祖父世代で現役なのは、もう叔父さんだけなんだと。


・・

・・


 休日。我が家に魂鎮め隊のメンバーが集められた。

 両親は仕事で不在。


「お邪魔しまーす。なんやかんやで浦部んち始めてだわ」


「だねぇ」


 三好さんはホテルに宿泊してるので、到着までもう少し時間がかかるとのこと。


「ご両親、理解してくれて良かったっすね」


「渋々だけど、取り合えず一安心かな。3年になったら控えるようには言われたけどさ」


「けっきょく活動してないと、私たちの悩みって解決しないもん」


 居間まで案内し、好きなところに座ってくれと伝え、お茶を用意しに台所へ向かう。


「どぞっ」


「お気づかいども」


「ありがとぉ」


 俺も適当な場所に腰を下ろし、緑茶を啜る。


「救出作戦については、どうやって許可もらえば良いんかね」


「まずは動機かぁ」


 2人してこちらを見てくる。


「そもそも自分反対の立場なんで、案を求められても困るんですけど」


「雫さん助けたいんでしょ。変な意地張らんでさ、協力を求めるべきだとアタシは思うぞ」


「真希んちも私の親も、浦部くんたちにお礼したいって。つまり我が家にとっても君は恩人ってこと」


 以前よりも活動できる人員は増えてるらしいけど、三好さんの関係者で強力な前世持ちは少ない。


「なにかあったとき、責任がとれません」


 二次被害ってやつだ。


「もし迷い人になっちまったら、頑張って救出しますくらいしか言えないんすよ」


「前向きに考えなきゃ。それに逆の立場で考えてみなって」


「もしアタシらが危険を冒してでも友人を助けようとしてたら、あんたはどうすんのさ」


 そう言われちまうと、もう反論は難しいな。


「案としては、巻島さんの発言そのままなんすよ」


 今日まであえてこの話は振らなかった。


「お二人とも面識がないはずの俺に、最初から抵抗なく話しかけてましたよね」


「えっ そうだっけぇ?」


「まあ確かにそうだったかも」


 違和感を感じたからこそ、俺が気づいたってのもある。


「それってある人物を間に挟んで、ちょくちょく繋がりがあったからなんすよ。毎回成績が2位なら意識してたはず。前に神崎さん自分でも言ってましたよね?」


「うん、ショッピングモールでそんな話をした記憶あるかな」


 もし俺が本気で巻き込もうと考えてたら、もっと早い段階で伝えていた。


「2人とも、雫さんと仲良かったんじゃねえかと」


 しばらく返答がないなと思っていたら、なんかものすごく睨まれて。


「ちょっと浦部君さ」


「気づかなかったアタシらもあれだけど、なんでもっと早くそれ言わんかった」


 けっこうマジで怒られました。

 宮内兄妹がちょうど来てくれたので、俺は謝りながら逃げるようにお出迎えをする。


「浦部さんって、秘密主義なところありますよね」


「情報の共有は大切だって、前に自分でも言ってただろ」


「いくら反対してるからって、それは教えておくべきこと違うん?」


「浦部くん優先順位間違ってるよ」


「すんません」


 正座して小さくなるばかりです。


・・

・・


 気まずい空気が流れておりました。

 やがてチャイムが鳴ったので、三好さんをお出迎えする。あとはケンちゃんだけか。


「始めまし……て」


 夏休みの時とは違い、今はスーツ姿だった。なんというか着慣れてない感が強い。


「なんかあったん?」


「まあ、ちっと自分がやらかしまして」


 軽く説明しました。


「そうか、自分らこっちにはなるべく関わらないようにしてたからね。まあ吟次くんも悪気があったわけじゃないから、多めにみてやってくれよ」


 俺の方をみて。


「物事を進めるには疑ってばかりじゃなく、危険を覚悟して信じないと動けない場面もある」


「巻き込みたくないって気持ちはわかるけど、アタシら魂鎮め隊じゃん」


「今までいろいろ一緒にやってきただろ」


「必要とされない、頼られないってのも、けっこう寂しいもんだよねぇ」


「浦部さんが大切に思ってくれてるなら、私たちも思い返すのが筋ってもんです」


「へい」


 人間関係は難しいね。


・・

・・


 ケンちゃんが来たので。


「じゃあ改めまして、三好英司です」


 この話はお終いといった感じで、元気よく自己紹介をしていく。


「よろしくお願いします、神崎聡美でーす」


「槙島真希です、お世話になります」


「宮内輝樹と言います。こっちが妹の」


「兄ちゃん勝手に紹介しないでよ。宮内美玖です」


「姉のことよろしく頼んます」


 ケンちゃんはすでに顔合わせを終えている。


「こりゃまたご丁寧に、いやぁ緊張しちまうな」


 あんま緊張してるようには見えない。


「売り込みとか兄に任せっきりでね、不手際あるかもだけどよろしく」


 このあとは神崎さんと巻島さんの家に行く予定。

 三好弟は開発畑だって聞いてたから、本当は交渉事とか苦手なのかも。


「叔父さんだけど、まだ連絡はつかないっすね」


 俺も姉も初耳だったが、映世歴数十年のベテランってことになる。


「ぜひ協力してもらいたいんだけど、海外となりゃ間に合わんかもなあ」


「びっくりだよね、でも思わぬ戦力の追加だぁ」


「浦部の叔父さんが助けた人たちとか、どこかで活動してる場合もあるんちゃう?」


「運営が制限してなけりゃ、確かに可能性はあるっすね」


 三好さんは俺らを見渡し。


「連中ってどんな感じで選別してんだろ。ネットでの発言とか?」


 すぐに思いつく例としては。


「あとはもうそのまんまだけど、ゲーム内での行動かな」


 なんやかんやでゲーマーな宮内が。


「確かに垢バンくらうような人物は選ばないか」


「ネットなら記録にも残りますしね。監視されるのは正直すごく嫌ですけど」


 デート中とか見られてたっぽいもんな、俺と美玖ちゃん。


「そう考えると、浦部くんは適任かもねぇ。常識的かどうかは別として」


「たしかにギン兄って、迷惑かけるようなこと昔からしないもんね」


「なんで常識人の枠を外されてるんですか自分」


 巻島さんからいつものアハハを貰い。


「真面目と常識がイコールとは限らんのさ」


「だって浦部君、ちょっと天然はいってるじゃん」


「会話中、たまに我を忘れますもんね。相手そっちのけで」


 変なことをするのは照れ隠しもありますんでね。

 天然アピールをすれば、もう自分が天然ではないと照明したことになるだろうか。


「いっけなーい、俺って天然なんですよー」


 ワタサバしかり、こういうのは自分で主張しちゃ駄目なんよ。自称ってのはそういう評価をくだされやすい。


「うん、だからそうだって言ってんじゃん」


「ギン兄は昔から突拍子ないことするもんね」


「そのエピソード聞きたいです」


 あえてだからね、あえてやってるんだから。



 そんなやり取りを眺めていた三好さんは、うんうんと頷き。


「俺なん機械イジリの記憶しかないから、ちょっと羨ましいねえ。青春ってやつだ」


 こちらをじっと見つめ。


「上手いことやってるようで安心したよ。人間、追いつめられると、どこまでも沈んでくもんだからね」


「なんとか焦らないよう、日々精進してます」


 彼は記憶を失う前の俺を知ってるからな。


「まあアタシら皆、迷い人になってますし」


 三好さんは鞄から液晶端末を取り出すと。


「そろそろ本題に移ろうか」


 皆が緊張からか静かになる。


「映世と関わるようになってさ、まず最初に何をしたかって言うと、世に出てる作品を見学してみたわけ。ジャンルでいうと現代ファンタジーもんだね」


 そんな空気を宥めるためか、最初の話題はとっつきやすかった。

 いくつかの題名は俺も知ってる。


「最初から化け物が溢れ出して、人類の大半が失われたってのもあるじゃん。それに比べたら良心的と思わない?」


 この世界の管理者は手を打ってくれている。


「確かに全てに置いて信用はできんけど、運営ってのはありがたい存在だよ。平和に慣れきったこの国で、命がけで戦える人材ってのはそんな多くないじゃん」


 宮内が腕を組み。


「天使さんといっしょか」


「ネットでネタにされてる印象しかなかったけど、まさか映世のこと知ってるとはね」


 巻島さんの話は一部が事実だ。


「ネタ宗教にしては、謎が多すぎるって話題もあります。幼児教育に平然と新興宗教が携われてるのも異常なことっすよね」


「昔から知ってるから警戒心が薄れちゃうけど、実際のところどうなんですか?」


「少し前に小林っていう人物が接触してきてさ、その御付きらしい有狩さんってのが俺に言ったんだよ。こいつら信用しすぎると危ないぞって」


 えぇ。


「アハハ、ちょっと面白いんだけど」


「有狩さんは信用できそうです」


「君どっちの味方なのさって、小林さんと喧嘩始めちまう始末でよ。もう見てるこっちが毒気を抜かれて、兄がいなかったら俺完全に流されてたわ」


 雫さんを救出すると今まで押えつけていたのが爆発して、現世に化け物が出現する可能性が高いんだと。

 ケンちゃんが、ちょっと笑いそうになりながら。


「世界を救うために格闘技を推し進めてるんだよね、天使さんといっしょって」


 ネットでネタにされているのは、こういった面だね。


 宮内はスマホで調べ物をしていたが、ふむと唸ってから。


「表面だけを見るのはやめた方が良いかも知れん。いくつものそういう団体に支援をしてるらしいぞ」


 三好さんはうなずくと。


「その金がどこから出てるかって話なわけさ。とても募金額だけじゃ無理っしょ」


「でも税務署は動かない」


 ケンちゃんは自分の掌を見つめながら。


「作戦当日は現世の一部を封鎖するんだよね。それができるだけの権力があるってことか」


「バックに運営がついてるって考えた方がいいのかもねぇ」


「神的存在が控えてるなら、さすがに国も手だしできないってこん?」


「天使さんといっしょ。本当に天使だったりして」


 美玖ちゃんの何気ない一言に、皆が黙り込む。


「万が一現世で戦いが起きた場合は、彼らが戦う人材を用意するそうだ」


「シーズンに参加しないと、1年ごとにスキルの性能が落ちてくんでしたっけ」


 多くの情報が彼らを通じて流されていた。


「本来スキルってのは長い時間をかけて育てるものなんだってさ。その期間を速める代償として、俺らは数年ごとにレベルが1にもどる」


 等価交換ってやつかね。


「有狩さんの助言もあるから、俺らは彼らの全面協力を避けることにした」


 おんぶに抱っこだと乗っ取られかねない。


「内外の圧力から守ってもらう。これだけでもかなりデカいんだけどね」


 資金援助などは最小限か。


「とまあ俺らは俺らにできることをってこんで、この動画を観て欲しいんだ」


 三好さんが液晶画面を操作すれば、そこに移ったのは京都の町並だった。


「え、これって映世なんですか?」


 カメラ係の巻島さんが身を乗りだし。


「なんで撮影できんの」


「昔の京都、そして雪景色か」


「もしかしてエネルギーになる素材っすか」


「ご名答。なんのためにこんなのを運営が用意したかって考えたら、やっぱ映世で機械を動かすためなんだろうなって思ったわけよ」


 そしてある意味だと、三好さんはそういうのに詳しい人材でもあった。

 画面の中では、見知らぬ誰かがコントローラーを握っている。


「あっ 飛んだ」


 ドローンの映像だったのか。みるみるうちに高度を上げていく。


「雪はだいぶ弱まったみたいっすね」


「10月の半ばくらいには活動再開できるようになったんでしたっけ?」


 京都といえば規則正しい基盤の道。所どころに神社仏閣が伺えるけど、現実のそれとは違うだろう。


「え……山?」


「夏になる前はこんなのなかったんだよね。そんで雫さんが迷い人になった地点とも重なってる」


 単独峰に近づいていくと、なんか砦みたいなのが映し出されていた。

 沢が自然の堀となっていて、壁で囲われた中に複数の建築物。


「ねえ、ちょっと変じゃない。造りっていうかさ」


 麓の拠点は森に囲まれているけど、その外側は昔ながらの日本家屋。


 門や壁を含めた内側。


「西洋の建築物っぽいか」


「浦部さん。なんか私、ここ見覚えがあるんですけど」


「……ヒノキ山」


 全員が俺の方を向いたことで、口を滑らせたと自覚した。


「浦部よ。あんた勇者の護衛だったそうだけど、まだ隠してることあったら全部ここで吐け」


「へぃ」


 刻亀討伐の舞台となった場所。

 拠点の大きさから察するに、国を巻き込んだ大がかりなものだったはず。

 たぶん雫さんの前世は、この作戦に関わっていた。

 俺と太志も。

 そして隆明が死んだ場所。


 必要な情報を選別していたら。


「浦部くーん、関係ないことも全部だよぉ」


「お前の判断だと無関係でも、別の視点からみれば有益かも知れんだろ」


 先ほどのこともあるので、下手に言い逃れはできそうにない。


「つっても朧気っすからね」


 嘔吐で汚れたノートの内容と、途中で病死したこと。


「ハンセン病みたいな感じで、俺はそれを隠してたんすよ。他者に感染する病気じゃないし、再発するまでは問題もないんで」


「長く生きれないこと、自覚してたんですか?」


 なんと説明するべきか。


「自己暗示っつうんすかね。無理やり忘れてたんだけど、王都で敵対した相手に、お前はもう数年で死ぬぞって教えられたんです」


「患者を保護する組織か」


 バレたら処刑される。

 三好さんはハンセン病について調べながら。


「なんて病名なん?」


「思い出せないんすよ」


「でも浦部さん隠しごと好きな理由、なんとなく分かりました」


「ギン兄かなり苦労したんだね」


 自分の前世を話すのって、けっこう抵抗があります。


「女性恐怖症かもって思ってましたけど、人間そのものが怖かったりしますか?」


「そこまで酷かったら、外に出れませんよ」


 前世の俺はそうかもだけどさ。


「じゃあ浦部くん、次は傭兵司祭について話してくださーい」


「えぇ」


「良いからさっさと話しな」


 巻島さんと神崎さんが怖い。


 嫌々ながらも洗いざらい吐き出すことになった。

 三好さんは苦笑いを浮かべ。


「だから〖偽りの神々〗って名称になったわけだ。んで敵方に捕まって磔刑ときたか」


「傭兵団旗にそんなの描かれてたけど、あれ浦部の前世だったんね」


「彼らは俺が死んでからも、教会と戦い続けたんだと思います。結果は分かりませんけど」


 十字架に磔られた聖職者をシンボルマークにした。


「団長さんだけ、未だに名前わからないんでしたっけ?」


「俺ってどうも傭兵たちに説法してたみたいなんすけど、思いのほか浸透が上手く行きすぎちゃいまして」


 もう最後の方は聖傭兵団なんて呼ばれてました。


「彼はそれを不満に思ってたんですけど、それでも協力してくれてたわけっす」


「うわぁ、ギン兄ちょっとそれはあれだね」


 そんな相手を置き去りにして、自分は勝手に磔刑って結末だ。


「だから司祭さん、団長殿に合わせる顔がないんすよ」


 罪悪感が他の団員より圧倒的にやばい。

 美玖ちゃんは困り顔で。


「励ます言葉が見つかりませんよ。まあ浦部さんじゃなくて、司祭さんの話なんですけど」


「お前の前世、どれも悲惨すぎないか?」


「宮内くんには言われたくないよ。まあそう考えたら、美玖ちゃんや神崎さんだって浮かばれないよな」


 話を振られた両名も、乾いた笑みを浮かべていた。


「私も〖鬼になる〗だっけ、正直あんま使いたくないや。あっ、三好さんこれどうぞ」


 神崎さんが取り出したのは、〔武者の面頬〕の販売許可証だった。


「いつもすまんね、本当に助かってるよ。たしか般若ってもともと、女性が鬼になる過程だったか」


「サトちゃんの前世ってさ、陰陽師と戦ったりしたんかな」


「だとすりゃ京都って、神崎さんと繋がり深いかもっすね」


 テスト前に検証することを進めております。


 話し合いも一区切りついたとあって。


「そんじゃ、そろそろ親御さんと交渉しに行きますか」


「うぅ緊張するよぉ」


「アタシも」


「無理なら無理でしゃあないっすよ」


 睨まれました。


「友達助けたいのは当然でしょ」


「ぜったい説得すっから」


 美玖ちゃんが握りこぶしをみせ。


「頑張ってください、一緒に京都行きましょう。私と兄ちゃんは許可が下りなくても行く所存です」


「まあ、美玖が行くなら俺もそうなるか」


 ケンちゃんは頭をさげ。


「本当にありがとうございます」


「任せときなケン坊」


 その後。三好さんの車で神崎さんと巻島さんは自宅に向かうことになった。




まだ次話書いてませんが、のんびりやってこうと思います。

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