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そこに居たはずの誰かへ  作者: 作者でしゅ
8章 上級校庭連戦と修学旅行
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3話 テスト期間での検証

 無事ではないけど、なんとか校庭の連戦を攻略して、俺らはテスト期間に突入した。


 そういや屋上の大鬼戦で巻島さん強制脱出しちゃったけど、報酬もちゃんとあったわな。


 ただ戦えて満足とも言ってた。

 俺が太志とソロで戦った事の方が、彼女からすりゃ不満だったんでしょうね。


 2軍の武具スキル構成とか考えとくのは今後重要かも。

 特に上級とかの場合はさ。現状、ちょっと難しいんだけど、数年後は今より装備とかも増えてるはずだし。


 アイテムチェストには私物だけでなく、仲間内の枠もあったりする。


 神崎さんが購入した武器操作の触手とか、俺や巻島さんケンちゃんで金出しあって、共有にするか本人に相談すべきかな。


 



 連戦ボスだけど、攻略初成功とのことでスキル玉以外にも、販売許可証をいくつか入手できた。

 報酬の分配だけど、今はいいけど人口が増えてくなら見直した方が良いよ運営。


 〖風刃の渦〗スキル玉

 小規模の渦に風属性のHP秒間ダメ(極小)。

 範囲内の味方と自分に属性耐性(極小)。

 MP徐々に消費(中)。

 このスキルは俺がもらうことになった。アイテムチェストにはお金も入れれるみたいなんで、こうやって私物にする場合は固定額(5万くらい?)を入れて活動費にでもしようという話になりました。

 どんどん貯まってきそうだけど、そしたら仲間内で別けりゃいいか。



 〖風の法衣〗と合成させることで、渦に風属性の秒間ダメ(極小)。

 任意で発動可能。MP徐々に消費(中)。

 突風を消費することで、10秒間ダメージが(中)に上昇。

 


 あと弓スキルはゲットできなかったけど、〖風刃横断〗の販売許可証をゲットした。

 両手持ちの武器専用。

 鈍器だと〖風打横断〗になるらしい。

 HPダメしか与えられないが、扇状に強風を発生させることが可能。中型までなら姿勢も崩せると思う。値段は35万。


 神崎さんは縦斬りのスキルが欲しかったと言っていた。〖横断〗って名称からして、もう一方は〖風刃縦断〗かな。

 こっちの突き抜ける風って、闘戦鬼すら足止めしてたから、大型の敵にも十分通用しそうだ。



 〖盾の求光〗スキル玉。販売許可証。

 盾専用

 一定範囲にいる敵を確率で神聖視(意識を向けさせる・守り三種低下)させる。

 MP消費(中)。

 冷却1分。

 あの盾使いが使ってたやつだ。

 崇める対象はバラバラだけど、自然や神を信仰するような相手には通用する。邪神とか含めてね。


 もしかすると日本人には効き難かったりするのだろうか。

 神さまって畏れられる存在なわけだけど、そういうの薄いじゃん日本って。軽い気持ちで頼み事とかすんの、本当はすげえ危ないんじゃないかな。


 〖白鎖〗と合成できるけど、〖閃光〗がなくなっちゃうからダメだ。




 〖天の光〗スキル玉。

 範囲内の味方にHP秒間回復(極小)。

 守り三種強化(極小)。

 発動は任意だけど、制限時間なし。

 MP徐々に消費(小)。

 とりあえず共用だけど宮内かな。〖超回復〗もあるから、あいつ現状でもめっちゃ硬い。

 神崎さんでも良いか。

 

 〖守光の法衣〗に合成させた場合だけ、発生スキル〖天の輝き〗に繋げられたようだ。

 頭上に聖なる紋章が出現し、以降戦闘中はずっと闇耐性を得る。浸食だけでなく、クロちゃんとかの攻撃も弱められるんだと思う。


 一定回復(中)。

 状態異常治癒。

 負傷治癒。

 12秒間の身体強化(小)、状態異常耐性。

 MP消費(大)。

 風の法衣にしちゃったから選択してないんだけどさ、来シーズンはこっち使うのもありだね。

 とりあえず共用の枠に入れておく。


 2つ同時使用可能な〖障壁〗や、威力軽減と思われる〖十字架〗は出ませんでした。

 あと地面に紋章が描かれる〖重力場〗も。



 〖闇に潜む〗スキル玉。

 8秒間姿が消える。

 夜の方が効果が高くなる。

 攻撃時もとに戻るが、HPダメ増加(小)。

 日中だと使用者は徐々にHP毒(中)

 MP消費(大)。

 クロちゃんと合成させることも可能だけど、巻島さん〖肩腕〗を付ける予定とのことなんで無理だな。

 それに《気づかれ度に応じてHPダメ増加(レベル比例)》があるしさ。


 共用で使ってく予定。

 もし黒の鎖が〔留め具〕でなく自分のスキルなら、合成できたかも知れないんだけど。



 あと美玖ちゃんが〖青い雨〗ってスキルを習得した。

 それとビー玉で興味深いのが出た。


《〖雷雲〗〖雨〗〖避雷針〗の同時使用であれば、属性限界突破の可能性あり(条件は最強の感電)》


 上記3つのスキルなら全部つけれるようだ。属性デバフは弱並強だけど、その上に最強ってのがあるらしい。雷雲を優先して改造してかんと難しいかも。


 属性限界突破ってのは、たぶん〖属性強化剤〗がなくても、肉体にダメージを与えられるんだろうね。

 この〖錬金薬〗は作るのに数十万必要らしく、利益とかかった時間も込みで、今後買うには相応の値段を要求されます。


 雫さん救出作戦で使いたいから、それまでは購入を控えてくれとも言われてる。だから今回渡されたのは、お試し用なんだろう。


 仲間内で属性限界突破しそうなのは宮内の闇くらいか。その前に物理化しそうだけどね。

 氷の牢獄も改造優先すれば、悪寒が最強には届きそうだな。


 巻島さんはナイフや物質化で対応できてたりする。

 なんつうか属性特化の前世には重要だね、あくまでもソロではだけど。たまに冒険者風の敵で居るし、魔法使いな人。


・・

・・


 月曜日。

 俺と宮内は廃校カフェの校庭に来ていた。

 映世にて。


「草けっこう伸びてたな」


「なんやかんやで、夏休み中は一回も行かなかったしね」


 初心者がいないと使わないんだよ、鏡社の周辺ってさ。


「そういえば浦部の腕は、ガントレットに強化されたのか?」


「両手だけってのがこれまた。他は普段着なんだもの」


 〔咎人の腕当〕から〔籠手〕に改良されました。


「まあ、それを言ったら俺も学校ジャージに剣と盾だ」


「法衣のエフェクトが発生すりゃ違ってもきますかね」


 試しにスキルを発動させてみる。


「だいぶ違和感も減ったな」


「これでどうよ」


 〖風の盾〗を発動させ、法衣鎧へと変化させた。〔籠手〕になったお陰で装備性能もだけど、総HPMPが大きく上がったのは嬉しい。


「完璧だが、エフェクトだから服がうっすら見えてるのが難点か」


「これ以上は鎧下でも着ないと無理だ」


 宮内は自分の武具を見て。 


「俺はもう変化しそうにないか。あと神崎や槙島も最初から同じだな」


「宮内君のは騎士の武具から、勇者に変化した感じだよね。初のボス戦がそっちじゃなくて本当に良かったよ」


 でも当時も空は燃えてたんだよな。


「たぶん夕焼けに染まるってさ、悪い意味での名前とは違うよ。そもそも原始の精霊なんて、人間がどうこうできる相手じゃないはずだろ」


「……そうか」


 テスト期間に入り、しばらくは活動もしないとあって。


「じゃあ、さっそく検証といきますか」


「恐らく攻撃してくると思うが、事前に謝っておく」


 スキルには説明分みたいなのもついてくるので、どんな事態になるかは知っているけど、体験はしておくべきだろう。


「いつもの癖で、味方として使わないようにしんと」


 宮内に各色の〖鎖・敵〗を放つ。


「発動させるぞ」


「へい」


 〖戦槌〗の影が全身を覆い尽くしていく。

 本人に抵抗の意思がないためか、いつもよりか広がる速度が早い。


 日中と夜の狭間。


 最初のうちは宮内も意識を保っていたようだ。


「雷光剣を使ってみてくれ」


 戦槌を地面に落し、宙に浮かぶ〖鞘〗へ手を伸ばすが、複数の触手が柄を掴むのを妨害する。


「難しそうだな。しゃあない、そのまま行ってくれ」


「……」


 触手が無理やり【戦槌】を握らせた次の瞬間。

 耳を覆いたくなるほどの慟哭が響き、やがて血走った赤い瞳は、俺を敵対者として捕らえた。


 物理判定を得た触手は針や刃の形に変化し、本体の宮内も戦槌で攻撃してくる。

 強烈な浸食と回復妨害。

 【武器操作の触手】や【肩腕】も使いこなす。


 闇と時空か。


 夕焼けの空は赤く輝き、沈みゆく太陽が夜を喰い止める。


・・

・・


 気づけば現世にもどっていた。

 咎人のメイスは使わなかったけど、もし発動させても5分と持たなかっただろう。


「アレに呑まれた状態で敵を倒しても、報酬は得られないってんじゃなあ」


 意識を保ってられるのは精々20秒ってところか。精神保護や安定でここら辺は調節できるようだけど、〖雷光剣〗で影を払うことは出来なかった。


「たぶん美玖ちゃんの鞘が必要になってくるんだろうな」


 夕方の校庭は誰もおらず、この時間はカフェもやってない。

 10分ほどが経過すると宮内が帰還する。


「大丈夫か?」


「ああ……これを実戦投入するのは厳しいか」


 暴走中も意識はあったようだ。

 少し気になる点がいくつか。


「やっぱ今の〖盾〗に原始の精霊が封印されてるわけじゃないんだよな?」


 運営が再現したスキルなはず。もしそうじゃなかったら、下手すりゃ世界が終わっちまう。


「身体を乗っ取られたのが前世の結末なんだ。おそらく魂にまで浸食は伸びてたから、残滓はあるかも知れん」


「完全なコピー品ってわけじゃなく、部分的に実物も使われてんだね」


 偽物で一番厄介なのってさ、そういう奴なんだってよ。本物を2つに分けて、まがい物と混ぜる。

 

「使いどころかぁ」


「映世での活動だと、負けてリスポーン地点にもどるか、こうやって帰還するだけだからな」


 撤退時に無理して使ってもらう必要もない。


「意識を保ててる間に敵を倒して、俺らで報酬をさっさと回収しちまうって感じ?」


「さっきの状態ですら抵抗はあまりできなかった。精神バフ込みだとしても、実際に戦っている最中となれば、たぶん10秒も持たんよ」


 時間の経過で段々と強くなってる感じだった。


「その10秒でボスを倒し切れるなら、たぶん使わなくても俺らだけで終わらせられるよ」


 あともう一つ、大きな問題がある。


・・

・・


 今日は俺の家で勉強をすることになっていた。


 帰宅したのち。


「どうぞ上ってください」


「お邪魔します」


 スリッパを用意する。


 母が晩飯の支度をしていたので、宮内と挨拶を交わしたのち部屋へと招く。


「すまんな、晩飯までご馳走になって」


「お気になさらず。母上もお喜びでしたから」


 父ちゃんトラックの運転だけでなく、積み込みなんかもやってるから、休日以外は家じゃ寝てることが多い。

 最近は姉がいないので俺と2人、もしくは1人での飯が多かった。活動に夢中な息子でごめんよ。


 2階の部屋に到着する。


「ギン兄お帰り」


 美玖ちゃんと2人でゲームをしていたらしい。

 落ちゲー得意だって聞いてたけど、あんま集中できなかったようで、ケンちゃんの方に勝利の文字が浮かんでいた。


 彼女は俺らを見て、ふんっとそっぽを向く。


「えっと……その」


「まあ、なんだ。実戦での使用は難しそうだ」


 美玖ちゃんは〖夕焼けに染まる〗を使うことに反対で、検証もやめておいた方が良いとの意見だった。


「浦部さんの予想どおり、再現しただけのスキルでしたか?」


「さすがに本体はいませんでしたよ」


 本音を言えば〖暗黒の戦槌〗も嫌なんだろう。


「確かに残りカスみたいなのは感じたけどな。もし本当に危険なスキルだったら、運営がそもそも用意しなかったはずだろ」


「使わないって決めたなら、それで良いですけど」


 ケンちゃんが空気を読んで動いてくれる。


「じゃあ、そろそろ勉強しようよ」


 一回は検証しとくべきってのが俺の意見なんだが、美玖ちゃんを怒らせてしまった。


「修学旅行中とか、近くに私がいない場所じゃ使っちゃ駄目だからね」


 たぶん〖真・雷光剣〗って、始まりの精霊と深い繋がりがあるんだろうね。

 

・・

・・


 食後、ケンちゃんは一足先に帰宅する。

 2人は電車の予定だったけど、うちの母が送っていくとのことで、俺らは庭にでて準備が終わるのを待っていた。


「あーあぁ、浦部さんなら折れてくれると思ったのになぁ」


「浦部は優先順位とか、そういうの決めたら曲げないぞ」


 えっ そうなの。初耳なんすけど。


「神崎先輩と槙島先輩も言ってましたね。東京行くときも親の許可は絶対だって」


「けっこう詰められましたけど、そこ譲っちゃ駄目ですよ。俺ら未成年ですし」


 俺って融通が利かない人間なのだろうか。

 自分に厳しいなんて全くないぞ、むしろ自分には甘々だもの僕ちん。


 まあでも1年のころは使命に没頭してたっていうし。


「固執しちゃうとこもあるんでしょうかね」


 周りが見えてなかったのは確かだろうな。

 たぶん嬉しかったんだろう。自分が何もできない無力な人間じゃないって思えてさ。

 中二病が完治するくらいには、挫折の多かった思春期でした。


「私が可愛くお願いってしたら、うへへって腰をクネクネさせてさ。美玖ちゃんの言う事なら何でも聞いちゃうって、鼻のした伸ばしながら応えてくれると信じてたのになぁー」


「えぇ、俺って美玖ちゃんにそんな見られ方してたんすか」


「さすがに言い過ぎだと思うぞ」


 はいはいごめんなさいと、心のこもってない謝罪を受けたのち。


「……悲しい結末に突っ走るのだけはやめてよ。もう本当に」


「そうだな」


 ヤバイ存在を倒すために、兄は時空盾の力を頼った。

 なんとか目的は達成できたけれど、弱まってしまった封印に少しずつ蝕まれ、妹に雷光剣を残して未開の地へ消える。


 宮内から聞いた内容はこんな感じだったかな。

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