観察日記7
紗和は、もむもむ、とシュークリームを頬張っていた。
ダイエットしなきゃ!といった翌日にこの体たらくである。
女の意志の弱さを侮ってはいけない、ということを俺は紗和の観察の日々で学んだ。
しかし、この子基本的にずっと何か食ってんな…。
満腹という概念が存在しないのか……?
「……はっ! いつの間にかシュークリームを食べていた!! このままじゃ痩せるなんて、夢のそのまた夢!」
そうそう。
節制しな。
そうすれば君のことを好いてくれる人も現れるよ。
可愛くない、というわけではない。
というか紗和には小動物的な可愛さがあるような気がする。
実家で買っている猫のような。散歩している犬のような。
ずっと見ているからだろうか、愛着とも呼べる感情が自分の中にあるのを感じる。
何気なくカレンダーを見やった。
今日の日付は6月30日。
俺が死ぬであろう7月2日まで、あと…二日。
いまいち実感がないまま、ダラダラと紗和を観察し、一か月が過ぎてしまった。
この子は俺が死ぬであろう数日前でも平常運転だった。
只今の時刻は23時を回ったところ。
さて、生きている俺は今頃何をしているのだろうか。
頭がもやのようにぼんやりとしていて、思い出せない。
というか、この紗和との日々の中しか、俺の中には残っていない。
これはひょっとして……、アレだろうか。
いよいよ、終わりなのだろうか。
死ぬ49日前に。
死ぬほど俺のことを好きな子の部屋にいて。
ずっと俺への愛情を叫んでいる、この恋に狂った子との日々が。
彼女は何も知らないま、きっと三日後に俺の死を知る。
そうなったときに、無事でいられるのだろうか。




