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愉快な社畜たちとゆくVRMMO  作者: なつのぎ


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75.宝箱のアイテム

いつもありがとうございます。

 剣道の大会までの間は、俺も毎日少しずつレベリングすることにした。


 星見の塔へ行くワープポイントが使えてほんとに助かる。


 塔のダンジョンは前回クリアした次の階から挑戦することが可能なので俺は二十七階からスタートできるんだけど、今回は魔導書の練習目的であえて一階から始めることにした。


 ついでに以前は行かなかったフロアの隅々までチェックすることにしよう。


 今日は俺のアイコンとなっているデスサイズを背負ってないので、服も死神セットとは違う色合いのものにした。銀雪と一緒に塔のエントランスに踏み入るが、俺に注意を向ける者は誰もいなかった。人の目がないって気楽だな。そのままダンジョンに進んだ。


「ダークアロー」


 魔導書『眠れる銀の書』を開き、標的を見据えて唱えると、空中から闇魔法の真っ黒い矢が出現してゴブリンを貫いた。すぐにキラキラエフェクトで消える。


 スタスタと回廊を歩いていくとまたゴブリン。


「セイクリッドアロー」


 聖霊魔法の白く輝く矢が貫いてキラキラエフェクトで消える。


 あ、他のパーティが後ろから来た。せっかく今日は死神じゃないんだから、あんまり珍しい属性の魔法使ってるところ見られて騒がれたくはない。


 ゴブリンが飛び出してくる。


「アイスアロー」


 今度は氷の矢で貫いた。まあ基本の技はアローとウォールが多いから、頭に属性をつけてやればだいたい使える。


 俺は雑魚を蹴散らしながらフロアをぐるぐると歩き回ってマップを完成させると、フロアボスのゴブリンキングを倒して上階にあがった。




 それからの日々は剣道の練習に打ち込んで、あっという間に大会直前になった。


 ダンジョンには毎日短時間だけどコツコツ通って、闇魔法はLv.17まであがった。


闇の触手(ダークテンタクル)


 飛び出してきた半魚人の腰に、当人の影の中から素早く伸びた黒い触手が巻きついて動きを阻害する。


「ダークアロー」


 黒い矢がその胸を貫いて、半魚人はキラキラエフェクトとともに消えた。


 本当はアローだけで余裕で倒せるんだけど、今は触手の練習を兼ねているのでこの手順になっている。


 この触手、毒泥人形戦で見たやつをそのまま小さくしたような形の真っ黒いニョロニョロだ。


 初めて出した時はこんなキモいもの絶対使わないわ、いくらなんでも闇すぎるでしょ、と思ったんだけど、普段から闇魔法や聖霊魔法のレベルをあげるために補助魔法ブレスレットでも使用可能な技を調べたら、まさにこの触手が引っかかってきたのだ。


 触手じたいに攻撃能力はないけど、拘束などの物理的な干渉ができる。伸縮するし本数や太さはある程度変えられる。影のある場所ならどこからでも出せるし、なんなら影がない場所でも補助魔法ブレスレットで「闇」を作ってやればそこから出入りできる。


 少し使ってみたらこれが意外と便利だった。


 料理の途中にそこらのものを取ってもらえるし、食材採取で高い場所にも手が届く。


 それで結局、この触手を有効活用する方針にシフトして、練習がてら使っているわけだ。


闇の触手(ダークテンタクル)


「ダークアロー」


 ダンジョンの回廊をまっすぐ歩きながら次々と進路を塞いで現れる敵を消していく。


 正直なところ、やっぱり俺は身体を動かす近接武器の方が好きだな。こう、唱えるだけは退屈っていうか。


「あ、宝箱発見」


 この瞬間は何度体験してもテンションあがるね。いそいそと箱を開ける。


 中に入っていたお金と魔石を取り出して箱のフタを閉めようとしたら、銀雪が鼻を突っ込むような仕草で「ワフ」と鳴いた。


「えっ、なに?」


 箱の中を見ると、箱の端の方に小さな魔石が三つぶら下がっているブレスレットのような短い鎖が残っていた。


「あ、見落としてた……ありがとう、銀雪」


 モフモフの頭を撫でて、鎖を取り出す。


「なんだこれ……?」


【スペルショートカット 魔法具に取り付けて使用する。石一個につきひとつの呪文を登録した任意の語句で呼び出すことができる】


 うん? これってパソコンなんかで使う単語登録のようなものか?


 長い呪文の詠唱はそのままチャージ時間でもあるわけだが、もしかして登録した技はノータイムで発動できるんだろうか?


 魔導書カバーのハンドベルト部分にスペルショートカットを取り付けて、とりあえず俺がいま使える中で一番詠唱が長い大技『千の闇の剣(サウザンドソード)』を登録してみた。


「フロアボスのところで試してみよっか」


「ワフ」


 フロアの雑魚をさくさく片付けて、ボスの魚人のところへ突入した。


 立派なヒレを持った身長三メートルくらいの巨体は全身が硬い鱗と厚い筋肉に覆われていて、水属性だけど物理攻撃を得意としている。


 戦闘開始の甲高い雄叫びを聞いたところで「『千の闇の剣(ソード)』」と登録語句を唱えてみた。同時に、俺の前に無数の黒い剣が出現してドドドド、と弾幕のように魚人を貫く。敵は瞬きの間にキラキラエフェクトで消えてしまった。


「……ほんとにひとことで出ちゃった……」


 あの長ったらしい詠唱なしで大技が使えてしまった。これは強いぞ。


 でもMPがぐいっと減ってる。簡単だからって調子に乗って使いすぎないように気をつけなくちゃいけないな。


 とりあえず上階にあがってから、ふたつめの石に防御で使う技を登録した。咄嗟の時には呼び出しが短ければ短い方がいい。


「あとひとつ、どうしよ……」


 ふと腕の補助魔法ブレスレットが目に入る。そういえばこれもいちおう魔法具なんだよな。


 スペルショートカットを魔導書カバーから外して、ブレスレットの透かし彫り部分に付け替えてみた。


 三つめの石に闇の触手(ダークテンタクル)を登録する。


「『闇の触手(テン)』」


 声に出すと俺の足元の影からしゅるっと触手が出た。


 おお、成功だ。呼び名が長くて地味に面倒くさかったんだよな。


 これならスペルショートカットを普段は補助魔法ブレスレットに取り付けておいて、魔導書を使う時だけそちらに付け替えればいいか。服と一緒に装備登録しておけば一瞬でチェンジできるし。


「よーし」


 ふたたびレベリングに戻ろうとした時、ポーンと電子音が鳴った。


【みなさまにお知らせします。ウェスフォース南の境界『暗き岩屋の番人』がパーティ『斬鉄団』によって初討伐されました。これより西の国ウィンドナ第五の街ウェスフィフスへのルートが解放されます】


 へえ、西5が開通したのか。ペース速いな。


 境界越えは今回は斬鉄団の勝利だったか。いや、勝負してるかどうかは知らないけど。


 大会が終わったら、うちのパーティも西5境界戦をやることになりそうだな。



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