表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愉快な社畜たちとゆくVRMMO  作者: なつのぎ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

54/181

52.意外な方向性

いつもありがとうございます。

 今日はログインしてまず生産。


 クランハウスの厨房にこもって夜鳩商会で出す料理を作る。


 今回は試食で特に好評をいただいたトマトクリームソースのロールキャベツと、白葡萄とサワークリームのタルトの二品だ。


 煮込みも冷やし作業も時間操作でささっと済ませる。ほんとこのスキルは便利だ。ナナ師匠には感謝しかない。


 完成まであと少しの状態まで作業を進めたところで、一旦中断して外出した。


 暗殺料理人の称号により戦闘後60分以内に料理を完成させると付加効果が割増になるためだ。


 西2の仮宿から出て、一番近くにいた初心者狩りらしき赤ネームに偽装と隠密で近づいて、背後からフライパンでポカリと殴った。


 キラキラエフェクトを見届けてマップを確認すると、あれ、街壁外の南側の森に入ったところに赤丸が三つ集まってるな。なんだろう?


 気にはなるけどこの場所からは距離があるので、今日のところは見なかったことにして仮宿に引き返した。


 厨房に戻って料理を完成させると、ロールキャベツはSTR+19、タルトはVIT+18で仕上がった。


 このあたりの数字は俺のパラメータを元に計算されている。高いバフの料理を作るにはもっと自分の数字もあげなくちゃいけないんだよな。


 クランハウスの保管庫に入れておく分を取り分けていると、トコトコと姉ちゃんがやってきた。


「カイくん、いい匂いがする〜」


「味見する?」


「する!」


 それぞれをひと切れずつ皿に盛って作業台に置き、俺は仕事に戻る。姉ちゃんは俺の休憩用の椅子を引きずってきて座った。


「はふい、おいひい。パンが欲ひいよ」


 熱いロールキャベツを口に入れて子供みたいに喋る姉ちゃん。あ、いまは子供だったか。


「パンは切らしてる、ごめん」


「べつにいいわよう」


「それで、従魔はどうだった?」


 姉ちゃんの手が止まった。振り返ってそちらを見ると、小さな手でフォークを握りしめて唸っている。


「なんか難しくって。殺さない程度にやっつけてテイムするんだけど、やりすぎても駄目だし足りないと逃げられちゃうし。なかなかテイムのコマンドが出なくって」


「……仲間にしたい相手を痛めつけるの?」


「獣相手だからこう、上下関係を思い知らせなくちゃいかんらしいのよ」


「へえ……」


 そういうものか。


 緋炎もあのおっかない鳥と戦ったのかな。あの人冒険心があふれまくってるよなあ。こう、心は永遠の少年というか。実年齢いくつなんだろ。


「餌付けとかでは駄目なの?」


「さあ? どうなのかしら」


 次のタルトにフォークを入れながら姉ちゃんは考え込んだ。


「……カイくん、モンスターのおやつある?」


「毒餌用のまだ毒入れてないやつあるよ。持ってけば?」


 保管庫から出して、大袋ごと姉ちゃんの横に置いてやる。


「そうだ、これも使う?」


 ふと思いついて、前に使っていた初心者用の補助魔法ブレスレットを姉ちゃんに渡した。


「あら? どうしたの?」


「新しいの手に入れたから、お古でよければ。たしかアルケナ教の聖霊魔法にも回復っぽいのがあったでしょ、戦闘で使えるんじゃない?」


「ありがとう。今このブレスも品薄で買えないのよ」


 俺はウィンドウで譲渡の手続きをした。姉ちゃんが受け取りの操作をしてブレスレットを手首に嵌める。


「カイくんは新しいのどこで見つけたの?」


 それ気になっちゃいますか。うーん、仕方ないなあ。


「実は……」


 俺はちょっと覗きに行ってみた星見の塔で緋炎に遭遇して、ダンジョンを一緒に攻略したことを姉ちゃんに告白した。


 彼は姉ちゃんや耕助さんが毛嫌いしてる同僚の所属パーティのリーダーだから、あまりこの話はしない方がいいかなって思ってたんだけど。


「緋炎はひとりで来ててあの聖女リリィはいなかったから、まあいいかなって思って」


 ついつい言い訳っぽくなってしまった。しかし姉ちゃんの関心は別な方へと向かっていたようだ。


「鳥をテイムして空を飛んできたの?」


「そう言ってたね」


「口からレーザー光線吐くの?」


「吐いてたね」


 姉ちゃんの目がキラキラと輝きはじめた。


「なにそれ……楽しそう……」


 どうやら姉ちゃんの琴線に触れちゃったらしい。


 うん、空を飛んでみたいって気持ちはわかる。俺は不知火の得体の知れない迫力になんだか腰が引けちゃったから自分もテイムしようとは思わなかったんだけど。姉ちゃん、まさかやる気か?


「そういう鳥ってどのあたりにいるのかしら」


「…………緋炎に訊いてみる?」


「お願いするわ」


 姉ちゃんはキリッと頷いた。



評価・ブックマークをありがとうございます。いつも励みになっています。

(2023.2.20修正)脱字修正しました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ