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愉快な社畜たちとゆくVRMMO  作者: なつのぎ


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39.魔法の出どころ

いつもありがとうございます。

「かんぱーい!」


 うん。サイダー美味しい。でもコーラの作り方も調べておこうかな、やっぱりこういう時欲しいし。材料が存在するかわからないけど。


 酒を飲んだ大人組の反応を窺うと、そう悪くない様子だった。


「カイくん、白ワイン飲みやすくていいよお」


 外見10歳が飲んでる絵面、なんかやばい。


「ワインは甘い感じにしたつもり。日本酒は冷を想定して辛口の生酒? とかいうのにしてみた」


 俺自身はよくわかってないんだけど、本に書いてあったのを適当に作ってみたのだ。これからはレシピのページ順にいろいろ試作していくつもり。


「こっちも美味いよ。売り物にしてもいいくらいだ」


 日本酒組、陽南さんの言葉に耕助さんが頷いた。


 結構こだわりがありそうな二人の細かい感想をメモに書き取りながら考える。自分が確認できないものを売るのはどうかと思っていたけど、こうやって大人組に定期的に味見をしてもらえるなら、商品化するのもいいかもしれない。


 料理も軒並み好評だ。うん、こうしてみるとクランハウスで仲間だけでアットホームに食卓を囲むのも楽しいもんだな。


「そういえばさ」


 肉じゃがを突いていた陽南さんが、ふと思い出したように言った。


「さっき耕助が付与したやつって雷魔法? 初めて見たんだけど」


 あの亀を足止めしたやつのことだよな。


「うん。そう」


「すごい威力だったよね。兄貴、いつの間に雷魔法手に入れたの」


「ひとりでレベル上げしてる時に遭遇したクエストの報酬だよ」


 クエスト報酬の魔法、それってもしかして。


「神様の祝福ですか?」


「そうそれ。詳しいことは話せないけど」


「ああ、最近流行りのやつですね」


 とデイジーさんが言った。


「流行ってるの?」


 姉ちゃんが聞き返した。俺も初耳。いや、もともとオビクロ界の風聞には疎いんだけどさ。


「女神神殿で洗礼受けると光魔法が貰えるって噂になってるんですよ。なんか宗教によって違う魔法が付いてくるからどの宗教に入るべきか、みたいな論争になってます」


「ああ、そういう。俺の氷魔法もリンネ神に貰ったんですよね」


「雷魔法はブライトール神だった」


 ん? とヒカリがハテナマークを浮かべた。


「リンネ神はNPCの土着信仰だよね。ブライトール神はどこの神様なの?」


「北国ミスティンの宗教だ。別名天帝教だっけな」


 えっ、とみんなが声を驚きの声をあげる。


「鎖国してる北国の関係者と接触したの?」


「どこで?」


 耕助さんは皆の質問を片手で制した。


「すまん、本当にこれ以上は言えないんだ」


 まあ国交がないはずの連中だもんな。相手は密入国者とか、あまり動向を他人に知られたくない類の人間かもしれない。


 陽南さんが顎に手を当てて何か考え込んでいる。


「光魔法っていうと回復?」


「そうですね、回復とバフですって。回復の方は補助魔法ブレスでも使用可能だとかで、女神神殿には今すごい人が詰めかけてるそうですよ」


 オビクロのルールでは基本的に武器類はひとつしか装備できない。つまり、剣と魔法具両方を所有していても戦いの場にはどちらかしか持ち込めないため、これまでは剣を持ったまま回復魔法を使うことは出来ないと思われていたそうだ。


 ところが回復は戦闘魔法扱いではなく生産職向けの補助魔法ブレスレットでも使えることが判明し、他の武器とも併用できることが知られてきて、現在一大ブームが巻き起こっているらしい。


 でもなんだろ、デイジーさんの口調からは他人事っぽい空気を感じるな。


「デイジーさんは興味ないんですか?」


 訊ねると、彼女は首を横に振った。


「回復はたしかに欲しいんだけどね、そんな簡単に宗教登録しちゃって大丈夫かなって。複数宗教の設定があって登録コマンドが存在するってことは、その宗教が後で何かに影響してくるかもしれないし」


 なるほど、と面々が頷く。


「北国は宗教が原因で鎖国してるんだよね。てことは先々、入国条件に宗教が出てくる可能性が高いんじゃない?」


「そうだな。入れないってことはないだろうけど、異教徒だと難易度が上がるかもな」


 そこまで聞くと、クラディス教が光魔法という餌を引っ提げて最初の国に一番入信しやすい形で待ち構えてるのも何かの罠っぽく思えてくるな。


「これだけ騒ぎになってれば光魔法持ってる人たくさんいるはずだし、どうしても必要になれば助っ人を探せばいいと思うの。しばらくは様子見するわ」


 おお、デイジーさんの冷静な判断、見習いたいところだ。


 俺なんかもし夜鳩商会でアルケナ教の洗礼を受ける予定がなければ、すぐに女神神殿に行ってたかもしれない。というか、センリ氏もわざわざ宗教のことに念を押していたし、やっぱり何かあると見たほうがいいだろうな。


 ま、俺と姉ちゃんはもう決まっているから、なるようにしかならないんだけど。


 その後はたわいもない話で盛り上がり、作り置きを全部放出して食べて飲んで、新しいキッチンで追加の料理を作りまくった。お店にいる時みたいに他のお客さんに気を使う必要もなく、ログアウト時間まで思う存分馬鹿騒ぎして過ごしたのだった。

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(2023.2.20修正)脱字修正しました。

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