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愉快な社畜たちとゆくVRMMO  作者: なつのぎ


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28.相談

いつもありがとうございます。今年最後の更新になります。

次回は1月3日から更新予定です。

「おーっす」


 大学の学食で定食を食べながらスマホのカレンダーで予定を考えていたら、誰かが目の前の席にどかりと座った。


「あ、樋口君おつかれ」


「その呼び方キモい」


「じゃ、樋口」


「ん」


 この人も普段はヒカリと全然違うよな。あっちが綺麗なヒカリだとするとこっちはきたな……ゲフンゲフン。


「オビクロ、GWのイベント告知出ただろ。支倉ヒマ?」


「暇じゃないからイベントはどっちもやらないつもり」


 GWのイベントは同時進行で二つだ。


 ひとつめは闘技大会。PvP、つまり対人戦闘をスポーツ感覚で行える『闘技場』がウェスサードの街に実装されるので、それをお披露目ついでに個人戦部門とパーティ戦部門に分かれたトーナメント大会が開かれる。


 ふたつめはお金稼ぎイベント。期間中はオビクロ全地域で通常のコルトではない貨幣が使われることになり、その期間限定コインを貯めた数によって別途アイテムが貰えるといったものだ。もちろんイベント終了後には限定コインを通常コインへ同レートで交換できる。


「用事あんの?」


「剣道の試合が近いからずっと練習。後半は合宿になるから全くログインできないし、姉ちゃんも友達と旅行だって」


 今年のGWは間に平日を二日ほど挟んで前半と後半に分かれているんだけど、剣道の試合はGWが終わった約一週間後だからもう全部練習に費やすしかない。


「そっかあ」


 樋口があからさまに落胆している。


「なにか問題あった?」


「闘技大会一緒に出て欲しかったんだけど」


 彼の話によれば、今回景品の一部見本の中に『付与』のスキルカードの画像があったらしい。


 スキルカードはその名の通り指定されたスキルを入手できるカードで、未使用ならば譲渡も可能なのが特徴だ。


「兄貴、付与スキルがどうしても欲しいらしくて、協力してくれって頼まれたんだ」


「なるほど?」


 たしかに耕助さんみたいなタンクだったら、毎回盾に有利属性を付与すれば守りが固くなるし合理的だ。全属性の盾を用意するなんて無理だもんな。


「でも今回は試合が強制的に配信されるし、兄貴、アレだから映像が残る状態で人前になんか出られないでしょ」


 アレってのはうちの姉ちゃんと同じく顔を隠したい事情だ。


 下手に動画なんて撮られたら、何かの偶然で一瞬、顔が見えてしまっただけでも身元を特定される恐れがある。


「それで俺が頑張って獲りにいこうと思うんだけど、そもそも何位の景品だとか参加賞の抽選景品だとか、そんなことも不明なわけよ。だから弾数増やしたいって思ってさ。もし支倉が手に入れたらちゃんとした金額で買い取るし」


「うーん」


 スマホのオビクロアプリで闘技大会のお知らせを見る。日程はGW前半に個人戦、後半にパーティ戦となっていた。なんとか行けなくもないかなあ。


「俺、弱いよ? レベルのほとんどが料理スキルだから上位入賞とか無理」


「それは大丈夫。さっきも言ったけど入手条件がまったく不明だから」


「じゃあ自宅にいる時間にやる試合だったら出るけど、もし予定が合わなかった時は諦めて」


 樋口の顔がぱあっと明るくなった。


「サンキュー! ほんとに助かる」


「まだスケジュールはっきりしないとわかんないから」


 牽制しつつ、頭の中でもう一度予定を組み立てる。


 やっぱり試合までにハンマーのスキルをもう少しあげておいた方がいいよな。エントリーして試合時間もちゃんと調べてみないと。


「ちなみにヒカリっていまレベルいくつ?」


「25。カイは?」


「まだ20なんだよな。……レベル上げに良い場所ってある?」


 樋口に訊ねるといくつか教えてくれたのでメモった。


「時間が合えばレベリング付き合うからいつでも連絡しなよ」


「ありがと」


 GWまであと一週間。


 部活も前より遅くまでやってるし、どこまで上げられるかわからないけど、やれるだけのことはやっておきたい。


 また耕助さんと組むことがあれば、彼の強化は回り回って自分のためにもなるしな。

評価・ブックマークをありがとうございます。いつも励みになっています。

11月から初めて投稿してみて、思っていたよりも沢山の方に読んでいただけたので嬉しかったです。

来年もどうぞよろしくお願いします。

(2023.1.9修正)改行を一部変更しました。

(2023.2.20修正)脱字修正しました。

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