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愉快な社畜たちとゆくVRMMO  作者: なつのぎ


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1.プロローグ

初投稿です。よろしくお願いします。

 まだ雪が残る春の日。高校の卒業式を終えて鼻歌まじりに帰宅した俺を待っていたのは、玄関で土下座する姉の姿だった。


「海くん、一生のお願いがあるの!」


「……なにかあったの?」


 ただならぬ雰囲気に、聞く前から腰が引けてる俺。


「どうかお姉ちゃんと一緒にVRゲームしてくださいっ」


「はい?」


 姉ちゃん、ゲームとかそんなに興味なかったよな。



 俺は支倉海(はせくらうみ)、18歳。来月から大学生。顔も身長も体格も普通、剣道がそこそこできる以外はそれほど特徴のない元男子高生だと思う。


 姉ちゃんは支倉菜穂(はせくらなほ)、7つ上の25歳。大手ゲーム会社で秘書の仕事をしている。まっすぐ伸ばした黒髪をいつも複雑で綺麗な形にまとめていて、弟の俺が言うのもあれだけど、理知的な雰囲気の美人さんだ。


「実はね、会社がとんでもないこと言い出して……」


 その姉ちゃんが頭を抱えながら口にした説明は、こんな内容だった。


 姉ちゃんの勤めるゲートキーパー社(以下GK社)はこの春、フルダイブ型新作VRMMOを発売することになっている。


 だがこういったゲームにはコアなファンが多く集まり、最近では特にライトユーザーが始めるには心理的ハードルが高い傾向があった。


 そこでGK社は普段あまりゲームをしない一般社員たちをモニターとしてプレイさせ、そういった層の新規ユーザーを取り入れる研究をしようと画策したのだという。


「まあついでにいくつか取りたいデータもあるって話だったけど」


「そのモニターに選ばれちゃったの?」


 姉ちゃんは首を横に振った。


「選考なし。上が決めた条件を満たしてる本社正社員全員参加」


「なにその地獄!」


 顔色が悪いのも納得だ。なにが悲しくて会社の連中とVRMMOやらねばならんのだ。しかも終業後に。決定した上の人、頭沸いてる。


「だからね、海くんもお姉ちゃんと一緒にゲームやってほしいの。ずっと決まった人と組んでたら他の社員にも会いにくくなるでしょう? 機械もソフトも全部買ってあげるから! ね、お願い!」


 ゲーム内で会社の人と遭遇しないために盾役をやれってことか。


 両手を合わせて必死に頼み込んでくるけど、もともと俺が姉ちゃんの頼みを断るなんて選択肢は存在しない。自分で言うのも恥ずかしいけどシスコンぽい自覚はある。


「俺、大学入ったら部活やるから長時間は無理だけど、それでもいい?」


 姉ちゃんの顔が、ぱああっと輝いた。


「全然大丈夫! 私も会社から帰った後だから似たようなペースになると思うし」


「あとノルマみたいなことある? 期限内にここまで攻略しろとか」


「特にないかな。ネットで攻略情報を見てはいけないって条件だけ。でも海くんは社員じゃないから見ても構わないわよ?」


「いや、俺は別にいいから姉ちゃんに合わせるよ」


 ネットの意見に煽られずにマイペースでのんびり進めるのも良いかもしれない。


 ゲームに必要なあれこれは姉ちゃんが社販で用意してくれるそうなので、ありがたく甘えることにした。


 俺も高校三年間は部活に熱中していて、ゲームなんて友達が持ってた二次元のアクション物をちょっと触ったことがある程度なのだ。最新のゲーム事情には疎い。


 姉ちゃんが嫌がるのもわかる。VRMMOって人間関係とか面倒そうだもんな。日本人ってなにをやらせても、いつのまにか暗黙の謎マナー作る習性があるし。


 姉ちゃんにそう言ったら「そういう初心者の意見を週一でレポート書くことになってるのよ」と真面目な顔で早速メモしていた。


 お役に立ててなによりです。


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(2023.1.9修正)人名にルビを入れて、読みやすいように改行を変更しました。

(2023.1.11修正)表記ミスを修正しました。

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