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#509 「お前は俺をなんだと思っているんだ」

原稿作業のため暫くお休みします! ユルシテネ!!!_(:3」∠)_

「そのような大騒ぎになっていたのですね……」


 胃を痛めてしまったフウシンをメディカルベイに送り届け、食堂に戻ってきて事の顛末をクギに話すと、クギはそう言って表情を曇らせた。


「クギはクリシュナが聖遺物とやらだということに気づいていなかったのか?」

「はい、我が君。その可能性については考えていたのですが、皆様もあまりにも普通にクリシュナに接していらっしゃいましたし、此の身も普通に操作できてしまったので、やはり違うのかなと考えていました」

「……? どういうことだ?」

「落ち人の聖遺物というものは、普通は落ち人本人にしか使えないものなので……ぶらっくぼっくす? になっているじぇねれーたー? そのものか、或いはじぇねれーたーの中に聖遺物があるか、それか我が君が肌身離さず持っているレーザーガンが聖遺物なのかと……」

「なるほど」


 クギと出会った時にはミミとエルマが俺と一緒にクリシュナに乗っていたし、その後すぐにクギ自身もサブパイロットとしてクリシュナに搭乗している。聖遺物は持ち主本人にしか使えない、という先入観があるとクリシュナが聖遺物だと気づかない可能性はあるか。


「フウシンはんはクリシュナに乗ってすぐにクリシュナが聖遺物やって気付いたみたいなんやけど」

「そこは此の身の知識と経験不足で……」


 俺と一緒に食堂まで来たティーナに突っ込まれ、クギが狐耳と尻尾をへにょらせて肩を落とす。ちなみにウィスカは飲み物を用意をしに行った。厳正なるジャンケンの結果である。


「聖堂長は法具の専門家で、博識な方なので。巫女殿が気づかない点に気づいても不思議ではないかと」

「私どもが言うのもなんですが、とても立派な方なんですよ。聖堂長は」


 コノハとモエギがクギの擁護に回る。いや、まぁ気づかなかった事自体は別に良いんだけどな。そういうこともあるだろうし、クギは俺のレーザーガンが聖遺物だと思ってたらしいし。ん? 待てよ?


「それじゃあこれは普通のレーザーガンなんだよな?」


 そう言って俺は腰のホルスターからレーザーガンを抜き、エネルギーパックを外してからクギ達の前に置いてみせた。確かこれもSOLのイベントで手に入れたちょっと性能の良いレーザーガンだったんだよな。前にガンショップのオーナーに見てもらった時には随分と良いものだって話を聞いた気がする。


「ええと……はい、恐らく普通のレーザーガンだと思います」


 クギは恐る恐るといった様子で俺のレーザーガンをためつすがめつした後にそう結論付けた。


「ヒロ殿、私も見せもらってもよろしいですか?」

「私も良いでしょうか?」

「どうぞどうぞ」


 レーザーガンに興味津々といった様子でコノハとモエギも俺のレーザーガンを手にとって眺め始める。エネルギーパックを外してあるので暴発の心配も無い。


「そういえばクギもそうだけど、コノハとモエギもレーザーガンを持っていないよな。何かこう、戒律的なものでレーザーガンを持ってはいけないとかそういうのがあるのか?」


 俺がそう聞くと彼女達は互いに顔を見合わせ、代表としてなのかコノハがコホンと咳払いをしてから話し始めた。


「ヒロ殿、クギ殿とモエギは第二法力の使い手ですし、私は第一法力の使い手で、刀も差しています。これだけで十分なのです」

「なるほど……? まぁ、クギの第二法力はえげつないって話だもんな」

「えげつない……」


 俺の物言いにクギが愕然とした表情を見せて固まる。いや、だってイクサーマル伯爵家の連中にクギ達が捕らえられた時にクギがやったことは聞いてるし……第二法力でイクサーマル伯爵家の連中を洗脳して手足のように使ったり、イクサーマル伯爵本人を無力化したりしてたらしいじゃんか。


「必要がないから持たないってわけね。まぁ納得ではあるか。武器として以外には役に立たないし、第二法力を利用すればそもそも示威効果自体が必要ないし、グラッカン帝国で剣を腰に差している人間に絡みに行くアホもそういないもんな。コノハのは刀だけど」


 普通の人には剣と刀の区別もそうそうつかないだろう。腰に剣っぽいものを差しているだけで一般市民は「うわ貴族だ。近づかんとこ」ってなるらしいからな。


「そういうことで――む?」


 コノハが急に視線を宙空に彷徨わせ、頭の上のタヌキっぽい耳をピクピクと動かす。モエギも同じようにしているところを見ると、ニーパックプライムコロニーの聖堂から何か連絡でも来たかな?


「ヒロ殿、迎えが来たようです」

「そいつは良かった。のんびりするのも悪くないが、そろそろ退屈しそうなところだったからな」


 迎え、というのはヴェルザルス神聖帝国から来るという話だった俺達をエスコートする護衛艦隊のことだろう。さほど時間はかからないと言っていたが、数日で到着か。本当に早かったな。


「退屈してる暇がありましたかね……?」


 モエギがそう言いながら首を傾げていたが、ここは華麗にスルーしておく。


「そういえばグラッカン帝国に赴任している人員の入替えもするんだっけか。二人も本国に帰るのか?」

「むぅ……そうですよ。私もコノハちゃんも今回の人員転換で一度本国に戻ります。聖堂長とランシン隊長は居残りですけど」


 スルーされたことが気に入らなかったのか、モエギが若干ふてくされながら返事をする。うーん、ふてくされるお狐お姉さんは可愛いな。何故クギが「なるほど」と頷いているのかはよくわからないが、こっち方面のキャラはクギには合わないんじゃないかな。

「よかったらブラックロータスに乗っていくか? 行き先は同じだし」

 俺は軽い気持ちでそう言った。そこには下心は欠片もなかったし、袖触れ合うも他生の縁というか、旅は道連れ世は情けといった意味での発言だった。


「……女の私達がヒロ殿の船にですか?」

「これだけの女性を船に乗せて、まだ飽き足りないのですか? うーん、私はもう少しお互いによく知り合ってからの方が……」

「違うそうじゃない。そういう意図での発言じゃない。わかった、撤回する。この話はナシだ」


 俺は両手を挙げて発言を撤回した。部屋も余ってるし、自慢するようでなんだがブラックロータスは大変に快適な住環境を実現している。折角知り合ったのだし、どうせ行き先が同じならどうかと思っただけだったのだ。


「身から出た錆ね」

「ヒロ様は親切なだけなんですけどね」


 今まで黙って俺達の話を聞いていたエルマが好き勝手言っているのをミミがフォローしてくれる。そうだぞ。俺は親切なだけなんだぞ。まぁ、男よりは女に甘い傾向はあると自分でも思うけどな。でも、それは誰だってそうなんじゃないかと思うんだ。男は自分でなんとかしろ。俺もなんとかする。


「親切心からの提案ということはよくわかりました。場合によってはこちらから同行を願う可能性もあるので、お返事は少し待って頂けますか?」

「そっちから? どういうことだ?」

「本国で私とモエギがヒロ殿の護衛や付き人として付き添う可能性があるので。初対面の人がそういった任務に就くよりは、少しでも気心が知れている私達の方がヒロ殿達も安心でしょう」

「それはそうだな」


 ヴェルザルス神聖帝国側がそういう配慮をする可能性もあるのか。確かにコノハの言うことはもっともな話だな。彼女達がグラッカン帝国で何年過ごしたのかはわからないが、少なくともヴェルザルス神聖帝国から一度も出たことがない人達よりはこっち側の流儀や考え方というものを知っているだろうし、その方が無用なトラブルや行き違いは少なくなるだろう。

 もっとも、俺自身グラッカン帝国の流儀や考え方に完全に適合しているのかと言われると、正直自信はあまりないんだが。


「先に言っておきますが、無体を働くようなら容赦はしませんよ」

「お前は俺をなんだと思っているんだ」

「貴方の所業に関しては皆さんから色々と聞いたので」


 そう言ってコノハはツンとそっぽを向く。確かに俺はお世辞にも女癖が良いとは言えない所業を積み重ねてきてはいるが、嫌がる女性を無理矢理とかそういう外道な行為は一切していないという自負があるぞ。


「……コノハ様?」

「うぐっ……すみません。言い過ぎました」


 笑顔のクギから放たれたプレッシャーにコノハが怯み、俺に謝罪してくる。謝ってくれるのは良いんだが、それよりも突如放たれたクギのプレッシャーに驚いてしまった。笑顔なのに目が笑ってない。コノハは何かクギの地雷でも踏んづけたのだろうか。


「まぁ、同道する件に関しては決まったら連絡してくれ。いずれにせよ部屋は空いてるから、出発までに連絡をくれれば良い」

「はい、わかりました。いいわね? コノハちゃん」

「はい……」


 クギの威圧が効きすぎたのか、コノハは丸耳も尻尾もシュンとさせたまま頷く。もしかして、ヴェルザルス神聖帝国においてクギ――というか巫女の権威は俺が思った以上に強いものなのかね?

 まぁ、何にせよ迎えが来てくれて良かった。これでようやっとヴェルザルス神聖帝国に向かえるな。

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― 新着の感想 ―
なんか最近急にエルマがウザくなってきてるような… セレナが素直になっちゃったから、ウザキャラをバトンタッチしたのかな…?
[一言] そろそろかなぁ、まだもう少しかなぁ。。 遠いなぁ、ヴェルザルス神聖帝国。。。
[一言] SF世界の中でのSF(?)っていいよね!
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