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#434 猟犬に休む暇はない

スターフィールドたのしいぃぃ_(:3」∠)_(アヘ顔ダブルピース

「おかしいなぁ……俺の予定では対宙賊独立艦隊の準備が整うまで暫くのんびりする予定だったんだが」

「あはは……クライアントからの命令じゃ仕方ないですよね」

「我が君、頑張りましょう。此の身もお手伝いしますので」


 セレナ大佐との会談を終えておよそ半日後。俺達はクリーオン星系からほど近い場所にあるボークス星系で哨戒任務――というか見敵必殺の宙賊狩りを敢行していた。

 つまり、ブラックロータスを中心として鶴翼の陣――三艦では鶴翼の陣というよりVの字だが――を組み、超光速ドライブを使って星系内をお散歩中ということだ。


『私達は再編成をしなければ動けませんが、貴方達は今すぐ動けますよね? レスタリアスが

陣取る予定の星系がありますので、露払いをしておいて下さい』


 とのお達しがセレナ大佐から下ったためである。あの人は鬼か何かか?


『軍の予算も無限ではないのです。貴方達は時間単位で莫大な経費がかかる一流の傭兵なのですから、キリキリ働いて下さい』


 とクライアントであるセレナ大佐に言われると、それはそうとしか言えないので大人しく彼女の言葉に従ったわけだが。クリーオン星系に到達し、セレナ大佐と会談を終えた瞬間から契約は成立しているわけだし。

 帝国航宙軍が今回俺達に提示してきた報酬はまず基本報酬として三十日の従軍で1000万エネル。それ以降は一日ごとに30万エネル。それに加えて弾薬その他の補給費用は向こう持ち、撃破した船の鹵獲とサルベージも基本自由で、敵艦船の撃破報酬もある。

 つまり、艦隊の再編成に時間がかかるからと俺達を遊ばせておくのは無駄が多いというわけだ。再編成をしている間に最前線で暴れてこいとか言われたわけでもないので、命令を拒否する理由もない。


「再編成している間は食っちゃ寝してるだけで金が湧いてくるぜヘッヘッヘとか思ってたのになぁ」

「あの……我が君、まさかとは思いますが、そのためにセレナ大佐に艦隊戦力の分散配置を提案したわけでは……ありませんよね?」

「その意図が一欠片も無かったと言ったら嘘になるけど、あれはあれで間違いなく有効な手だから。今回の案件で対宙賊独立艦隊が一塊で動くのは小魚を捌くのに鮪包丁を持ち出すようなもんだよ」

「なるほど、そうなのですね」


 クギが少しだけホッとしたような声でそう言う。まったく、俺が私利私欲でセレナ大佐に献策をするんじゃないかと疑うなんて悪い子だ。あとで尻尾の付け根をトントンしてやる。


「しかし、見当たりませんね。宙賊」

「初めての星系で情報不足だから仕方ない。やっぱ一回ボークスセカンダスコロニーに向かうべき――お?」


 その時、クリシュナの亜空間センサーが何らかの反応を拾った。内容は判然としないが、より性能の高い亜空間センサーを積んでいるブラックロータスなら内容まで拾えている筈だ。


「ヒロ様、救難信号だそうです。メイさんから連絡が入りました」

「オーケー。それじゃあメイに突撃指示を出して、エルマには状況を見てグラビティ・ジャマーの起動をするように伝えておいてくれ。クギ、戦闘準備だ」

「はい!」

「はい、我が君」

「装備が良いって話だからな。気を引き締めていくぞ」


 超光速ドライブの同期元となっているブラックロータスがゆっくりと回頭して救難信号の発信源へと進路を変える。よしよし。さて、装備が良い宙賊とやらがどの程度のものなのか見せてもらおうじゃないか。


 ☆★☆


 ズドォン! という轟音と共にワープアウトすると、まさに戦いの趨勢が決まる直前のタイミングであったようだ。襲われている輸送艦側の護衛艦で辛うじてまだ動けているのが二隻。襲撃側は中型艦二隻を含めた合計九隻が健在で、交戦宙域には少なくとも五隻以上の船の残骸が散らばっているようだ。


『救援か!? 手を貸してくれ!』

『はっ! まずいところに来たようだな。護衛艦はたったの二隻で獲物が追加だ。野郎ども、やっちまえ!』


 ワープアウトしてきた俺達を確認した二隻の護衛艦側からは協力要請が、そして九隻の襲撃艦側からは襲撃宣言が飛んできた。うん、襲撃者の諸君はブラックロータスを輸送艦か何かと誤認しているな。まぁそのために武装をコンシールド装甲で隠しているのだから狙い通りなのだが。


「こちらは傭兵ギルド所属のキャプテン・ヒロ。救援に入る」

『頼む! おい、敵味方識別信号のコードを送れ! 今すぐだ!』


 護衛艦から慌ただしく敵味方識別信号のコードが送られてきたので、それを受諾しながらこちらへと向かってくる四隻の襲撃艦を観察する。中型二隻、小型二隻の四隻か。まぁ、こっちが中型一隻、小型一隻だから倍の戦力をぶつけてくるのは妥当な判断だと言える。


「確かに装備が良いな」

「普通の宙賊の船じゃないですよね」


 スロットルを徐々に開けてゆるゆると加速しながら敵艦の装備を目視で確認しつつ、ミミが行っているスキャンの結果にも軽く目を通す。船体は若干ボロいし古いが、ちゃんとした戦闘艦のフレーム。積んでいる装備も見る限りはまともな品。少なくともただ撃てるだけって品質ではなく、駆け出しの傭兵が装備していてもおかしくはない『普通』の品質の一品。船体と同様にボロいながらも装甲もちゃんとしていて、シールドもまともな品のように見える。


「この程度問題にはならんが、駆け出しには辛いだろうな。これは。さて、良い間合いだ。行くぞ」


 敵の射程に入る直前で一気にスロットルを全開にしてスラスターを噴かし、間合いを詰める。


『うおっ!? 速いぞこいつ!?』

『撃て、撃て!』


 襲撃艦が慌ててレーザーやマルチキャノンを撃ち込んでくるが、火力の集中が甘い。クリシュナのシールドにまともなダメージが入る前に敵中型艦の至近距離にまで接近することに成功した。


「まず一つ」


 フライトアシストをオフにしながらすれ違いざまにコックピット付近を目掛けて二門の大型散弾砲をお見舞いし、一隻目の中型艦を沈黙させる。いくらまともなシールドを張っていたとしても、至近距離ならば散弾砲はシールドを問答無用で貫通できる。コックピットに撃ち込めばそれで終わりだ。


「二つ」


 フライトアシストを切って慣性で艦を移動させたまま姿勢制御スラスターを使って艦をグルリと回頭させ、慌ててこちらへと回頭しようとしている小型艦のうち一隻に四門の重レーザー砲の斉射を連続で浴びせて撃破する。ついでにフライトアシストをオンにして再度スラスターを噴かして間合いを再度詰める。反復攻撃は戦闘の基本だ。


『私に尻を見せるとは良い度胸ね』

『ああぁァァーーーッ!? やめっ、焼けっ!?』


 が、小型艦のうちもう一隻は無防備な横っ腹からケツにかけてアントリオンの高出力レーザービームエミッターで灼かれて爆散した。残り一隻の中型艦は――。


『なっ!? 輸送艦じゃ――!』


 コンシールド装甲を解除して武装を展開したブラックロータスの軍用レーザー砲十二門の火力は洒落にならない。まともなシールドと装甲を装備している、ごくまともな中型戦闘艦を薄紙のように引き裂いてしまった。哀れな襲撃者は瞬時に爆発四散である。


『おい! 新手に向かってった奴らが殺られたぞ!?』

『クソッ! ババ引いたか!? 死にかけは放っておいて逃げるぞ!』

『超光速ドライブの起動がキャンセルされた!? エラーだと!?』

『どこに高質量の惑星があるってんだ!? 動け! 動けってんだよこのポンコツが!』


 生き残りの護衛艦二隻と護衛対象と思われる輸送艦二隻を嬲っていた残り五隻の小型襲撃艦が逃げようとしたようだが、エルマがグラビティ・ジャマーを起動したようで超光速ドライブの起動に失敗している。よしよし、良い感じだな。


「残りも片付けるぞ」

「はい、我が君」


 意味も分からず逃げるのに失敗した残敵の掃討は難なく終わった。逃げようとしてケツを見せながらフラフラと飛ぶ連中の掃討なんぞ鴨撃ちみたいなもんだ。


 ☆★☆


『本当に助かった。あんた達は命の恩人だ』

「貰えるもんはちゃんと貰ったから気にするな。達者でな」


 場所は移ってボークスセカンダスコロニーである。護衛艦と商船を助けた俺達は戦場に散らばった襲撃艦の残骸からサルベージできるものを根こそぎサルベージし、ほぼコックピットだけを潰した襲撃者の中型艦を曳航して襲撃されていた商船団と共にボークスセカンダスコロニーへと移動したのだ。

 そして到着するなり護衛艦の船長からこうして感謝の通信を頂いていたというわけだ。彼は傭兵ギルド所属の傭兵で、依頼を受けてあの二隻の商船を護衛していたのだそうだ。流石に二隻だけでは護衛を続けられないということで、クライアントの意向でこのボークスセカンダスコロニーで船の修理と欠員の補充をしていくことになったらしい。


「俺達は特に補給の必要もないが……どうするかお伺いを立ててみるか」


 俺達のクライアントであるセレナ大佐にも一応事の次第を報告しておいたほうが良いだろう。事前情報通りの質の良い装備をした宙賊のような何かと遭遇し、連中を撃破してデータストレージやコックピット以外無事な中型艦を鹵獲することができた。もしかしたら何か有用な情報が手に入るかもしれない。

 ああ、ちなみに中型艦にはうちの戦闘ボットを突入させて内部の安全確保をさせておいた。生き残りは居なかったようだが、艦の内部には物資だけでなく襲撃者達の私物などもそっくりそのまま残っている。意外とそういうものから得られる情報で奴らや艦の出自がわかる可能性もあるので、馬鹿にならない。無事な小型情報端末やタブレットに重要な情報が入ってたりすることもある。

 そして、サルベージした物資や装備、艦のスクラップを仕分けしたりレストアしたりする整備士姉妹は既に作業に入っている。戦闘ボット達まで作業に駆り出しているのには笑ってしまった。

 何にせよまずはセレナ大佐に連絡だ。首輪付きになっている身としてはちゃんとお仕事したワンとご主人様に報告しないとな。

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― 新着の感想 ―
> あとで尻尾の付け根をトントンしてやる。 ヘンな声でちゃう!んですね。わかります。
[良い点] フライトアシストをOFFにして スラスターを微調整して 「正面しか撃てない散弾砲」の照準を相手コクピットにドンピシャ向けたまま すれ違いながらズドン だから変態だと もとい 変態機動だと…
[一言] 相手にシュワちゃんいない?
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