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#423 緊急発進

今日は特にコメントがねぇ!( ˘ω˘ )

 翌日、アイリアとハインツ、ジークを船に招待した。その間施設の子供達を放置するわけにはいかないので、メイと戦闘ボットの増援を代わりに施設に送っておいた。


「子守りも完璧にこなすことができます。メイドなので」


 と本人は言っていたが、感情値を最低限に設定したからな……子供達に怖がられたりしないと良いのだが。メイは滅茶苦茶美人だから、人によっては近寄りがたい雰囲気を感じるという話なんだよな。流石にデザインした俺が気後れするようなことは無いが。


「わぁ……」

「おぉ……」

「ははぁ……」


 ブラックロータスに乗船し、休憩スペースまで到達したアイリア達が感嘆の声を上げる。タラップから乗船し、除菌処置などを行って船の通路に入った段階で既に「思ったより明るい」とか「床とか壁とか綺麗なんすね」とか言っていたのだが、広々として明るい休憩スペースを見て遂に驚愕の声が口から漏れてきた。


「傭兵の船と言えば暗くて汚くて構造材剥き出しの金属の床と壁、天井ってイメージらしいな」

「少なくとも、こんなに広くて綺麗なイメージではないですね。感服しました」

「めっちゃ高級なホテルとかみたいっすね……えぇ? あの壁どうなってんすか?」


 ハインツはただただ感心し、ジークは目ざとく壁面のテラリウムを見つけて興味を示していた。そしてアイリアは……。


「ティーナ!」

「アイリア、久しぶりやな」


 ティーナを見つけて駆け寄っていた。うん、あっちは積もる話もあるだろうしそっとしておこう。アイリアはウィスカとも顔見知りであるようで、リンダも交えて四人でじっくりと話をするようだ。


「俺等は食堂に行くか」

「はい」

「うっす」


 野郎二人を引き連れて食堂に向かうと、ティーナとウィスカ以外の女性陣はこちらについてきた。ああいや、ショーコ先生は研究室にでも篭っているのか姿が見えないが。


「我が君、お客様、どうぞ」

「ありがとう、クギ」


 飲み物を用意してくれたクギにお礼を言う。温かいお茶だな、帝国式の。紅茶っぽい何かだ。


「ありがとうございます」

「ッス……兄貴、あの、この人達は……」

「うちのクルーだ。お茶を出してくれたのがクギ、神聖帝国の出身だな。で……」

「ミミです。帝国臣民で、オペレーターとか物資の管理をしてます」

「エルマよ。私も帝国臣民で、パイロットね。シルバーランクの傭兵でもあるわ」

「我が君よりご紹介頂きましたクギです。此の身はサブパイロットの見習いですね」


 ミミとエルマ、そしてクギがそれぞれ自己紹介をすると、ハインツ達も自己紹介を始めた。


「これはご丁寧に。ハインツです。用心棒ってとこですかね」

「ジークっす。ハインツの兄貴と同じくっす……あの、兄貴。皆すげぇ綺麗で可愛い人ばっかりっすね」

「羨ましかろう? 正直俺も身に過ぎていると思っている」


 これは正真正銘正直な感想である。俺如きにこんな人数の女性を囲う資格があるのか? と自問自答することは度々ある。本当にある。


「意外と謙虚な答えっすね」

「当然それなりの甲斐性は必要だし、見合う男になるべく日々精進と研鑽が必要だと思っている。ふんぞり返って弛むわけにはいかないよな」

「ははぁ……ハーレムの主ってのも大変なんすね」

「それなりにな。まぁ、実際のところ俺は皆に頼り切りな部分が多いからな。尊大になんかなれないよな」


 けれども俺を慕ってくれる彼女達に応えるために力を尽くすのが俺の責任ってものだろうと思う。無論、俺一人の努力でできることも、俺一人で支えられる重さというものも限られているので、実際にはみんなと支え合ってこのチームは成り立っているわけだが。


「殊勝なことを言ってるわねぇ。こう言ってるけど、仕事のない日は結構だらけてるわよ?」

「それでもヒロ様は日々の鍛錬は欠かしませんよ。それに、仕事のない日にだらけてるのは私達も同じじゃないですか」

「我が君は大変な努力をしておいでです。どんな頑丈な糸も常に張り詰めていては容易に切れてしまいます。此の身は今の生活に良き調和を見出しておりますよ」

「二人はすぐにヒロを甘やかすんだから」

「なんなんすかね……俺は何を見せられてるんすかね。なんだろう、この胸の内に湧き上がってくる感情は」


 俺に対する惚気めいた何かを目の当たりにしたジークが闇落ちしそうになっている。このままでは嫉妬の炎に焼かれたジークが大変なことになってしまいそうだ。

 さて、どうやって気を逸したものか? と考えた俺はとりあえずハンガーのクリシュナを見せに行くことにした。ミミ達にはアイリアとティーナ達の様子を見てもらうことにして、俺達男三人だけでだ。


「実際のとこどうなんすか、兄貴」

「どうとは?」


 クリシュナを置いているハンガーへと二人を案内していると、ジークが主語のない質問をしてきた。何のことだろうかと俺は首を傾げる。


「あの子達と本当にくんずほぐれつ……?」

「そうだぞ」

「羨ましくてどうにかなりそうっす……」

「マジでそれなりに苦労してるからな?」

「どうやったんすか、一体」

「あー……そうだな。タイミングと甲斐性、かな」


 ミミにしてもエルマにしてもティーナとウィスカにしてもまだ紹介していないショーコ先生にしても、結局のところは俺の言った通りタイミングと金が大事だったように思う。まぁ彼女達と金だけで繋がっているわけじゃないが、切っ掛けとしては金だよな。


「いざという時に自分の全てを擲つ覚悟が要るよ。金銭的な意味でも、単純に命的な意味でも」

「それは……大変っすね」

「路地裏でチンピラに絡まれてるところを助けて、衣食住に自由移動権の面倒を見るとか、帝国航宙軍相手に対する数百万エネルの賠償を肩代わりするだとか、ウン千万エネルの船を買うだとか、同じくらいの金額の船をの設備を揃えるだとか」

「無理っす。そんな大金逆立ちしても人生何回やり直しても稼げるとは思えないっす」

「他には貴族の跡取り騒動に巻き込まれて送り込まれてきた航宙艦隊クラスの暗殺者を返り討ちにするとか、ベレベレム連邦の侵略艦隊に単艦突っ込むとか、数万の結晶生命体の群れに単艦突っ込むとか、フル武装の帝国海兵の集団を一体で鎧袖一触にするような生物兵器と生身で斬り合うとか……他にもまだあるけど」

「もうお腹いっぱいっすね……というかマジすか、それ」

「本当だぞ。なんならミミかエルマに聞いてみるといい」

「金だけでなく命もいくらあっても足りませんね。それだけの修羅場を潜り抜けてるなら、ブラディーズの連中を皆殺しにするのは散歩みたいなものってのも納得です」


 今まで黙って俺とジークの話を聞いていたハインツも苦笑いを浮かべる。言うてレーザー兵器は怖いけどな。ニンジャアーマーは装甲が薄いから、シールドを張っていない状態で何発も直撃すると単純に危ないし。


「殺すのが楽しくてたまらないってわけじゃないけどな。相手が宙賊だのそれに類する連中ってんならなんとも思わないってだけで。あと、積極的に殺しにくる連中にかける慈悲は無い」

「滅茶苦茶ドライっすね」

「傭兵なんてそんなもんだ。そして着いたぞ、こいつが俺の愛機だ」

「おー、デカいっすね」

「戦闘艦としてはこれでも小型だけどな」


 感嘆の声を上げるジークと感心した様子のハインツを連れてクリシュナの内外を案内し、ついでにハンガーや俺の白兵戦装備の保管庫なども案内していく。


「こう、いつでも使える状態の自分のお気に入りの武器を並べて飾っておくのってロマンだよな」

「わかります」

「超わかるっす。いいなぁ、俺もいつかこんな感じの武器庫を持ちたいっすね」


 なお、趣味全開の白兵戦武器庫は二人にも大好評だった。パワーアーマーに試乗させてやったのも大満足だったようだ。ついでに格納庫区画の一部を改造したシューティングレンジで武器の試射もさせた。


「こうして使ってみると、質の良い武器ってのは大事なのがよくわかります」

「だろ? やっぱりいい仕事をするにはそれなりの質の武器が要ると思うんだよ」

「兄貴の武器庫レベルのものだとちょっと俺たちが使うには過剰っすけどね」


 下層区画の治安の悪い地域では殺った殺られたって話は日常茶飯事であるようだが、流石に俺が揃えているような軍用レベルの武器でドンパチをやるようなことはまず無いらしい。結局のところ死人を出すと除染チームの出動から官憲の介入も免れないそうなので、意外と致死出力一歩手前のギリギリ当たっても重症で済むくらいの出力でレーザーガンを撃ち合うことが多いんだそうだ。

 と、アウトローの武器事情的な話をしていると俺の小型情報端末から着信音が鳴った。なんだろう? と懐から小型情報端末を取り出して発信者を確認してみると、発信者はハルトムートであった。


「すまん、通話が入った」


 二人にそう断って武器庫から出ながら通話に出る。


「ヒロだ。どうしt――」

『単刀直入に言う、今データを送るからマークされた船を追って拿捕か撃墜してくれ』

「了解。報酬は弾んでくれよ」


 俺は詳しい事情も聞かずに即答した。ハルトムートの人となりは既に結構わかってきている。どんな時でも敬意を忘れない彼がこのような言動で即座に頼み込んでくる辺り、何か事情があるのだろう。


「クリシュナとアントリオンで緊急発進する。手続きはそっち任せで良いな?」

「小型と中型の戦闘艦だな。了解した。絶対に逃さないでくれ」

「了解」


 ハルトムートに短く返事をして通信を切り、武器庫に顔を出す。


「お代官様から急なお召しでな。緊急発進する。悪いが休憩スペースのティーナとウィスカに世話を任せるから、船で大人しくしててくれ」

「わかりました」

「了解っす」


 頷くハインツとジークに俺も頷き返しながら、小型情報端末でミミ達に緊急発進の連絡を入れる。

 事情は分からないが、俺に緊急発進を要請してくるってことは既にターゲットは出港してるんだろう。間に合わせるためにも一秒でも早くクリシュナを発進させないといけないな。

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― 新着の感想 ―
[一言] マークされた船の拿捕・撃墜。相手は何者だろう?
[一言] ヒロさんの活躍は普通に頭おかしいな(褒め言葉) そして甲斐性も半端ねぇ
[気になる点] もし、ハルトムートとハインツとジークやその他が手を握っていたら、ブラックロータス内の白兵戦力はティーナとウィスカに頼る事になりそうだなぁ、かなりやばそうだなぁ、 更には、まさかとは思…
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