#404 流行り病
ホライゾンゼロドーンフォビドゥンウェストやってます( ˘ω˘ )(特に意味のない情報
「さて、到着か」
俺達の乗ったブラックロータスが極彩色で彩られたサイケデリックな亜空間を抜け、リーメイ星系端のハイパーレーン突入口付近へと到着した。基本的にハイパーレーン突入口というのは星系の外縁部に位置するため、ここからブラックロータスがコロニーや居住惑星が存在するハビタブルゾーンまで移動するのには超光速ドライブをもってしても二時間ほどかかる。
クリシュナならもう少し早いが、クリシュナだけ先に着いてもあまり意味がないからなぁ。
「とりあえず出歩くのに備えて環境防護服の用意だけしておくかね」
「そうね」
手の空いている人員で船のカーゴ区画へど移動し、一応全員分の環境防護服を用意しておく。所謂ジャンプスーツ……というか、わかりやすく言えば『つなぎ』のような服で、そこそこに頑丈かつ付属のヘルメットをつければ病原体や有毒なガスなどから身を守ることができる装備だ。
なんだかレトロフューチャー感溢れる一見ローテクな装備なのだが、自動調整機構を搭載しており体格に合わせて完全にフィットするだとか、オプション装備をつけることによって宇宙空間での船外作業もできるだとか、地味に性能が高い。
「身体のラインがぴっちりと出るのが玉に瑕だよな」
「そう言いながら、随分と熱心に見てくるじゃない」
そう言ってジト目を向けてくるエルマのボディラインは実に芸術的である。全体的に華奢なのだが、腰から太ももにかけての曲線だとか、胸元の慎ましやかながらもはっきりと存在を主張するラインが実にこう……イイ。とても良い。
「俺が見る分には構わないんだ。他の男に見せるのは勿体ない。ということでこれな」
「ああ、カメレオンサーマルマントね」
前にブラド星系で買った体温調節機能と光学迷彩とまではいかなくともかなりの迷彩機能を持つマントである。当時は無駄遣いとか言われた気がするが、度々役に立ってるんだよな。迷彩機能を使っていない時はヘックス柄の白っぽいマントなんだが、迷彩機能を発動させると名前の如くカメレオンのように周囲に合わせて柄と色を変えて風景に溶け込むことができる。
こいつを着れば外出時にうちの女性陣が不躾な視線に晒されずに済むというわけだ。
「我が君、装備が増えると出入りの際の滅菌処理が面倒になりませんか?」
「なるだろうが、トラブル対策と考えれば安いコストだと思う」
実際に所面倒は増えるが、もしマントを身に着けないで外出してうちの面々が不躾な視線で不快な思いをしたり、万が一変な連中に絡まれたりしたら結局のところより面倒だからな。何より俺が安心できる。
「なるほど……あの、我が君。やっぱり私には無理そうです」
「そっかぁ……仕方ないな。リーメイプライムコロニーにクギが着られそうな防護服が有ると良いんだが」
クギの場合はもっふもふの尻尾があるのでどうかとは思っていたのだが、やはり駄目だった。俺達が用意していた環境防護服は尻尾に対応していないからな。まさか穴を開けるわけにもいかないし。これはクギも基本はお留守番ということになりそうだ。
「問題なしとは言えないが、とりあえずクギの分以外は大丈夫そうということで。一旦解散だ」
「了解」
「はい、我が君」
とりあえず環境防護服の最終チェックはできたので、各々着替えて解散する。
無いとは思うが、一応宙賊の襲撃とかも警戒はしておかないといけないんだよなぁ。リーメイ星系でパンデミックが起こっていようが宙賊どもは基本お構いなしに輸送商船を襲う。
ブラックロータスも見た目は多少ゴツいが、武装を展開していない限り輸送船に見えなくもない外観だからそこそこ襲われる。まぁ狙い通りではあるんだが、ちょっと煩わしい時もある。こればかりは仕方ないけども。
☆★☆
リーメイプライムコロニーへの移動中。ティーナの様子を軽く見た後は緊急事態に備えてクリシュナのコックピットに詰めていたのだが……。
「これは酷い」
移動中にメイが集めてくれていた情報をクリシュナのメインスクリーンに表示して閲覧していたのだが、リーメイプライムコロニーの状況は正直かなりよろしくないようだ。
まず、流行している伝染病だが、主な感染経路は空気感染であるようだ。ただし、これはくしゃみや咳などを介したヒトからヒトに対する空気感染ではなく、病原となっている菌の子実体……つまりキノコから散布される胞子に曝露することによって起こっているらしい。
症状としては発熱、咳から始まり、症状が進行すると胸の痛みが出てくるのとほぼ同時に血痰が出るようになる。最終的には肺組織が壊死して呼吸困難の末に窒息死するか、運が悪いと中枢神経系感染を起こすこともあるようだ。いずれにしても、治療をしなければ最終的には死に至るということだ。
この病気の厄介なところは患者が死亡した後、急速に『繁殖』を行うことだ。遺体を適切に処置しないとその遺体が新たな感染源となる。具体的に言うと、遺体を放置すると二時間もしないうちに遺体からキノコが生え始めてすぐさま胞子をばら撒き始めるらしい。
しかも、こいつは今のところヒトだけでなくあらゆる生物に対して牙を向いている。つまり、ネズミのような換気ダクトだの下水管だのメンテナンス通路だのを徘徊する小動物をも殺し、苗床にしてコロニー全体を脅かしているのだそうな。
「もうここまで来ると生物兵器じゃないか? これ」
「それに近いですよね……」
生えてくるキノコはとても食用できるようには見えない。細い軸の先に傘がついている……なんとなくワライタケ――所謂マジックマッシュルーム――に似ているような気がする。
『この病原になっているキノコなんだけど、含まれる成分や遺伝子情報を見る限り、元は麻薬の原料になるものだね。かなり改変されてるけど』
「つまり?」
『どこかのバカがそのキノコを持ち込んで栽培しようとして失敗したのか、それとも精製が甘いドラッグを使って感染した奴がそのまま死んで感染爆発を起こしたのか……真相はわからないけど、事の起こりはそんなところじゃないかな?』
「傍迷惑な話ですね……これって事態を収束させられるんでしょうか?」
『感染源を全て浄化した上で感染者全員に然るべき治療を施せば? まぁ、なかなか厳しいんじゃないかなぁ』
リーメイプライムコロニーは結構大きめで古いコロニーだし、感染源となる小動物は相当数いると思われる。それらを全て駆除、浄化し、更に全ての住人を治療するというのは確かに難しそうだ。この世界の技術をもってすればカネと手間をかければできなくはないだろうが。
『まぁ、とにかく胞子を体に入れないこと、艦内に持ち込まないことを徹底すれば大丈夫だよ。この船には感染源になりうる小動物はいないらしいからね』
『はい、検疫体制は万全です』
ブラックロータスはメイが艦内を完全に掌握しており、ネズミの類は入りこんでいないということなので俺達がしっかりと気をつければ問題ないようだ。それは安心できる情報だな。
『ああ、後は心配ないとは思うけど変なドラッグを買ってこっそりキメたりしないようにね。さっきも少し言ったけど、あのキノコを材料とした加工が甘いドラッグは感染源となり得るから』
「そういう趣味を持っているクルーはうちにはいないから。でも一応全員に注意は促しておく」
『そうしておいてくれ。どうしてもそういうのが欲しかったら私に相談してくれればいいからね』
「さらっと不穏なことを言うのはやめてくれ」
それはおクスリ欲しいという意思を何らかの手段で挫こうというのか、それとも危険なブツに手を出すくらいならショーコ先生が何か用意してくれるということなのか。どちらにしても不穏が過ぎる。
しかし、ドラッグ絡みの可能性があるってことか。ティーナの古巣の件と合わせるとどうにもあまり良い予感がしないな。備えようも無いしなぁ……とりあえず、覚悟だけはしておくとしよう。




