#364 リッシュ星系へ
暑いし、寝違えたのか昨日から首は痛いし、薬塗ったらヒリヒリするし、それどころかなんか痒くなって腫れてくるし踏んだり蹴ったりで全く集中できなかったよ……_(:3」∠)_
出航し、作戦行動に入ってからの艦隊の動きは早かった。流石は対宙賊独立艦隊といったところだな。宙賊相手にちんたらとしていては逃げられるので、普段からキビキビとした艦隊行動を心がけているというわけだ。ダラダラ動いてたら宙賊に逃げられるからな。
「エッジワールドってものすごく危険なイメージだったんですけど、案外何にもありませんね」
「そりゃそうよ。ドーントレスから離れたら宙賊や宇宙怪獣がひっきりなしに襲ってくるような魔境だったら流石に探索者も寄り付かないしね」
ブラックロータスの休憩スペースでミミとエルマがのんびりとおしゃべりをしているのを横目に、俺はメイに膝枕をされながら頭を撫でられている。今日はメイ感謝デイなので力の限りメイに甘やかされているのだ。というかメイに愛でられているのだ。
対宙賊独立艦隊と一緒に艦隊行動をしている間はあちらのオーダーに従って半自動航行になるので、メイがこうして俺を構っていても何の問題もないというわけだな。
クリシュナはハンガーに格納してあるし、アントリオンはブラックロータスにくっついているから操縦の必要が無いしな。この艦隊に襲いかかってくる宙賊なんているわけもないし、宇宙怪獣が出たとしてもこの艦隊戦力なら俺達が出る幕はほぼ無いだろう。
「我が君、本当にそんなにのんびりとしていて大丈夫なのですか?」
「今更ジタバタしてもできることなんて大してないから良いんだよ」
装備の整備と確認は完璧だし、そもそも今回俺達は主力じゃないからな。あくまでもピンチヒッターかつ貴重なサイオニック能力に関するアドバイザーとしての同行なので、よくわからん未開惑星の地表に降りて危険極まりない鉄蜘蛛めいた殺人ボールとちゃんばらをする予定は無いのだ。精々やったとしてもクリシュナで近接航空支援をするくらいだろう。
「うちらとしてはあんまり面白みのない仕事よなぁ」
「私達の出る幕が無いもんね」
「何か手に入ったとしても、異星文明起源のアーティファクトは流石に二人の手にも余るよなぁ」
ティーナとウィスカの専門はきちんと技術体系の存在するシップテクノロジーなので、未知のよくわからん異星文明起源のテクノロジーなんぞを万が一手に入れたとしても、どうにもこうにも手に余るのである。
「まぁ、あのタマ起源の新しい装甲材には期待しとるんやけどね。アレはたしかに面白い素材やと思うわ」
「けどコストがねぇ……量産の目処が立てば良いけど」
「装甲材って張替えするとなると高いわよねぇ」
「それな」
船の装備で何が一番高いかって言うと実は装甲材なんだよな。最低限の装甲だと滅茶苦茶安いんだが、グレードを上げれば上げるほど値段が指数関数的にお高くなる。クリシュナみたいな小型艦でも軍用の最高グレードの装甲と通常装甲では費用の桁が二つくらい違うからな。あのタマの甲殻だか装甲だかから開発される装甲の価格がどれくらいのお値段になるのかは現時点では想像もつかん。
「目的地はもう一つ先の星系やったっけ?」
「リッシュ星系ですね。ドーントレスの停泊していたケンサン星系からハイパーレーンで二つ先の星系になります」
「星系情報ってあるのか?」
「私もさっき見たけど、情報は殆ど無きに等しいわよ。B型主星系で、惑星数は四つ。外縁部に岩石と氷塊混じりの小惑星帯があって、四つの惑星はいずれも岩石系の惑星ね」
「氷塊混じりの小惑星帯かぁ……宙賊の温床になりそうだなぁ」
氷塊系の小惑星帯からなら水を得られるし、水が得られるならエネルギー面さえなんとかなれば食料や水も自給できる可能性がある。そうなると宙賊どもが拠点を作りやすくなるんだよな。まぁ、それはコロニー植民をするグラッカン帝国にしても同じことなんだが。
「既に根を張ってるかどうかが問題ね。宇宙怪獣の類の目撃報告は今のところないみたいだし、とっくに宙賊が中継基地を作ってる可能性はあるわよね」
「まぁ、そうだとしても今回は問題にならないだろ。今後このあたりを領地として帝国に組み込んで、実際に植民する段になってからだ。そういうのが問題になるのは」
仮に宙賊が目的地のリッシュ星系に基地を構えていたとしても、今回の調査の間に対宙賊独立艦隊に何か仕掛けてくる可能性は低い。寧ろ息を潜めて見つからないようにするんじゃないかな。
「その宙賊を探して狩ったりはしないんですか?」
「セレナ大佐次第だなぁ。あくまでも今回の調査行の目的は例のタマだろうし、余計なことにリソースは割かないんじゃないかな。本当にいるかどうかもわからないし」
ウィスカの疑問にそう答えて手を振って見せる。
氷塊混じりの小惑星帯が存在するなら自給自足が成り立ちやすいから宙賊どもが根を張っている可能性は高くはなるが、実際に根を張ってるかどうかは別の話だからな。
「間もなく最後のハイパーレーンへと突入するようです」
「ハイパーレーン内航行時間は?」
「およそ一時間半の予定です」
「じゃああと一時間はダラダラしてて良いな」
「はい」
俺を膝枕したまま、メイが俺の頭とお腹を撫で撫でしてくる。メイは機械の身体なのに温かいし柔らかいし本当に不思議な存在だよなぁ。オリエント・インダストリー恐るべし。




