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#330 適正

寝る前におもむろに小説を読み始めてはいけない( ˘ω˘ )(いましめ

 はてさて。斯様にのんびりとした、見ようによっては実に優雅な朝を過ごしている俺達であるのだが、実際に今はどのような状況なのか? と言うと、俺達は変わらず帝国随一のシップヤード星系であるウィンダス星系に滞在したままであった。

 変わったところと言えば、ブラックロータスの改修作業が終わったので宿を引き払ってブラックロータスに戻ったこと、整備士姉妹こと双子のドワーフであるティーナとウィスカが手続きを終えてスペース・ドウェルグ社を辞して正式に我が傭兵部隊――戦闘母艦一隻に戦闘艦二隻を擁するなら部隊と名乗っても問題はあるまい――の一員となったこと、エルマ用の戦闘艦であるアントリオンがロールアウトして納品されたということくらいか。


「エルマはアントリオンか?」

「はい。やっぱり自分用の乗艦ということで気になるみたいですね」


 暫くメイと過ごした後でブラックロータスの休憩スペースに戻ってくると、ミミとクギが仲良く並んでタブレット型端末を操作していた。ちょっと前には小型情報端末の操作も覚束なかったクギであるが、中々の適応能力を見せて今では小型情報端末の操作もタブレット型端末の操作も問題がないレベルにまでなっている。


「クギはどうだ? オペレーターの勉強は」

「はい、我が君。難しいです。ですが、少しずつ修練を積んでいきたいと思います」

「うん、無理しない程度に――」


 と、言いかけたところでふと思いついた。オペレーターとしての勉強はまぁ必要ではあるから続けてもらうとして、先にパイロットやサブパイロットとしての適性を見るのもアリなのではないか、と。


「お勉強も大事だけど、ちょっとお出かけしないか?」

「お出かけですか?」


 ミミが首を傾げる。唐突な申し出だから疑問に思うのも当然だろう。クギの方は静かな表情で俺の顔を見上げてきている。いずれにせよ彼女は俺の提案に是と答えるのだろうな。


「傭兵ギルドにな。シミュレーターを使わせてもらいに行こうぜ」


 ☆★☆


「なんだか慌ただしい雰囲気ですね」

「ふん? エッジワールド行きの件と関係があるのかね?」

「どうでしょう? 私達以外にも傭兵が同行するんでしょうか?」

「可能性は無くもないな。エッジワールド行きってことなら戦力はいくらあっても良いだろうし」


 エッジワールド――最辺境領域というのは帝国の版図の端の端、最近帝国の支配下に組み入れられた文字通りの最辺境一帯を指す言葉だ。

 宙賊やそれを狩る傭兵――半ば宙賊と殆ど変わらないようなモグリ連中も多数いるらしい――や、未探査惑星の探査で異星文明の遺跡やアーティファクトを見つけて一発当てようと考えている所謂『冒険家』などと呼ばれる山師――異星文明由来でもなんでもないガラクタを売りつけて高利を貪ろうとする詐欺師を含む――連中、場合によっては宇宙怪獣の類や未知の敵性国家なんぞが跋扈していたりするテーマパークのような宙域なのである。

 そんなエッジワールドの現状を憂いた皇帝陛下か或いは軍のお偉いさんの思惑によってセレナ大佐がその面倒を見ることになり、俺達もその作戦行動に同道することが決まっている。場所が場所なので今しがた俺が口に出したように戦力はいくらあっても困らない。セレナ大佐の働きかけによって傭兵の戦力が召集され、その結果として人手不足に陥った傭兵ギルドが賑やかになっていても不思議ではない……という俺の考えをミミとクギに話しながら、受付へと向かう。


「いらっしゃいませ。依頼の受注ですか? 受注ですよね? ああ、仰らないで。私どもにお任せください。最高の依頼をご用意致しますとも。さぁ、IDをご提示ください」


 マシンガントークを披露する受付嬢に内心辟易しながら小型情報端末を取り出して提示する。やはり傭兵ギルドの受付嬢というのは容姿も選考基準に入っているのだろうか? 今までに顔を合わせた受付嬢の皆さんは例外なくなかなかの美人さんなんだよな。


「IDは提示するが、シミュレーターを借りに来ただけだぞ。ついでに言うと、もう指名依頼が入ってて他の依頼請けられねぇから」

「チッ」


 こ、こいつあからさまに舌打ちを……! なかなかいい性格をしているな、この嬢。気に入った。別に何もしないけど。


「失礼な方ですね」

「まぁまぁ」


 クギがスッと目を細めて怒りを顕にしている。なるほど、俺に無礼を働く人は彼女的にはアウトなのか。ミミが苦笑しながらクギをなだめているのがちょっと新鮮な心地である。クギの方が歳上に見えるが、オペレーターとして傭兵生活に身を置いてきたミミの方が精神的には余裕があるのかもしれない。うーん、成長を感じるな。


「はーい、シミュレータールームの使用許可でましたー。どうぞー」


 嬢は「あっちでーす」と投げやりな感じでシミュレータールームがある方を指差し、俺達への興味を失ったようだった。俺の傭兵ランクを見ても全く態度に出さず動揺もしない辺り、かなり肝の据わった受付嬢であるようだ。もしかしたら傭兵として大成する才能があるんじゃなかろうか?


「ヒロ様?」

「ああ、なんでもない。行こうか」


 まだじっとりとした視線を受付嬢に向けているクギの手を引いてシミュレータールームへと向かうことにする。とりあえず、今日やることはミミのパイロット適性の再確認と、クギのパイロット適正の確認だ。


 ☆★☆


 ミミは前に一度シミュレーターに乗せたことがあるんだが……まぁ、その、お世辞にも適正が高いとは言えない感じであった。


『あぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?』


 そして今日もこうなった。ミミが操艦しているシミュレーター上の乗機であるザブトンがコントロールを失って不規則な回転運動をしながらレーザー砲を乱射している。うん、通常のフライトは大丈夫なんだけど、戦闘機動を始めるとすぐにああなってしまうんだよな。

 対するクギの操艦は安定している。今日が初日なので動きにぎこちなさがあるのは当たり前なのだが、それが『多少』レベルなのはなかなかに常軌を逸していると評しても良いかもしれない。まだシミュレーターに触って一時間も経っていないのに、過不足無く船を動かして配置された静止ターゲットをレーザー砲で破壊し、移動するターゲット相手にも冷静に対処している。これは鍛えれば一端のパイロットになれそうだ。

 うーん、これは方針を転換してミミのサブパイロット化は一旦停止してオペレーターとしての道を極めてもらい、クギをサブパイロット枠にしたほうが良いだろうか? 無論、ミミも訓練を重ねればあんなことにはならなくなるのかもしれないが、ああなってしまうのもある意味才能なんだよな……いやそうはならんやろっていう。なってるんだから現実を認めなきゃならないんだが。


「はい、ミミは一旦操縦桿から手を離してフライトアシストモードに任せて停止。クギはその調子で次のステップに進もうか」


 二人のシミュレーター訓練をコーチングしつつ、ミミにどう話を持っていくべきかと頭を悩ませる。ミミはサブパイロットへの転身の件、かなり前向きに受け止めてたからな。才能無いからやっぱあの話ナシね。新入りだけどクギにやってもらうわ。とストレートに言うのは流石に角が立つだろう。いや、ミミなら俺の言うことには従ってくれるだろうが、それで良い関係を築きつつあるクギとの間がまたギクシャクするのも問題だ。

 うーん、こういう時に一回エルマに相談するのが良いかな? うん、そうしよう。

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― 新着の感想 ―
[寝る前におもむろに小説を読み始めてはいけない] 遅いよ…もう何年もやってるんだが。
ミミは攻撃と操艦の異なるタスク処理に混乱してるみたいですね オペレーターとして情報処理のマルチタスクはできてるので同種レイヤー上なら問題ないのでしょうが、性質の異なる複数レイヤー上の相互管理が苦手なの…
[一言]  嬢は「あっちでーす」と投げやりな感じでシミュレータールームがある方を指差し、俺達への興味を失ったようだった。俺の傭兵ランクを見ても全く態度に出さず動揺もしない辺り、かなり肝の据わった受付嬢…
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