#329 甘い朝
PCのスペックが不足しているのかエルデンリングはカックカクでダメなのでソフィー2やります( ˘ω˘ )(なお単純に寝坊した
誰かの柔らかな気配を感じて目が覚めた。息遣い、微かな衣擦れの音……それに、そっと頬に触れてくる柔らかく、温かい手。些かの敵意や殺意、悪意も感じない、ただただ穏やかな気配だ。
「我が君、起きる時間ですよ」
「んん……」
声のする方向に顔を向けながら目を開けると、金色の瞳と目が合った。それだけで彼女は嬉しげに目を細め、そして実際に微笑みを浮かべる。
「おはようございます、我が君」
「ああ、おはよう」
挨拶を交わし、一度目を閉じてから身を起こす。うん、着衣に乱れなし。まぁ、乱れもクソも俺はいつも寝る時はパンイチスタイルなので、とりあえず情事の気配は無いというだけの話なのだが。
俺を起こした金色の瞳を持つ銀髪の狐耳娘――クギはそんな俺の姿を目にして少し顔を赤くしている。うん、身を起こした俺の上半身が顕になっているね。俺の裸の上半身を見て顔を真赤にしてしまっているようだ。ははは、初心だなぁ。
ちなみに、クギもしっかりと服を着ている。当たり前だが。まだ彼女とそういう関係には至っていないのだ。俺に対するクギの傾倒っぷりを考えると、求めれば応じてくれそうな気がする――というか応じてくれるのだろうな。まぁ、そうする気は今のところ無いけど。
「わ、我が君? そのようにじっと見られると、その、落ち着かないと言いますか……」
落ち着き無く頭の上の狐のような耳をピコピコと動かしながら、俺から顔を逸らし――でも横目でチラチラとこちらの様子を窺ってきている。なんだろうこの可愛い生き物は。いけない悪戯でもしてやりたくなってくるじゃないか。まぁ、しないけれども。俺は理性的な人間なので。
「悪い。目は覚めたから身支度を整えるよ」
「は、はい……その、失礼致します」
クギはそう言って頭を下げてからそそくさと部屋を出ていった。うーん、なんだかわからないけど、フワリと良い匂いがするな。香水というよりはお香だろうか。どうして女の子って男にはない良い匂いがするんだろうね? お洒落というものがわからぬ俺のような男にはまったくわからんな。
「さて、クギにもああ言ったし起きるかね」
今日も新しい一日の始まりだ。
☆★☆
「おはよう」
「おはようございます、ヒロ様」
「おはよ」
着替えて洗面所で最低限の身支度を整えて食堂へと赴くと、既にミミとエルマが朝食の準備をしていた。まぁ、準備と言っても飲み物を用意するくらいのことなのだが。食器は自動調理器に食事を注文した時に食事と一緒に出てくるからな。
「あれ? クギは来てないんだな。先に来てるものかと思ってたんだが」
「何か悪戯でもしたんじゃないの?」
「してません。俺は品行方正な紳士だからな」
「紳士ねぇ……?」
何だその疑わしいものを見るような目は。いやまぁ、結局ミミやエルマにはすぐに手を出したわけだし、その後もメイやティーナ、ウィスカも迎え入れて取っ替え引っ替えやりたい放題しているのに紳士も何もないだろうというのは俺も否定はできないんだが。
「まぁ彼女の場合はちょっと事情が特殊だし。もう少し様子見するべきかと思うんだよ」
「そうかしら? まぁヒロがそう思うんならそうなんでしょう。ヒロにとってはね」
「何を今更と思うかも知れないが、俺にも覚悟を決める時間が必要なんだよ」
「その割には私には遠慮なかったわよね?」
「そう言われるとそうだな。何でだろうな? 何故だかわからないけど、エルマにはそういう気持ちを持つことはなかったんだよな。エルマになら甘えられると思ったからかもしれん」
「何よそれ」
そう言いつつ、エルマは満更でも無さそうな表情だ。
ミミは出会ったその日からもう俺が面倒を見なければ野垂れ死ぬか、或いはもっと酷い目に遭うことが容易に想像がつくようなか弱い存在だった。だから俺は懐に迎え入れる時点で覚悟を決めていたし、ミミ自身も自分の立場というか状況をわかっていたから、最初から覚悟を決めていた。だから俺とミミはすぐにそういう関係に至ったわけだ。
じゃあエルマはどうか? エルマに関しては極めて不運なトラブルによってにっちもさっちも行かなくなっていたところを俺が助けたわけだが、そのトラブルさえ凌いでいしまえば寧ろ俺なんかよりも世慣れていて経験も豊富で、強い存在だった。だから俺は覚悟を決める必要もなく、ただただ甘えることが出来たわけだな。
「私にも甘えていいですよ!」
「わーい、ままー」
「おっきな子供ねぇ……」
両腕を広げて俺を迎え入れる姿勢を取ったミミの胸に飛び込む。いやぁ、凄い。これは凄い。圧倒。圧倒されるね。これが母性……あぁ、溢れるバブみでオギャって幼児退行してしまいそうだ。
「おっはよーさーん……って朝から飛ばしとんな」
「むー……」
食堂に元気な声が響き、その後に不満げというか悔しげな唸り声が聞こえてくる。
「やぁ、おはよう二人とも。良い朝だな」
「とりあえずミミのおっぱいに顔を埋めるのをやめてから挨拶しような?」
「お兄さん、私も、私もそれします」
声の主達が俺の側に近づいて片方は俺の頭をペシペシと叩き、もう片方は俺の腕をクイクイと引っ張り始める。しかしミミも俺を渡すまいと俺の頭を抱え込んでホールドする。うん、素晴らしい。素晴らしいけどちょっと息が苦しい。服の布地のお陰で僅かに息を吸えるからなんとかなってるけど。ああ、でもなんだろう。良い匂いがするし柔らかいしもうずっとここに住みたい。
「ほら、貴方達もいつまでもじゃれあってないで早くご飯食べなさい」
「イエスマム。あと改めておはよう、ティーナ、ウィスカ。あとミミ、ありがとう」
エルマに怒られたので素直にミミから離れ、ドワーフの整備士姉妹――ティーナとウィスカに朝の挨拶をする。あとミミにお礼を言っておく。朝一番のおっぱいは健康に良いな。そのうち癌にも効くように……いやこの世界では癌は死病じゃないらしいけどさ。簡易医療ポッドで治せちゃうらしいし。
「はいはい、おはよーさん」
「おはようございます。あとで私にもなでなでさせてくださいね」
「どういたしまして!」
三人三様のお返事を頂いたところで連れ立って自動調理器のテツジン・フィフスの元へと向かう。ちなみに、エルマは既に朝食を摂り始めていた。朝から人造肉の分厚いステーキとマッシュポテトのような何かをモリモリと食べている。相変わらず胃袋が強いな。
「お、遅れました」
自動調理器の前まで来たところでクギも食堂に現れた。うん? なんだかひとっ風呂でも浴びてきたかのような雰囲気だな? まぁ、このブラックロータスの設置されている風呂は入浴から乾燥まで全自動だから、普通の風呂に入った後のように髪の毛がしっとりとしたりはしないのだが。それでもこっちの世界で長く過ごしてきたから風呂に入った後かどうかは雰囲気でわかるようになっている。
「別に待たされたりしたわけじゃないから気にしなくていいぞ」
まぁ、わざわざ指摘するのも野暮というものなのだろう。そこには触れずに軽く声をかけてテツジンに朝食をオーダーする。今日はこの後トレーニングルームで身体を動かすので、その情報を入力しておく。こうすることによってテツジンは俺の体調などのモニタリングデータや膨大なライブラリデータから最適な食事を分析してメニューを組んでくれるのだ。かがくのちからってすげー。
☆★☆
テツジンが出してくれた美味しい食事を皆と楽しく取って、トレーニングルームで身体を動かしてから軽く汗を流す。ここまでが俺の朝のルーチンだ。ああいや、正確には今からやることも含めてが俺の朝のルーチンだな。
「おはよう、メイ」
「おはようございます、ご主人様」
朝の挨拶をしながらブラックロータスのコックピットに足を踏み入れると、コックピットの中央に佇んでいたメイド服姿の美女が俺に向かって振り向いた。腰まで届くような長く美しい黒い髪の毛と、目元を飾る赤いフレームの眼鏡が似合う美人さんだ。今日も耳元から伸びる白い機械パーツはピカピカに磨き上げられている。うん、今日もぼくのかんがえた最強のメイドさんはいつも通りのようだ。
「ブラックロータスの調子はどうだ?」
「はい。改修作業によって総火力は28%向上し、シールド性能は31%向上しました。機動性も12%ほど改善しています」
「そいつは何よりだ。性能はいくら高くても困らないからな」
「仰る通りです」
首の後ろから太いコードを伸ばしたままメイが頷く。そのコードはブラックロータスへと繋がっており、彼女とブラックロータスを直結しているのだ。その目的は勿論、メイによる艦全体の掌握である。このブラックロータスはメイによって全てが管理、運営されているのだ。
「他に問題は無さそうか?」
「はい、船の改修による問題は確認できません。ティーナ様とウィスカ様による詳細チェックでも問題はないという結果が出ております」
「そうか。ならよし。メイにはいつも苦労をかけるな。ティーナとウィスカの移籍手続きにも骨を折ってもらうことになったし」
「いいえ、この程度は苦労のうちには入りません。何より、私にとってはご主人様に仕え、お役に立つことこそが喜びですから」
メイは至ってすました表情でそう言い、ふるふると首を横に振った。まぁ、膨大な処理能力を有する機械知性の彼女にとってはティーナとウィスカをスペース・ドウェルグ社から正式にうちのクルーへと移籍させる手続きなど造作もないことなのだろう。
「それでも俺の感謝の気持ちは受け取ってくれ。何かご褒美でもどうだ? いつも苦労させてるから、俺としては何かの形で労いたいと思うんだが」
「いいえ、特に必要なものはありません。私の希望通りにブラックロータスを購入して頂き、その管理を任せて頂けるだけで身に余る光栄です」
「そうか……」
「ですが、それでもご褒美を頂けるのであれば……」
そう言ってメイは無表情のまま俺に両腕を広げてみせた。
「私にもご主人様を甘やかす権利を頂ければと」
「……それはメイに対するご褒美なのか?」
「はい」
寧ろ俺に対するご褒美なのでは? と思うのだが、メイは断固たる態度で頷いた。
「この後も予定があるから、少しだけな」
「はい、存じ上げておりますのでご心配なく」
さぁ、と言わんばかりに腕を広げて待機するメイ。うん、まぁそういうことなら失礼して。
なお、この後あまりに極楽過ぎて危うく寝落ちかけた。メイの甘やかしは危険が過ぎる。




